「ンでクリーク姉さんにアルダン姉ちゃん、こいつの容体は?」
「う~ん……興奮し過ぎた結果の鼻から流血したという感じですね」
「直ぐに良くなると思いますよ」
「よかったぁ~……」
「ビックリしましたよ本当に、ランページさんが運ぶの手伝ってくれなんて言いますから」
「いやだって目の前で倒れたんだからそりゃ運ぶだろ保健室に」
倒れた生徒を保健室へと運び込んだランページ、ライアン、ローレル。そこでは保険医の代わりに待機していたクリークとアルダンがいて軽い診断を行って貰ったが大した問題はないとの事。それについては安心はしたのだが……
「ワイド、ターフ、ダート……サイッコー……ウエェヘヘヘヘヘヘ……」
「先輩、なんか譫言みたいな事言ってますけど……」
「一応タオルを冷やして乗せて上げましょうか」
「新入生かもしれませんし……お名前は何というのでしょうか」
クリークがタオルを準備している間、アルダンが布団をかけてあげているのだが……ランページはアルダンの疑問に答える事が出来た。
「俺知ってるよ、こいつフローラの親類だ」
「あら、フローラさんの」
「あらあら、ではお噂の妹さんですか?」
「そりゃフライトだよクリーク姉さん、こいつはデジタル、アグネスデジタルだ」
真の勇者は、戦場を選ばない。その馬を表す言葉としてはそれだけで十分だった。名馬と言われる存在には得意な条件、場などがあるがこの馬にはそれがないと言われる。国内外11の競馬場で走り、芝とダートのGⅠ双方を勝利したオールラウンダー。GⅠ級競争6勝という記録を持つ芝ダート両刀の勇者、アグネスデジタル。
「一応フローラから話は軽く聞いた事ある、なんつうかレースとウマ娘愛が強い研究熱心って言ってたな。俺の模擬レースで昂らせ過ぎたか……」
フローラもデジタルをフォローする為に彼女なりに必死に言葉を選んでデジタルの事をそう表現していた、だがフローラに比べたらどんな奴でもマシだと言ってやった。実際問題デジタルとフローラがどっちがやばいとかと言ったら即答でフローラと答える自信がある。
「確かにランページさんのレースは刺激が強いかもしれませんからね♪」
「おいやめてくれよ姉さん、素直に凹むぞ、姉ちゃん姉さんが虐める~」
「はいっいい子いい子♪」
「な、なんかすごいレアな光景……」
ライアンにとっては見慣れた光景だが、ローレル的にはランページが誰かに甘えるという光景は見慣れない。姉ちゃんというのもアルダンがそう呼ばれてみたいという願いを聞き入れてそうしているのである、意外にこの二人は絡みが多い。
「むうっ……ランページさんのお姉ちゃんは私なのに」
「フフフッこれは譲れません♪」
「アルダンさん、これトレーナーさんにもやってやりな、絶対堕とせる―――もとい、喜ぶから」
「まぁそうでしょうか?それじゃあしてあげようかしら?」
後日、アルダンのトレーナーは溶けかけて墜ち掛けた。そして距離が縮まったとか。
「う、う~ん……あれ、私どうして……」
「あっ目が覚めました?」
「―――ヒェッ!!?凱旋門でフローラお姉様と激闘を繰り広げたローレル様が何故あっそして顔が近くて凄い良い匂いが……そして凄く顔が良くて瞳のサクラ模様に吸い込まれそ―――キュゥ……」
「あら、もしかして寝不足から来るものだったんでしょうかぁ?」
「いや姉さん、絶対違うから」
起きたと思ったら再び気絶したデジタル、これは……思ってた以上にあれだがフローラよりも遥かにマシだと思える自分は一体何なんだろうと思ってしまった。何時も被害にあっているからこそ感じてしまう嗅覚のような物だろうか……。
「本当にすいませんでした……」
「いや気にすんな、こっちこそ勝手に場所移して悪かったな」
その後、目を覚ましたデジタルはプレアデスの休憩スペースで目を覚ました。あの後、同じく興奮して気分が悪くなった新入生や触発されてトレーニングをしようして失敗して入って来た生徒の対応でベッドが必要になってしまったのでランページがデジタルを部室へと移した。そこでもデジタルはランページを見て気絶しそうになったが、倒れたら怒るぞと言ったら必死に耐えてくれた。
「しっかしあいつの親戚ねぇ……なんか複雑な気分だな」
「あ、あのメジロランページ……様」
「様なんていらねぇよ、メジロも付かなくていい。俺は唯のトレーナーだ」
「い、いえそういう訳には!!?ああでもご本人をお言葉を妨げるなんて無礼極まりないし……ラ、ランページ様で宜しいでしょうか!!?」
「いやさんでいいだろ、タキオンでもそうだぞ」
「いえいえいえいえいえ私程度のウマ娘がさん付けなんて畏れ多いですぅ!!?」
フローラと似ている熱量のようなものを持っているし勢いもある、だがそれ以上に極めて理性的。欲望に忠実でありながらもそれらに決して流される事なく理性的に相手の言葉を受け止め、自分を客観的に評価する事が出来ているのはフローラにない素質を感じさせる。一先ず、様付けは了承すると有難う御座いますご褒美です!!と叫ばれた。
「なぁデジタル、ちょっと聞いてみたい事があるんだがいいか?」
「私程度でお役に立てることがあれば何なりと!!」
「そう畏まるなって……フローラってさ、お前らアグネスの家から見たらどんなウマ娘だ?」
自分にとってのフローラは粘質ストーカー……ではなく自身に執着し挑み続けた不屈にして不撓の挑戦者にして最高のライバル。だがそれらをぶち壊す程にあれな所が多い彼女を家族はどう見ているのか?というのが気になっていた、タキオンにはいまいち聞きづらかったので聞いていない、というか聞いてほしく無さそうな顔をしてたので聞いてない。
「お姉様について、ですか?う~ん……私達アグネス一族の中でもかなり意見が割れてるのは事実ですね、日本でも二人目の凱旋門制覇ウマ娘として大きく評価している方もいれば冷静にスケジュールを選んでいればもっといい成績を積み重ねる事が出来たという人もいますね。お姉様は自分にとっても正直な人ですから思ってることを全部ブチまけちゃうオープンスタンスな方でした、私は寧ろそんな所も好きで素直に相談も出来て好きな人です」
デジタルの表情には一切の隠し事はなく、本心から語っているのがよく分かる。そして同時にフローラに向けられている様々な意見にも同意や疑問も浮かぶこともあった。
「でもお姉様はランページ様と御会い出来たからこそ凱旋門を制覇出来たと私は思ってます。だってお姉様、ランページ様の話をする時凄いキラキラしてましたから、あれは並大抵の愛じゃないですよ。あれ程に推しへと愛を捧げつつも本気でその推しを倒す為だけに努力を重ねるなんて出来る事じゃないです。だから私にとってお姉様は―――ヒーロー、みたいなものですかね……えへへっなんか言っててこそばゆいですね……」
「そっか……いやそれを聞けてなんか俺も嬉しくなってるな」
自分が思っている以上にあれをライバルとして尊敬しているのだと思った。不思議な物だ……。
「じゃ今度はお前が俺に何か聞く番でいいぞ、何でも聞いていいぞ。海外挑戦の裏話でもいいぞ」
「ほ、本当でしゅかぁ!?そ、そそそそそれでは―――ライアン様とのご関係は!?」
「いや家族だけど」
「すぅぅぅ……」
「どうした急に」