貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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602話

「何が、何が起きてんだこれ……!?」

 

思わずそう口から出てしまう程に今目の前で起きている状況に困惑している。当然と言えば当然だ、エアシャカールは単純に少しだけ頭に来ただけだった。目の前に世界最速最強の暴君が現れてデータをくれたと思ったらただ強いから勝ったと宣うから納得出来ないと返しただけだった。それで彼女は実際に自分でデータを取ってみろと言ってきた、そして―――

 

「マジでなんなんだよ……」

 

目の前のトレセン学園のコース、東京レース場と同条件が整えられているそこを駆け抜けているのは独裁暴君たるメジロランページ、その最大のライバルとも言われる大華たるアグネスフローラ、現トレセン学園会長のトウカイテイオー、副会長のメジロマックイーンとイクノディクタス、三冠ウマ娘のナリタブライアン、そのライバルで凱旋門2着のサクラローレル、トリプルティアラのツインターボ、海外G13勝のミホノブルボン、プレアデスのマヤノトップガンにサンデーサイレンスという模擬レースと評するには厳しすぎるメンバーが揃い踏み。このメンバーが……自分のデータ収集の為に走るのかと思うと背筋がゾクゾクし熱くなってきている。

 

「このデータは……やべぇぞっ……!!!」

 

学園中の生徒、トレーナー、教師陣、理事長とたづなまで見に来ているこのレース。先頭は矢張りランページ、それらをあらゆる角度からドローンが撮影しそれをデータとして得る事が出来る……その事が余りにも魅惑的、官能的ですらある。必死に送られてくるデータに向き直っていると……隣に一人のウマ娘が立って困ったように笑いながら言う。

 

「全く、ランってばしょうがないなぁ……」

 

そんな言葉に顔を向けると、そこにはメジロの三冠、メジロライアンがいた。思わずギョッとして手が止まってしまった。

 

「でも今日は……ちょっと調子良くないのかな?そういえば、朝記者さんに囲まれてふざけんなって言ってたからかな」

「(こ、これで調子が悪い!?)」

 

何かの悪い冗談じゃないのかと思った。三冠とライバル、あのサンデーサイレンスらを同時に相手どって圧巻の走りを見せているにも拘らずあのツインターボの爆逃げすら振り切っているのに⁉と驚いているのがばれたのかライアンが笑った。

 

「そうだね、今日は強いて言うなら……80~84位かな、でも流石だね。普段やらない移動攻撃で後続の疑念を招いてる、あっブルボンが来てるけど更にペース上げた、地味に焦ったな?多分このままフルスピードかなぁ」

 

ライアンの言葉の先にいるランページは上がってきたブルボンに合わせるように再加速、後続から飢えた獣の如く追い上がってくるそれらを必死に振り切らんと疾走する。ドローンの映像が流れる中、ライアンの視線につられて向けた視線は……もう外せなくなっていた。

 

「―――すげぇ……」

 

その言葉を聞いて、ライアンが笑うとランページがターボとの大接戦の末のクビ差で勝利を収めた事で大喝采が上がるのであった。

 

「ゼェハァ……テンメェターボ、この野郎……模擬レースだっつっただろうが!!ガチのガチでドッカンターボまで出すなやっ!?つられて、こっちまでガチになっちまったじゃねぇか!!」

「だってランに勝てるかと思ったんだもん……ウェ……」

「なんでこいつらに負けたのか納得いかねぇ……」

「更に研鑽を積まなければ……これではドリームトロフィーリーグで勝てません」

 

大逃げ勝負を繰り広げた二人に負けて釈然としないサンデーと更なる進化を目指すブルボン、何気なく恐ろしい光景だ……がそれ以上にランページは気になっていたことがあった。

 

「おめぇ自称ライバルに降格な」

「なんで!?ちゃんとレースに出たのに⁉」

「流石にジョークだけどよ……お前が7着ってのが意外だ」

「ターボも思った、フローラ調子悪いの?それともなんか悪い事して怒られた?」

「ぐっはぁっ……!!」

 

ターボの鋭い指摘が胸を抉る―――

 

「いやこいつに胸はねぇ、ない胸は抉りようがねぇぞ」

「うぼわぁ……!!?」

 

更なる追撃がフローラを襲う!!

 

「私から見ても先輩の走りには普段のあれらがなかったな」

「無かったね、ランページさんに対するあれやこれやが」

「なんというか、フローラってあれらなしにすると勢い無いね」

「まあフローラさんですし……」

「伊達にランページさんの為だけにローテを組んだウマ娘ではないという事です」

「ンで本当の所は?」

 

地味に6着というフローラの上の順位に入ったマヤを撫でつつもフローラの明らかな不調の理由を聞いてみる……まあ聞くまでもないのだろうが。

 

「……いや実際問題、走るまでは全力で行こうと思ったんですよ。でもフラちゃんの言葉とか思い出してなんかこう……自重しなかったら怒られると思ったら何か……凄い怖くなって……」

「その結果が7位か……ホントお前対俺特化且つ妹に弱いな」

 

やっぱりというべきかフライト関連だった。フローラが全力を出す=自分への執着を全開にするという事でもあるので、それをするとまた妹からの視線や絶縁するやらが……と思うと力が出せなくなったとの事。それだけの事で?とも思うかもしれないが彼女にとって妹は目にいれても痛くない程に可愛い存在なのである。

 

「因みのこの状態のフローラをフライトはどう思う?」

「どうせ負けるんなら全力出して負けて欲しかったですね、何中途半端やってんですか愚姉」

「……」

「ああっフローラさんが燃え尽きてるよ!?」

「ほっとけ、ほれマヤ坂原さんと一緒に行くレストランの招待券だ、渡してきな」

「わ~い!!!」

 

一先ずそんなフローラを放置して集まってくれた皆に頭を感謝を告げて、続けてリギル、スピカ、カノープスがレースすると後始末をぶん投げておいた。おハナさん、沖ノッチからちょっと待て!!と言わんばかりの顔をされたが南ちゃんからは分かりましたと言いたげな笑いを向けられたのでよしとした。

 

「感想は如何だったよ」

 

パソコンから顔を上げ続け、そこには明確な興奮と感動が浮かび上がっているシャカールに声を掛ける。それで漸く正気に戻ったのか慌ててパソコンを閉じながらもそっぽを向いた。

 

「い、良いデータが取れたぜお陰でな!!」

「そりゃ重畳。フローラについては残念だったな、だけどこれで精神面が肉体にも影響を及ぼすいい証拠にはなるだろ」

「……まあな」

 

シャカールが唯一残念にしているのはフローラのいいデータが取れなかった事のみ、まあそれはまた何れ取る機会もあるだろう……この、暴君の傍にいれば……必ずある、というか年がら年中あると思う。

 

「……おい、チーム加入用紙一枚寄越せ」

「ほい」

「……冗談で言ったんだよ、誰が書くか……」

 

そう言って去っていくシャカール、だがランページはそれの手が少しだけ動いていて用紙を取るべきだったか……と少しだけ葛藤しているのを見抜いているのであった。それを見て笑っていると―――ライアンが声を上げた。

 

「大変だラン!!なんかこの子いきなり鼻血出して倒れたんだけど!?」

「おいローレル手伝ってくれ!!保健室今先生いるか?!」

「いえ、ですがアルダン先輩とクリーク先輩なら居る筈です!!」

「よし運ぶ……ってあれ、こいつ……」

 

 

「う、うへへへへっ……トレセン、サイッコー……」




さてラストは誰のセリフか分かるかな?(棒読み)
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