貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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593話

響き渡るファンファーレ、始まりを告げる音色がレース場を満たしていく。期待と熱狂、不安、紅葉、様々な物が入り乱れるカオスが生成される、中にはその緊張に耐え切れずに気を失いかける者もいる始末。伝説の名に相応しいレースが日本の東京、府中のレース場で行われようとしている。これを目に焼き付けようと集った人々、友の勝利を願う、王者の勝利を願う、敗北を願う、祖国の勝利を祈る、様々な信仰とでも言うべき願いの塊がそこにはある。

 

「(渦巻いてる、無数の人の念……執念、執着、信仰、願望……確かにサンデーが戦場だって評したくなるのは分かる)」

 

サンデーサイレンスはレースは戦場だと称したことがあった。そこに掛ける思いを全て踏み越えて駆け抜けて来たと、それも納得だ、こればっかりは国土と人口の違いが諸に出るお国柄という奴だと思う。が―――

 

それが如何した、それすらも踏み越えて世界最速最強を獲得したのは自分だ。知った事ではない、自分を呪い殺したければやってみろ、怨念を纏わせたければ好きにしろ……だがするならば覚悟を持ってする事だ。

 

『さあレジェンドダートレース、世界規模のレースとなりましたがもうそんな事はどうでもいいんです、どうでもいいんですよ!!我々にとってはあの世界を駆け抜けたウマ娘の走りを見られるというだけで満足なのです!!さあ開演の時は後僅か、皆さまここからは瞬き厳禁目逸らし無し!!待ったなしの一発勝負を願います!!いざいざいざっ―――スタートしました!!!』

 

開幕したレース、勢いよく駆け出していく優駿達。誰かが叫ぶ、応援の声が瞬く間にレース場に、府中へと響き渡る。自分の声がどれなのか識別が付かなくなる程の大声の張り上げ合いの中でそれは明確に訪れていた。

 

『こ、これは!!真っ先に飛び出したのは三人!!三人です、暴君、超特急、騎士!!この三人が横並び横一線!!同じ舞台を駆け抜けた日本のダート三強が真っ先に並び立ったァ!!!いやそれだけではない!!そのすぐ背後にはイージーゴア、サンデーサイレンス、スカイビューティという米国三強がいるぞぉ!!?なんだこれは火花が散っております!!』

 

「やっぱその方法できたか……ンでお前らは真っ向勝負か」

「最善手はそれですからね!!でも」

「私たちは鍔迫り合いがしたいんです、最初から全力の!!」

 

ダイナとレディの闘志には頭が下がる思いだが、矢張りというべきか予想通りのど真ん中を突き抜けてくる戦術を取ってくる、メジロランページという大逃げウマ娘を破る為の戦術は既に解明されているしそれを実践していたのがレディとダイナだ。だが二人は引退をする為に悔いが残らない戦いを選択し、サンデー達は確実に勝ちに来る選択肢を取った。

 

「でも本当にあれって戦術なのかなぁ……」

 

スコードルドラがサンデーの背後で体力を温存する事を選択しつつも、彼女らが選択したそれらについて首を傾げていた。詰まる所、ランページの攻略法というのは……

 

 

「最終コーナーまでランページに離され過ぎないで体力を温存して最後の末脚でブチ抜くか、同じ速度で勝負して根性で勝つの二択っていうのは常に提示されてたんだ」

「いやでもさ、出来る自信あっかそれ」

「無理絶対無理」

 

北原が述べたそれに対してルディとミニーが顔の前で全力で手を振った。普通の逃げウマ娘などを捉えるなどの正攻法だ、自分達も教科書で習ったことがある、地方の教科書にも載っているレベルの何の変哲もない戦術なのだ。やろうと思うだけならば自分達だって出来る、問題なのは……

 

 

「成程、確かに正面からの殴り合いでしか勝機はなさそうだな」

「お前は矢張りアストレイだ」

 

ランページが大逃げウマ娘である。ターボに勝とうとする場合にも言える事だが、異常なまでに飛ばす為、本来の自分たちの適正速度を超えて走らされる為に体力と精神を加速度的にすり減らしていくのである。倒し方自体は王道且つ確立されている、だが……その為に要素は段違いな物を要求してくる。

 

「クッこのスピード……!!」

「まだまだだぞマーチ、ランページはもっと速くなる」

「ッ!?……そうか、なら気合を入れなければな!!」

「ああっ!!」

 

『米国三強の背後にはアイルランドのスコードルドラ、ソングオブエール、そこからややウチにカサマツのオグリキャップとフジマサマーチ、ドイツのレッドガン総長ライガーテイル、ドリームトロフィーリーグトップランカーナインボール。そこからやや離れてライブリマウントがいます。そこから2バ身離れてシュヴァルグローサ、ナカジマロータス。そして1バ身離れたところに大井のイナリワン、ダイナガーディアンと続きます!』

 

どんな展開になっていくのかと誰もが固唾を飲んで見守っている、誰がいつ行くのか、それともいかないのか、どうなってしまうのかという考えが無数に過っていく中でそれは起こっていた。それは……

 

「誰も、動かねぇ……!!」

「動かないじゃない、動けないんだ……」

 

先頭の三人、即ちランページ、レディ、ダイナが完璧にペースメイカーを務めている事になる。そして全員が分かっている、今この位置を維持する事こそが一番疲れず、体力を温存出来る。そして暴君の両隣を確保する騎士と超特急も同じく、走りながらもランページの一挙手一投足を目に焼き付けていた。

 

「(何時でも勝負出来ます準備は万端何時でも来いってか?生憎今日の俺は紳士的だ、運が良かったな……その時まで楽しみにしとけよ)」

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