貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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598話

「新年度は誰かスカウトするのかい?」

 

プレアデスのトレーナー陣で会議をしている時に坂原がそれを問いかけてきた。此処までプレアデスは毎年新人を取って来た、結果も出していないチームなんてすぐに破綻するなんて言われたりもしていたが、結果的に菊花賞とジャパンカップを制しているマヤが既にG1ウマ娘入りを果たし、トライアルを無事に勝利したエアグルーヴもいるのでそんな声は聞かなくなった。と言っても新人をチーム入りさせるかは難しい所。増えればそれだけトレーナー側の負担も大きくなる。

 

「俺はとってもいいとは思ってるんだけどな、今年も面白いのが来るし」

「どんなのが来るんだい?」

「フローラの親族」

 

それを聞いた途端上水流は難しい顔をして眉間を揉み始め、坂原は困ったなぁと言いたげに微笑んだ。確かにここだけを聞いたら不安に思うのは事実なのは分かる、自分だって事前知識なしだったら複雑な顔をしていた事だろう。

 

「安心しろよ、フローラに比べたら億倍、いや京倍まともだから。寧ろあいつのあれやこれやに辟易してて絶縁しようって親に提言する位にはまともだ」

「そうかそれは安心……」

「いやそれって安心出来るのかい?仮にも家族に絶縁しようって言えるって……」

「まあ片方はフローラ気質ではあるのは確かだな」

「「嘘でしょ……?」」

「そこまで動揺する?」

 

顔面蒼白になって戸惑いを一切隠すことが出来ずにオープンにしているその姿に笑う事が出来ない。割と冗談抜きでフローラがどういう目で見られているのか分かった気がする。

 

「言うなればフローラが俺に向けるそれを薄めてウマ娘全般に向けてるみたいな感じだからの限界オタク……かな」

「あ~……あ~何となくわかる、かな……多分フローラに比べたらうん百倍もマシな部類だよね」

「そういうもんなの?」

「フローラに比べたら相当にマシよ」

 

実際アグネス家のそれが来るだけではない、他にもアグネスと激しく競り合ってダービーを7cmで逃してしまった二冠のエアシャカールに金鯱賞三連覇の晩成逃げウマ娘のタップダンスシチー、史実ではドリームジャーニーとオルフェーヴルの母であるオリエンタルアートもやって来る。この世代を最弱の世代だと言う声もあるが、自分はそうとは思わない。

 

「それで誰かスカウトするのかい?」

「さぁてねぇ……俺はとってもいいけどそっちは対応出来るん?」

「メイントレーナーがしたいと言うならサブは出来るように苦労するだけの話だよ」

「そうそう、好き勝手にやって俺達を振り回してくれ」

「ンな事言ったら他のチームから引き抜いてくるぞ」

「「それだけはやめろ」」

「へ~い」

 

まあ流石にそんな馬鹿な事をする気はないのだ、するにしても移籍要請を受けた場合に限る。と言ってもそればかり考える訳にはいかない、何故ならばメイクデビューを控えているウマ娘が圧倒的に多いのだから。それが終わったと思ったら今度は黄金世代……我ながら馬鹿な事をしたのでは……と心なしか思っている。まあ面白いレースの為だ、致し方ない。

 

「さて、新年度はどういう事になるかねぇ……」

「ランページ的には如何なのさ、教え子がティアラ三冠に挑むんだよ。新聞でも大いに騒がれてるし意気込みとか一つ」

「アッ?ねぇよんなもん」

 

チューリップ賞ランページ記念を制したのは教え子たるエアグルーヴ、それ故に新聞などではそれが大々的に報じられているが肝心要のランページはそれに全く面白い反応を返してくれないので、新聞は中々に記事を作るのが難しかったのか、えらく無難な物ばかりが並んでいる。

 

「結局のところ走るのはウマ娘なんだぞ、トレーナーはそれまでの道を整えて一緒に悩んで最高のパフォーマンスを引き出せるようにするのが役割だろ。それなのにあのレース見たろ、何なんだよふざけてんの?トレーナーが自分の理想を一方的に押し付けてたり、現実を教えずに一緒に無謀な幻想を追いかけて落ちてるじゃねえか」

 

そう、これをインタビューでランページはハッキリと言ったのだ。他のトレーナーやウマ娘を非難するつもりも権利は自分にはないと前置きしておきながらもだったらしっかりと一緒に悩んで試行錯誤をして、人事を尽くして天命を待つぐらいの気概を持ってほしい。あんな中途半端は走る側に負担しか齎さないと言い切っていた。それに対してインタビュアーが貴方が原因なもんなんですけど……とも言われたが

 

『だったら何だ?トレーナーならその原因を真似る事のリスクとか難易度を確りと考慮するもんだし相棒のウマ娘にもそれを確りと伝えるしそれが役目だろ。俺達トレーナーはウマ娘の人生預かってんだぞ、何も考えずにやりましたって胸張ってるのを擁護するのか?』

 

真顔でこれを返した。普通ならばリスクを感じていえないことまでズバッと言ってしまった。世間的にはかなり荒れているらしいが、トレセン学園とURAは全面的にランページを支持しているとの声明を発表している。

 

「僕としても君を支持するけど、一々こんな報道とかされると面倒臭いし自重した方が良いんじゃない?一々メジロのアサマさんとかスピードシンボリさんとかウラヌスさんに迷惑かけるのは本意じゃないでしょ」

「まあそれはそうだなぁ……でもあそこは確り言っておかないと後々面倒なの湧いてくるだろうしなぁ……」

「俺としてはトレーナーとして正しいのはランページだと思ってるよ」

「流石ダーリン分かってるねぇ」

「やれやれボクもいるんだから惚気るなら二人っきりのベッドの上だけにしてよ」

「ちょっちょっと坂原さん!?」

「おいおい勘弁してくれよ、マヤとのデート用のレストランのお食事券上げるから許して」

「許す」

「釣られた!?」

 

そんな風にプレアデスの日常は過ぎていきながらも……新たな世代はそこまで来ている。

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