「ほれウララ、ちゃんと走らないとダメだぞ~」
「は~い!!!」
チーム・プレアデス。世界最速最強たるメジロランページの眼鏡に叶った者だけが入る事が出来るとされるチームでそのメンバーも全員が素晴らしい素質を持っている、と言いたい所が新人のトレーナーでも分かる程にその才能には口を真一文字にする程度には……才覚という物がハルウララには欠如していると言わざるを得ない。なぜあんなウマ娘をチームに……と思う者は少なくはない、中にはトレーナー契約が見込めないからチームで預かって欲しいという要請を理事長やたづなから受けるという事が無くはないのだが……ハルウララは入学した年にプレアデス入りを果たしている。これは暴君の忖度なのか、それとも気まぐれなのかも論議の対象となっている。
「ランページさん、ウララさんの走りは如何なの?」
「全く以て……矯正に苦労したよ」
ほれ、と指を向ける先には確りとしたフォームで砂を蹴って走っているウララの姿がある。スピードも伸びて来ていて、スタミナや勝負強さのような負けん気も出てきている。その姿に思わずキングは口元を抑えてしまった。
「ウララさん、貴方遂に……!!」
「ホント大変だった……忖度とかする気はなかったんだがウララに真っ向からああしろ、こうしたらダメだとか違うって言い出せなくてなぁ……ホント生まれ持った性質っつうのかね、あれは天性のアイドル気質だ……」
『ねぇねぇねぇっランページさん今のどうだった!?』
『あ~……そうだな、走り込みの効果が出てよかった。だけどもっと速くなる方法はあるぞ?』
『そうなんだ~!』
『……如何するかなぁ……』
マイペースで天真爛漫で集中力がない、幼子を相手にしているような気分で下手に怒れず下手な指導が出来ずと色んな意味で新人トレーナーには辛いのがハルウララ。なので根気強くウララが興味を持つようにさり気無く、鬱陶しさを感じぬようにやって来た成果が漸く実って来た……。
「苦労したよねマジで……本気でご褒美方式を検討したもんな」
「ボクもマヤにやってあげてるけど、あれは別ベクトルだからね……寧ろやってあげないと調子崩すし」
「どういう事なの?」
「ご褒美が走る理由になってはいけないって事さ」
ウマ娘がトゥインクルシリーズで活躍する年数、それは3年が統計的に一番多いと言われている。この3年をどう捉えてどうするのか、そうなるとやはり重要になって来るのは自分がどんな走りをしたいか、ウイニングライブでセンターを取りたい、レコードを出したいというのならば非常にやりやすいが……レースそのものを楽しんでいると言うのがトレーナーとしては一番辛いとトレーナーは言う。トレーナーは何とかしてやる気を出させようとするが……
「それでやる気を引き出しやすいのがご褒美って訳だ、俺もやってたのは最初ぐらいだからな、目的になる前に切ったのさ」
「でもどうやったんです?ウララさんってば髪の手入れの時もアニメを見せないとジッとしてくれないのよ?」
「俺のレースを見せた、どこが凄いと思ったとか走ってみたいウマ娘はいるかとか根気よく」
「さ、流石ですね……」
ウララの自発的な変化を祈るばかりだった。そこで用いたのは世界最速最強のランページのレース映像、一応ダートのみに限定したがウララの食いつき方は思った以上だった。目をキラキラ、いやギラつかせながら食い入るように見ていた。試しに上水流が見える位置に大好物の人参アイスを置いてみたのだが、全く反応を示さず見終わった後にようやく気付いたほどだった。
「ンで入学からじっくりと時間をかける事1年……漸く、漸くっウララがフォームを覚える事が出来たんですっ!!」
「1年……長かったようで短かったね……」
「ウララちゃんの可愛さはほっこりするけど、トレーナーとしては悩ましかったね……」
トレーナー陣三人が涙を流してウララのフォーム改善に成功した事に歓喜している、本当に大変だったのだなというのがよく分かる。
「でもハッキリ言ってウララさんの能力的には如何なの?」
「そりゃおめぇ―――同学年と比べたら下の下よ」
「や、やっぱり?」
フォームが良くなった事で漸くまともなスタートラインに立っただけだ、ウララの能力は高い訳ではない。全てをひっくるめたら下の中の上、というなんとも微妙なライン程度には立ってるだろうが……それでも同級生たちと比べてしまうと低いと言わざるを得ない。が、それをランページはそれほど悲観していない。
「低い?なら鍛えりゃいい、技術がない?だったら練習すりゃいい、弱いウマ娘は勝てないウマ娘か?違うだろ、勝つウマ娘が強いんだよ。移動による相手のペース攪乱、狙い撃ちのマーク戦法、最初から駆け抜ける大逃げ、戦術は勝つ為にするもんだ」
どれほどのものが叩き込めるかは何とも言えないが……ウララはタフネスでかなり確りと砂を踏み込んで蹴るのが特徴的、ハッキリ言って早い走りは爪先で蹴り込むが今のところそれが出来ない……のだがやりようは幾らもであるのがウマ娘の世界。
「近い内にリンクスに会わせるのも面白いかもな」
「そういえばこの前一緒に配信してたよね」
「ああ、一緒にご友人♡って言ってたよ」
「何それ」
フロム公認実況者として一緒に仕事をしただけである。その場のノリで自分達が英語音声をアフレコしたりもして遊んだ。楽しかった、コメントに日本兵が大量に沸きもしたが。
「さてと……この調子でウララは仕上がれば上々、何まだ2年もあるんだから大丈夫さ」
「君のライバルの親族、どんな子なのか興味あるな」
「同じく、楽しい子だと良いな」
「さて、どうなる事やら……」