「……フゥゥゥゥゥゥ……意外に意地を見せてくれるじゃねえか」
ハーブシガーを嗜みながらもそう呟くランページの瞳の先にはURAファイナルズ、ダート部門の勝利者たちがいる。良くも悪くも中央は芝のイメージが強く、ダートのイメージはない。故か地方はダートに強い誇りを抱いている面がある、これに関しては我々は負けない、そんな強い思いが見え隠れしている。
「何を恥ずかしがる、君は私たちを打ち破り頂点に立ったのだ。胸を張ればいいのだ」
「い、いやあの将軍様にそんな事言われちまうと俺……」
「将軍と言われているから、将ちゃんで。それかトラさんで」
「いや後者だと絶対違う人でるッス……」
ダートの1600部門の覇者はランページとも顔見知りなステルラグローリア、中央の将軍とも呼ばれるジェネラルタイガーとの迫力ある走りを制して見事ファイナルズ覇者の一人として歴史に名を遺す事になった。
「去年は負けたッスけど…今年こそは負けない…もうかっこ悪い所は見せられねぇって必死だっただけッス……見ててくれたかなシャカール……前回はかっこ悪い所見せちまったけど……今年は姉ちゃん……勝ったぜ、カッコ、良いかな……!?」
「ロジカルじゃねぇな……アンタが格好悪ぃなんて思ったこと何ざぁねぇっつの……」
インタビューを受けている最中、去っていく一人のウマ娘の姿をステラは見た。それは自分の親戚のウマ娘、去ろうとするその後姿にステラは笑みを深めた。ランページに無理言って手に入れて貰って優待チケット、ちゃんと使ってくれたことが何より嬉しかった。そんな自分に二人のウマ娘が襲い掛かって来るかのように飛び掛かって来た。
「何しんみりしゆーがじゃ、勝者の役目や笑え!!」
「よっしゃっ改めて、金星ごっちゃんです!!」
そんな事を言うのは1200の覇者たるサクラフジノオーと2000の覇者のドーンリョウマ。そんな勢いに押されて気づけば自分はその流れに従っていた。
「ほれほれちゃんと笑わないとダメだぞ」
「う、うっす!!ってぇメジロランページィィィィィィッ!!!?」
「ヤッハロ~」
ファイナルズのダートの覇者たちを称える場に唐突に参上したメジロランページに周囲は騒然とする、さも当然のように、なんでいちゃいけないの?と言わんばかりの態度に一同が愕然とする中で唯一ドーンリョウマのみが平然と彼女へと歩み出た。
「おお、ランページ!!おまさんと話がしたかったんじゃ!!」
「俺ちゃんとかい?」
「おおっ!!おまさんが作った維新の波をうちらも継いでいきたいんじゃ。中央にも負けん地方トレセンを作って地方から殴り込みをかける地盤と次世代をを作る。うちはそんな夢をもったきに!!!」
「維新たぁ随分と持ち上げてくれるな、俺ちゃんは唯俺ちゃんがやりてぇことを貫いただけの話だからねぇ……大したことはしてない」
それでもリョウマは綺麗な瞳のまま見据えると今度は大きく頭を下げた。
「ウララんことを頼んます。あいつはかわいい後輩なんじゃ。高知トレセン所属全員に愛されとる希有な存在なんじゃ、あいつの笑顔は皆あうんと好きやったんだ、あいつの笑顔だけは、曇らせんでくれ」
「任せとけ、その内故郷に凱旋させてやるから楽しみにしとけ」
その言葉に強く感謝の言葉を呟くリョウマ、そしてランページは手招きでマイクを渡してもらうと大きく声を張り上げた。
「さあお前ら、ファイナルズは堪能したか!!?日本各地から現れた猛者たちが鎬を削った、夢を争った、意地を張りあった、そんなレースを見てお前らは満足したか!!だったらその満足で満たした器より強いのを準備しろ!!明日は伝説の名を関するレースを始める!!」
そう、ファイナルズは前座と言っても過言ではない。実際はそんな事はないのだが毎度毎度出走メンバーが可笑しいのでファイナルズが前座扱いされてしまうのが恒例行事になりつつある。だが今年の勢いは今までのそれを上回るほどの大熱狂を纏った大成功に近い。
