「やぁランページ、明けましておめでとうってなんかすげえ疲れてない?」
「あけおめことよろ上ちゃん、たりめぇだろ……こいつが常について回るんだぞ、ストレス半端ねぇよ……お婆様とスーちゃんに半泣きで土下座してなんとか明日からいなくなる位なんだぞ……」
新年を迎えたランページ、がその表情は全く優れない。あれだけの激走だったのでまだまだ体力の回復が追い付いていない、というのもあるのだが……それ以上にフローラが傍にいる事に全く適応出来ていないのである。海外で走り続けた暴君とは思えない程に今は疲れているのが分かる、なので本気でアサマとスーちゃんに土下座して監視を解除をお願いして何とか受け入れて貰ったので、漸く安らぎを得ている。
「マジでストレスぱねぇわ、今俺ゾンダーメタル埋め込まれたらやべぇぞ、ゾンダリアンどころか機界最強7原種並のパワー発揮すんぞ」
「何、君巨腕原種ならぬ巨足原種にでもなるの?」
「その場合俺の特殊能力ってなんだろな」
「重圧じゃない?」
「それ腕と被るなぁ……つうか脚はいたろ、ほら電磁波のあれ。というか通じるのか上ちゃん」
「勿論です、オタクですから」
使用人達は未来の旦那と共にいるランページは表情や態度は基本的にフローラのいる時と特別差異はないと語るが……矢張り雰囲気が柔らかいと述べている。
「プレアデスの方は如何よ、今年は今年で忙しくなるからなぁ……タイキにドーベルにスズカにステゴにサニー……下手したらここにもう一人追加だもんな」
「えっ誰?」
「シーキングザパール」
「ああ、リギルからスピカからカノープスからってどんどん移籍したって噂の……」
見聞を広げてから来ると宣言していたが……今年辺り来るじゃないかなと睨んでいる。というか、平然とリギル、スピカ、そしてカノープスから平然と移籍する辺り流石の肝の太さと言わざるを得ない。
「そういえばステイが最近かなり落ち着いてきたんだよね」
「あの暴れウマがか?」
「まあ荒れる時はあるよ、でもなんていうかな、普段からそれを出す事が極端に減って穏やかになって来たんだよね。普段はのんびりしてるっていうかダウナーっていえばいいのかな、そんな感じになって来たんだよね、理由も聞いてみたんだけどさ」
『あ~……なんていうか、サンデーとの走りでも思ったけど普段からエネルギー使うのってあれだなぁって思ったから、こっちの方が楽だって気づいたし舐められないように騒ぐのも疲れたから』
と述べていた。ステゴは如何やら身体がかなり小さい事を少なからずコンプレックスに思っていたらしく、それで普通の人間にもバカにされる事が幼少期からあった為にああいう態度だったらしい。トレセン学園に来てからは小柄なウマ娘も十分に活躍し尊敬されている事を知り、サンデーとの訓練で感情的にエネルギーを使い過ぎる事の愚かさを学習した結果、という事で落ち着いた。
「タイシンとかターボのそれを見て思う事があったのかもしれないな」
「あると思う、タイシンさんはなんかそういう事があったって沖野さんから聞いた事あるよ」
「ふぅん……ンでエアエアの状態は?」
「明日から軽い練習をさせる予定だよ、君の走りを見て随分と触発されてる感じだ」
実況でも言われたけどなんで引退したんだよ、と言われるほどの走りをしてしまったランページ。それに触発されたのはプレアデスの面々、正月にも拘らず自主トレをしているという話だ。あのウララも初詣に行った後はキングと一緒に練習していたらしい。
「俺ってば罪作りね」
「正直言うと俺も赤坂さんの意見には同意かな、如何して引退したのかなって」
「次の伝説を作る為って引退式でも言ったぞ」
次の伝説の為になる為に、自分の新たな伝説を諦めた暴君。と言いつつも実際は自分のやりたい事を全力でやりながら自分の伝説を作っていると一部では言われている。ぶっちゃけそれについては思う事もなくはないがしょうがないじゃないか、やりたい事やったら伝説になっちゃうんだから。
「まあどっちにしろ、多分だけどレジェンドレースに出るのはもうないだろうな。今回でやり切った感が満載だ」
「多分って、いずれ出るって言ってるようなもんだよそれ」
「それはそれで面白いだろ」
全く、自分の婚約者は良くも悪くも自分の価値を本当に理解してらっしゃる。トレーナーになったのも実は自分を倒すウマ娘を自分の手で育成する為じゃなかろうか?とも思う、そうなると可能性が高いのはスズカだろうか……?
「やれやれ、俺もプレアデスに顔出してぇけど……主治医からの許可ねぇとトレーニング器具に触れる事すら許されねぇからなぁ……哀れ、俺は今日も部屋でゲーム配信に勤しむのであった……」
「いや十分楽しんでましたよね?元気にマリカーのショートカット開拓してましたよね?」
「色違い厳選も欠かせないよね」
状況が状況なのに楽しもうと思ったら幾らでも楽しめる精神性を持っているのは本当に羨ましい……自分もこの位図太くありたいものだ……。
「それと上ちゃん」
「何」
「いい加減に俺を抱けよ」
「本当に君は唐突にぶっこむなぁ!?執事さんとメイドさんいるんだよ!?それなのに何言ってんのアンタ!!?」
顔を真っ赤にしながら抗議する上水流の言葉通りに部屋にはメイドさんと執事が控えている。主な役目はランページの世話もあるが、それ以上に鍛えようとしたら直ぐに諫める役目も担っている。が、流石にこんな事を聞いたら流石に顔を赤らめたり咳ばらいをする。がランページはそんな事は知ったこっちゃない。
「手出してくれないから俺はフローラがいる間、ずっと貞操の危機を感じてたんですけど。ラモーヌちゃん先輩のトレーナーみたいに囲い込みをする気はないけどさ、明確な婚約関係にあるんだから多少は手を出してくれよ」
「えっラモーヌさんのトレーナーってそんな関係なの?」
うむ、ラモーヌのトレーナーは既にメジロにされている。というのは語弊があるが事実上のメジロ入りをしているようなものだ。この前会った時は自分からもラモーヌを何とか抑えてくれないかと言われたが笑顔で無理と返答しておいた。
「今度メジロの屋敷に行ったときに見せてやるよ、あの人がどんな感じでちゃん先輩に迫られてるか、それともああいう感じが好み?」
「あの、俺の好みを勘違いしてない……?」
冗談だ、半分ぐらいは。だけど手を出してほしいのは事実、家の事とかスーちゃんの事とか色々あるので出してくれたの方が後々の事が楽なのは事実なのだ……。
「まあ遅かれ早かれ婚約発表はあるんだから諦めてくれよ、マイダーリン」
「う、う~ん……が、頑張る……」