先頭を走るランページ、レディ、ダイナ。この三人が主導権を握っていると実況は叫んでいるが事実上のレースの主導権はランページに移譲されていると言っていい。何故ならば二人はランページのペースに合わせる事しかしていないのでレースの全てを渡している。
『しかしこれはランちゃんへの挑戦や真っ向から倒して見せるという強気の意思表示ね』
『そうだね、絶対的な自信があるのか、それともプライドの問題なのかは分からないけど……一歩間違えば自分にとっての致命傷にも繋がる』
『しかしそれだとしても後悔は決して残さない走り、好きな走りですね』
『わ、私実況してて長いですけど今日ほど心臓と胃がキリキリしている日はありません……!!』
『お、同じくですっ……!!』
何処からやって来たスーちゃんたちが実況席の後ろに立ちながらも解説、これにはレース場は大騒ぎになるが赤坂からしたら自分達ほどじゃねぇだろうなと胃を抑えている。だがそれは知った事ではない、今回自分は何もする気はないんだ。抜きたきゃ勝手に抜けばいい―――だが今回ばかりは覚悟しろ、俺は―――一切の加減をしない。
『さあ先頭集団は未だに変わらず、フジマサマーチが少し下がりライガーテイル、ナインボールが上がります。1000mを今通過、タイムは―――えっ!?ちょっとこれ、ミスじゃないですよね!?』
思わず赤坂が声を上げた、そこにあったタイムは規格外どころの話ではない、常識を越えてしまっているものだからだ、ウマ娘の走りなのか?と問いたくなる程に。それを今、告げる。
『通過タイムは56.9!!遂に57秒を切ったぞ、我らの暴君は更なる進化をしているのか!!?いやこれほどのスピードで駆け抜けているのにレースの乱れが全く起きないこの光景こそが異常なのです!!これが、レジェンドレース、いやこれは最早レジェンドを超えている!!』
「ふざけた戦術を取ってくれるな……自滅覚悟の消耗戦か!!」
「速過ぎる、修正が必要だ……」
「こいつっマズい、これは―――だああもうしくったか!?」
「読み間違え―――違う、術中に嵌められてる!!力技なのになんて洗練されてる……!?」
「OH MY GOD!?」
後方からライガーテイル、ナインボールが必死に上がろうとするがそれをしたらもう最後の直線では絶対に追いつけずに負ける。レッドガン総長はその不敵さと大胆さ、豪胆さに感服しつつも笑い、完全無敵のトップランカーとして知られるナインボールは最早ランページの消耗に期待するしか勝ち目がない事を知る。
サンデーはこの手段に取った事に遅くなったことが腹立たしい、考える事はしたが、だがそれは誰もが考えるような幼稚な戦術、極めて力技による強引な物のなのに……これまでの大逃げのキャリアが遺憾なく発揮されて看過できない事態に発展している。
「こんな、状態をずっと維持する気ですか!?」
「うおおおおっ……!!」
レディはこの状況に困惑しダイナはその速度を維持するのに必死になっている、そうランページの戦術とは……
「最初から先頭を走れば負けねぇ、それを全力でやるだけ」
最初から100%の力で駆け抜け続けるという、どっかの紅の大和がやってそうな戦術であった。普通に考えればこれは通用しない、筈なのだが……
「ランページ、乗っているな、行くぞ私も!!」
「やるねぇいランページ!!こっちも行くかね!!」
「いやいや無茶でしょいくらなんでも!?」
「あはははっこれが世界なんだ、凄~い!!」
『さあまもなく第3コーナーから第4コーナーへと差し掛かりますが未だメジロランページが譲らない譲らない!!それに負けじとレディセイバーとアメイジングダイナが競り合いますが、後方からも続々と迫ってきている!!極端に後続との差が狭い!!好機を全員が伺っている!!』
「アッハッハッハ……天狗に速さで勝とうとするとは……天狗が山にしか居ないと思うたか、これが天狗と呼ばれた私の全力!!」
「アタシの波はアタシだけのモノ。譲らないよッ!!」
「さて、行くとしますか…ッ!!」
