貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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601話

入学式というのは新しい人生が学校という世界に入って来る、人にそれぞれにそれぞれの価値観や考え方がある。分かりやすい所で言えばランページ派かフローラ派か、なおこの場合はフローラのそれはライバルに勝つ為に全てを賭けて来たという精神性という意味であって当人自身の人気は……こういっては何だがかなり低い。

 

「なんでぇ……」

「あんな妄言まき散らしてたらそりゃそうなるだろ、グラスがいい例だ」

 

そんな風にトレセン学園では様々な考え方が存在するわけだが……そんな中であるウマ娘を見つけた。

 

「……このデータが不足してんのか、今とれるもんでもねぇな……かといって計算が終わってねぇし……一先ずこん時のデータで代用して比較にしてみっか……」

 

ベンチに座りながらノートパソコンを叩き続けているウマ娘がいた、黒髪で目つきがかなり鋭いウマ娘、ノートパソコンには大量のステッカーが貼られている。そのウマ娘には覚えがある、なので気配を消してこっしょりと背後に回って何を打ち込んでいるかを見てみた。すると……それは自分のデータだった。

 

「ああくそ、やっぱりズレが起きやがるな……だけど去年のデータなんて取ってねぇし……だけどダートじゃ状況が余りにも違い過ぎる……凱旋門データでも漁ってみるか……?」

「そのデータならあるぞ、ほれやるよ」

「あ"ぁ"?……おいこのデータ、マジか第二回のレジェンドのあのデータか……!?しかもここまで詳細に……!?」

「地味にあれはドローン撮影もしてたしその延長線でデータも確りとってたからな、この位余裕」

「そうか、あれはドローンの……ってうおおおおっ!!?」

 

自然な流れで会話に入ってきたうえに貴重なデータと話が分かっていたが故に理解が完全に遅れていた少女はドリフのコントみたいな動きで引いた。見た目とのギャップでかなり面白い。

 

「ななななななんっなんだテメェ!?人のパソコンを勝手に見やがって通報されても文句言えねぇぞ!!?」

「だからデータ上げてるんじゃないのよ、そのデータだけで幾らになると思ってんの?数千万程度でなんかじゃ話にならないぐらいの価値があんのよ、ンで俺はそのデータを生み出した張本人」

「―――ど、ど独裁暴君のメジロランページじゃねえか!!?なんでこんなところに!!?」

「どうも貴方の心に這い寄る独裁暴君、メジロランページっです♪」

 

我ながら古いなぁ……と思うのだが相手は相手で自分が現れた衝撃でそれどころじゃないらしい。折角気合を入れて声色まで寄せたのに……。

 

「おい何時まで固まってんだ、なんかリアクションプリーズ。フローラ相手にこれやってたらあいつ鼻血噴き出してるぞ」

「……マジであの暴君か……?」

「応、ステランからお前の事は聞いてるぞ」

「……本人かよ……というかなんてデータ渡してんだ常識ねぇのか!!?」

「おおっ遠慮ねぇな新鮮な気分」

「うるっせぇわ!!!ったく……知ってると思うけどエアシャカールだ、データは有難く使わせて貰うけどよ金、取らねぇよな……?」

「ぶっちゃけいらん」

 

彼女の名はエアシャカール、父は日本競馬には欠かせない運命に噛みついたサンデーサイレンス。このエアシャカールはとんでもない気性難であり、武 豊騎手に頭の中を見てみたいと言われた事もある。その為厩舎では厩務員も嫌がりくじ引きをしたり、ケアをする時はVIP待遇のような総動員で対応していたらしい。しかしそれ以上に知られているのがもっとも惜しかった三冠、武 豊の前人未到の夢、三連覇が掛かった日本ダービーでエアシャカールはアグネスフライトに7cmという大接戦で敗北し武 豊の夢は騎手引退を前に悲願を成し遂げたかったアグネスフライト騎乗の河内 洋騎手の意地に敗北した。この7cmというのが良くも悪くもエアシャカールの代名詞になった。

 