「明日、この場で行われるレースは今日のこれにも負けないと俺は思っている!!今日のこのレースだけで満足したか!?だったら明日はもっと満足させてやる!!!次のレースで、次の次のレースで、次の次の次のレースで!!無限に連なろうとする歴史の中で俺達の走りは永遠と輝きを灯し、次の世代へと語り継がれていく……改めて、俺は感謝する。此処に集い、走り、見届けた諸君らに!!!」
「お見事な演説でしたよランページさん」
「フローラ、テメェ聞いてたのか」
「貴方の言葉を私が聞かないとでも、これだけの想っている私が」
「だからテメェに見合いの相手がこねぇんだろダラズ」
「ひ、人が気にしていることを……!!」
演説の後、地下バ道を歩いていると極めて自然に隣を陣取るウマ娘こと、アグネスフローラがいた。なんというか彼女との距離は変わらないようでありつつもなんだか近くなっているような気もしてならない。
「ンで、お前はレジェンドレースに出ないのか」
「貴方が出ないレースに興味ねぇっす」
「凱旋門とかJCに出ておいてそれは通らねぇだろ」
「通りますよ」
今回、フローラはレジェンドレースの予選に参加していないし推薦状も拒絶している。単純にトレーナーとして集中しているというのもあるがそれ以上にあるのが―――ランページとは競わないという意思表示でもある。
「あれは貴方への挑戦権を得る為のレースでした、私のレースは全て貴方への道に帰結するわけですからね」
「相変わらず気持ち悪い言い草だな」
「私をこんな風にしたのは、あ・な・た♡ゲッフゥッ!!?殴る事ないでしょってどっから出したんですかそのハリセン!!?」
「自販機の裏から出て来るUMAには言われたくねぇ!!」
気持ち悪かったから殴った、後悔も反省もしていない。寧ろもっと叩きたい、だけどやると喜びそうだから不意打ちの一発に留めるとランページは思った。
「ホントお前マルチすぎる変態だな……何、俺に関すること全ては悦楽に変換されんの?」
「えへへへっそんなに褒めて何も出ませんよ~♡」
「……もしもしタキオン、聞いてた?」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!???」
「ジョークジョーク、暴君ジョーク」
「洒落になってねぇんだよ馬鹿暴君!!!アホバカ間抜け、人の心の無い怪物!!」
「あ"あ"ッ!!?テメェにそこまで言われる謂れはねぇ!!!」
「ひぃっ……♡」
ランページのガチの怒気を孕んだ声に思わず震え上がりつつも同時に顔を赤くするフローラにもう疲れて来たランページであった。
「凱旋門ウマ娘の走り、見せてやってもいいんじゃねぇか?」
「生憎、私は貴方みたいに若くないので―――もう、キッチぃんですよねぇ」
何処か自虐するように笑うフローラにランページはそうか、と小さく答えた。
「二人揃って凱旋門ウマ娘、今度はトレーナーの世界で勝負、それはそれで絵になると思いません?私たちの教えを受けた子達がトゥインクルシリーズで戦うんですから」
「まあ、言えてるな……だが生憎うちは層が厚いんでね、そう簡単には負けねぇよ」
「それリギルに向かって言いますか、ウチだって負けてないんですよ」
「それはおハナさんの功績だろ、お前のじゃねぇし」
「痛い所を……」
互いをそれなりに罵り合いながらも二人の間には不思議な信頼の橋がそこにあった。舞台は変われど二人の争いはずっと続いていく、それは彼女らの子供の世代になったとしても続いていく。だが、それはまだ先の話……迫るは伝説の舞台。
ダート部門チャンピオン
1200 サクラフジノオー
1600 ステルラグローリア
2000 ドーンリョウマ
SHOWTIMEHOUR様からサクラフジノオー、ドーンリョウマ、不知火新夜様からジェネラルタイガーを頂きました。有難う御座います!!
折角案を出していただいておいてこのような形にしてしまって本当に申し訳ありません!!ウマ娘に対するモチベーションは上がって来てますので次話は出来るだけ早く上げたいと思います!!
後フローラ、お願いだから夢の中でランページとの絡みを出さないと肩甲骨を剥がすとか言わんといて……。