「この程度の威圧で怯むか、地方出身だからと侮った貴様らの傲りが招いた結果この始末か……ならば狙うはあそこのみ!!」
最後のコーナーへと差し掛かった終盤戦、
「暴君、ここからはシンプルな殴り合いだ!!自殺の予定がある者だけ挑んで来い!!!」
『こ、ここでライガーテイル!!ライガーテイルが一気に抜け出したっ!!中央から僅かな隙間を駆け抜けて強引に身体ねじ込んで今、米国三強に並び立ったぁぁ!!い、いや更に奥から来るのはトップランカーのナインボール!!最強が遂に来たぁぁぁぁっ!!!』
ライガーテイルのそれが、他者には並び立てない絶対的な優位性を完全に消し去った。正しくシンプルな殴り合いを要求するそれに対して真っ向から挑むトップランカー。遂にその牙が大きく突出し始めた訳だが……その表情に余裕の色はなかった。
「やはり、大きく過ぎる……修正がッ……!!」
心臓が痛い、肺が痛い、足が痛い、頭が痛い、全てが痛い、苦痛だ。思考が白くなっていく、目の前が染まっていくのが分かる。隣らで駆け抜けているレディとダイナにもそれは顕著に表れている、ど派手な消耗戦という言葉だけでは決して足らない程の走りを自分はしている。
『レディとダイナが落ち始めている!?いやこれは、メジロランページが更に加速、加速しています、更に加速なんて出来るのか⁉というかそんだけ走れるならマジでなんで引退したんだアンタァァァ!!!』
『あ~あ、実況が言っちゃったよ』
もう何も考えられない気がする、だが理由は一つだ―――いい加減、未来を応援したくなっただけだ。自分を養分にした伝説が見たいと思う。だから自分は更なる養分となる為に―――走る!!
「はっそれでこそだランページ!!テメェはそれだから叩き潰しがあらぁ!!」
「日本に、来た甲斐があったぁぁぁ!!!」
「一生、忘れません!!!」
『メジロランページが抜け出る!!レディセイバー、アメイジングダイナ必死の追走!!しかし既に加速するだけの体力がないのか!?その隙を逃さないとサンデーサイレンス、ナインボール、スカイビューティ、イージーゴアが来ている!!オグリキャップが同郷のフジマサマーチと共に一気に駆け抜ける!!追いつけるのかどうだどうなんだ⁉ライガーテイルは苦しいかいや大外に回って賭けに出る!!ナインボール強襲!!後1バ身、どうだトップは暴君すら、メジロランページは―――捉まらない!!さらに加速して、そのまま、怒涛のレジェンドレース三連続制覇ぁぁぁぁ!!!世界の暴君は未だに健在ぃぃぃ!!もはや彼女を打倒するものはいないのか、未来永劫の暴君として君臨するのかぁ!!!!―――、……!!―――!!!』
赤坂が何かを叫んでいる、耳がそれを音として認識しない、脳が言葉として認識できていない。また自分は勝ったのか……だけど一瞬見えたものがあった、それは―――
自分を超えるウマ娘たちがそこにいた。暴君を自らの物にした真の暴君がいた、剛毅な貴婦人がいた、英雄がいた―――自分の子供達がいた。ああそうか……自分はこれが見たくて……レジェンドを駆け抜けていたのか……それが分かるとフッと身体から力が抜けてその場に崩れ落ちた。
「お、おいランページ!?」
「おい確りしろ!!何をしている馬鹿共、早く医療班を!!担架を用意しろ!!日本のレース関係者は腑抜け共か!?」
周囲が騒いでるのは分かるが、ランページにそれ以上身体を動かす力は残っていなかった。だから、静かに腕を上げてサムズアップを示す事が精いっぱいだった。
「ぁぁぁぁっ……楽しいな……レースって」
その言葉を聞いた途端、周囲は安堵の言葉に包まれた。そんな姿を見て医療班を呼んでいたライガーテイルが思わず呟いた言葉に全員が同意した。
「全く、バカだバカだと思っていたが、お前が本当のレースバカだな」
フローラによる悪夢攻撃が原因でマジで最近は目覚ましもかけてないのに2時起き3時起きがデフォになって来てるので解決のためにも頑張って投稿します。というかあいつなんなんだよ、なんで気軽に壁超えて来るんだよ。やめろお前ウマ娘アプリに出てきたら一番怖いんだから、ただでさえ、ステゴが違い過ぎてお腹痛いんだから。