「ンで何やってんだ?ぱっと見俺のレースのデータの解析、いやそれを大本、経験値にして何かを育てたって感じか」

「ハッお見通しかよ、暴君様は神通力でも持ってんのか」

「というよりもシンプルに俺はそっち関連も強いからな、なんか俺のAI作るとかいうプロジェクトもあってなぁ……マジファッキン」

「……わぁったよ、素直に話せばいいんだろ」

 

エアシャカールは自身で作り上げたデータ分析プログラムParcae(パルカイ)、それはレースに誰が出走するのか、そして着順までも正確に予測する事が出来るという。ランページはなんだその量子コンピュータ染みたもの、と思ったのだがそれが解析出来ない存在がいたとの事、それが―――メジロランページとアグネスフローラであった。

 

「どうしてもあんた等だけはどんだけデータを打ち込んでダメだった……Parcaeに問題があるのかは分からねぇ、いや単純にデータが足りねぇと思うんだが……」

「フローラもなのかぁ……」

「ローズステークスまでのデータを入力した、秋華賞では絶対にアグネスフローラの勝利になってた、俺も実際にレースを見てて絶対に勝つと思ってただけどアンタはそれを引っ繰り返してた。それからもアンタは勝ち続けた、ドバイでもアイルランドでも、凱旋門でもアメリカでも……!!」

 

そんなに自分は予測不能な存在なの、だろうな。三女神とも交信出来る上に偶に一緒に晩酌やって酔い覚ましのアサリの味噌汁を作るウマ娘が何処にいるというのだ。というかダーレーアラビアンはなんで酔うんだ、他の二人は全く酔わないのに。

 

「それだけじゃねぇ、アンタは引退してからのレジェンドレースでも結果を出し続けてるじゃねぇか!!納得できねえ、何で勝てたんだ!!?」

「そんな事言われましても……俺が強かったから?」

「だけじゃ納得できねぇから言ってんだよ!!」

 

参ったな、致命的に語彙力のない自分にこのガチガチ理系のデータ理論派ウマ娘を納得させる材料など持ち合わせてはいない、どうするべきか……そうだ、面倒だから。

 

「だったら―――自分の目でデータを取って確かめるか」

「……何を言ってんだ、プレアデスに入れっつうのよ」

「その気があるなら歓迎はしてやるが……新入生の歓迎会だ」

 

そう言うとランページは携帯を取り出して何やらを弄り始めた、そして喉の調子を確かめてからあ~っと声を出すとトレセン学園中のスピーカーからその声が聞こえて来た。

 

「はぁっ!?アンタまさか学園のシステムに!?」

「これでも、トレセン学園広報担当なので。んっ!!おはこんハロチャオ~貴方の記憶にワールドレコード、独裁暴君、生涯無敗!!SPEED SPEED LOVER!!なメジロランページだぜい!!皆の者、善行積んでたか~?新入生の皆の者入学おめでとう~!!このランページさんも新入生のキラキラ加減にはバルス受けたムスカ並の眩しさで目が潰れそうだよ~いやぁ若いっていいよね~さてそんな若さに敬意を表して、歓迎の特別レースを開催します!!おい妹に罵倒されて凹んでる日本の大華、自称俺のライバルに格下げされたくなかったら10分以内にコースに来い、後は……希望者は現場で決めますので走りたい奴も集合~!!それでは後でね~♪」

 

そう言って回線を切る姿にシャカールは目を白黒させていた、何で自由なんだ……というよりも滅茶苦茶やりすぎだ……そんな自分にランページは笑って見せる。

 

「データだけで実証しきれないのが生き物ってもんよ、お前は俺がこういう事するって予測出来たかい?何が出来て出来ないだけで語れる程、人生は浅くないが深くもない、それを決めるのは……ハートだぜシャカール」

 

魅惑的なウィンクに一瞬胸が高鳴りそうになったが、シャカールは歩き始めたランページを追いかけた。そして宣言するように言い放つ。

 

「だったら見せてみろや、暴君」

「ハッ見てろ青二才(サニー)

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