貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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588話

「しっかしまぁ……くっそ今更っすけどすげぇ面子っすね」

「今更過ぎて笑いそうになるからやめてランちゃん」

「んもう素直なスーちゃん大好き愛してる」

「んじゃあ嫁に来て」

「上ちゃんをシンボリ家に取り込むところから始めないとダメっすね~」

「……その手があったわね」

「やばい禁断の果実を与えてしまった」

 

未だに自分のシンボリ家入りを諦め切れていないスーちゃんへとんでもない爆弾を放り込んでしまった気分になりつつも同時にこのVIP席の面子の凄さに今更ながら呆れが生まれてきた。上ちゃんには気を付けるように言わなければ……自分の恩人でもあり親愛なるスーちゃんに注意しろとかどんな顔をして言えばいいのだろうかと真面目に思う。

 

「実績で言えば貴方が一番上だと思うけど?」

「実績って奴は歴史に勝てたり負けたりするものですからね、俺は取り敢えず偉大な先輩には頭を下げつつ敬意を示すだけですよ」

「私はそういうのは良いから仲良くしたいな~私は貴方のお友達のハーちゃんです、はいっ!!」

「私は貴方の友達のハーちゃんです、そして私は貴方の心の暴君ランちゃんです、はいっ!!」

「私は貴方の心の暴君ランちゃんです!!」

「「イエ~イ!!」」

 

ノリノリでハイタッチをする二人に思わず笑ってしまうが、確かに彼女にはそういうテンションの方が好かれるのが事実。寧ろ、あの怪物チャンスマイルを向けられて即座に切り返しが出来るのは凄まじい。大体はあの空気に飲まれてしまうのに……。

 

「この後にさ、一緒にライブするなんてどう⁉みんな喜んでくれると思うの!!」

「いいですね~思い切って可愛いの歌っちゃいます?」

「良いね良いね!!それでね、今いい演出思いついちゃったの!!途中で私が走るんだけど、それをランちゃんが上手い事回転しながらキャッチして、お姫様抱っこのまま私が歌うの!!」

「何それ最高かよ、んじゃ俺も走りながら歌うわ」

 

これはまた、伝説的なライブがまた歴史のページに刻まれて後の世の受験生の頭痛のタネになるのだろうか……そんな事を言ってしまったら自分もその一つなのだろうな、特にセントライトなんて名前は歴史の授業で散々やるだろうし。まあそれを言ったらハイセイコーもスピードシンボリもそうだろうが……。

 

「どうせならここの4人で出ます?」

「それは素敵ね、でも何を歌おうかしら?」

「うまぴょい伝説に一票!!」

「流石にハーちゃんはともかく、私はキツいんじゃないかしら……winning the soulはどう?」

 

後に、レジェンドライブとして語り継がれる事になる事件の数時間前の出来事である。

 

 

 

『ファイナルズ芝のラストレース!!3000の長距離という長旅を先頭で駆け抜けるウマ娘、アスカフォーミュラが大逃げだ!!3000という長丁場、それを既に半分を過ぎているにもかかわらず未だに先頭を駆け抜けております!!ここまでの逃げを打ったのはメジロはメジロでもメジロパーマーただ一人!!駆け抜ける駆け抜ける!!後続とはなんと8バ身!!大逃げではない筈ですが、ペースが全く崩れない為、これほどのウマ娘がいたとは!!』

 

「マッハ全開で行くぜ!!さあもっと飛ばすぜぇぇ!!」

 

3000という長距離を駆け抜け続けているアスカフォーミュラに迫り始めているウマ娘もいる、必ずバテる筈だと信じて駆け抜けていたが、一向に垂れる気配がない走りに戦慄し心が折れ始めている者も多くいる中で抜け出していくウマ娘たちもいる。実力の差が明白になる、中央であろうと地方であろうともそれに絶望もするだろうが、逆にそれに挑みたいと闘争心をむき出しにする者もいるという事が改めてよく分かる瞬間であった。

 

「なんで、何でよっ……なんでっ!!」

 

一人のウマ娘が苦しくなる呼吸の中で叫ぶ、中央からの出走でここまで駆け抜けてきた。生来の鈍さ故か王道のクラシックディスタンスでも短く2500を超えて漸く適正距離になる彼女にとってこの距離は自分の庭のはずだった、なのに、なのにっ……

 

『さあアストゥラピデルタが行った行ったぞ!サウンズオブロードも上がっていきます!!アスカフォーミュラの独走を許さんと次々と上がっていく!!もう一人のランのオーキッドクロス、ソードフィッシュも前に出てきている!!二番手のリボンアーリーチ、アスカフォーミュラにここ食らい付き続けましたがもう苦しいか!?アストゥラピデルタが今2番手に上がってサウンズオブロードが並び立つ!!』

 

「な、何で、なんでっ!!?なんで、走れるのよっ……!!」

「ウマ娘でも中にはいるでしょう?私のようなハンデを背負い、走る事を諦めざるえなかった娘たちが。私はその娘たちの為にも道を作りたい…たとえそれが、茨の道だったとしても」

 

自分の言葉に返答するかのように、答えられた。ハンデ、それは本当にハンデなの?と問いたくなるような走りだった。自分は中央でダイヤモンドステークスで勝った事もあるのに、どうしてこんなにも辛いんだ。

 

「ギリシャの蒼い稲妻!その力の一端、その目に焼き付けろ!!」

 

『さあアスカフォーミュラが最後の直線へと入った!!それにアストゥラピデルタがどんどんと迫っていく!!アスカフォーミュラここで足が伸びていく!!まだ余力があるというのか⁉オーキッドクロス、ソードフィッシュがぐんぐんと迫る迫る!!サウンズオブロードが外から一気にやってくる!!』

 

「トップチェッカー、マッハで頂きだぜ!!」

「行くでありますよぉ……全ての想いをランは背負い、不俱戴天の敵に突撃であります!!」

「聴こえる……これが、私だけの…ッ!!」

「ロートルの意地、見せて差し上げます!!」

 

「アタシだって、中央のウマ娘だ……負けってたまるかぁぁぁ!!!」

 

『リボンアーリーチが蘇る!!前へ前へ出ます!!残り100を切った!!間に合うか、いやアスカフォーミュラが更に前に出ていく!!抜け出す!!サウンズオブロードが食らい付く!!オーキッドクロスも懸命に足を伸ばすがアストゥラピデルタも来ている!!ソードフィッシュも逃さない!!どうだ、いけるか行ったか!!?アスカフォーミュラが逃げ切ったぁぁ!!やっぱり暴君と爆速ドッカンターボが生み出した流れは恐ろしかった!!3000を逃げ切ったぞアスカフォーミュラ!!!2着にサウンズオブロード、3着にオーキッドクロス!!四着にアストゥラピデルタ、五着にソードフィッシュ、最後のスパートでリボンアーリーチは六着!!』

 

 

「ッシャアアアアアア!!!来年はレジェンドに挑戦するぞぉぉ!!!」

 

勝利を誇示する雄叫びが耳を劈く、だがそれに対して不思議と怒りなどは湧き上がらなかった。唯々……その姿が眩しかった。

 

「ごめんトレーナー……一から鍛え直すわ」

 

第三回URAファイナルズ

長距離3000部門チャンピオン アスカフォーミュラ




天羽々矢様よりアスカフォーミュラ、マイスイートザナディウム様よりオーキッドクロスとアストゥラピデルタ、Pancoro様よりソードフィッシュ、トラセンド様よりサウンズオブロードを頂きました。有難う御座いました!!
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