「はわぁぁぁ……」
デジタルの視線の先にあるのはノートパソコンを叩いて仕事をしているランページ、倒れたばかりなので休んでいろと座らされ、適当に茶菓子を振舞われたのだがランページの方は仕事の方がやってきてしまって対処中。
「あのね……それは普通に政府のお仕事でしょうがよ、アタシャ確かに金と権力と走りには自信あるけどこれでも一般人なのよ誰が何と言うともな。それが何で政府のあれやこれやに関わるのよ、アイルランドの王室とコネが出来たのは確かに俺の影響だろうけどさ、そんなんだから俺に政権渡せとか言われるのよお分かり?これ以上続けるなら本気で出馬して政権取ったろか。分かれば宜しい、まあそういうのは抜きにして仕事モードじゃねぇときに相手しろとかなら引き受けたるわ、そういうのでいいか?んじゃ交渉成立な、頑張れよ支持率一撃必殺以下」
最後にとんでもない嫌味を残して電話は切れた。相手は日本の現総理大臣、ランページが色々と各国との伝がある上に政府よりも余程外交をしているなどと言われ、かなり頑張らないとランページに政権譲ってしまえ、などという事を言われるので今の政権は大変苦労をしている。
「さてと、なんか悪いなまともな歓迎してやれなくて」
「い、いえいえいえいえいえ!!御一緒の空間で息が出来ていられるだけで感謝の極みですぅ!!」
「お前フローラとは別の意味で面倒臭い奴だな……」
ランページは多少デジタルについては分かっていたつもりだった、だがあくまで本当につもりだった程度だった事が分かった。思っていたそれよりもずっと強烈なのが理解出来た。フローラより少しマシ程度且つベクトルが違うだけでこれほどまでとは思いもしなかった。
「ンでまあ真面目な話だけどデジタル、お前はどっかチームとか入るつもりってあんのか?」
「チ、チームですか……う~ん今のところ全く、入学したばかりというのもありますけど私にとってはウマ娘ちゃんたちがいっぱいのこの空間にいる事で尊みを摂取しまくれるので……もうそれだけで来た甲斐がありましたぁ……」
「お、応……」
尊さを摂取しまくってデジタルは既に満足しきっているかのような表情だ、まあウマ娘という種族を箱推ししているようなもんだからトレセン学園に入れたらそりゃそうなるか、というのも納得が行かなくもないのだが……。
「んじゃデジタルよ、お前何しにトレセン学園に来たんだ?」
「―――へっ?」
その言葉に思わず素になって返事をしてしまったデジタル、その表情は純粋な困惑と疑問、そして思考の停止が伺えた。
「いやさ、ぶっちゃけた話をすっとさ……仮にこのトレセン学園に入学しなくてもお前さんのそれって満たせるよなって思ったんだよ、此処にはフローラとかフライトもいる訳だしそれ介して此処に来る事も出来るっちゃできるし……何しに来たんだお前さん」
「―――……っ!?」
ランページからすれば素朴な疑問、単純にそう思った程度の何でもない問いかけでしかなかった。言うなればデジタルのそれは自分がそうしたいから、という理由に過ぎない。憧れのアイドルの傍に居たい、推しと同じ空気を吸いたい、これらに尽きるだろう。だがそれでいいのかともランページは思ってしまった。そしてそれを突き付けられてデジタルは言葉を失っていた。
「アッ悪い、いや別にそれを否定してる訳じゃねえぞ?その理由を探してきてる奴だっていっぱい居るのは事実なんだから……お、お~い……デジタルさ~ん?」
「そうだ私がトレセンに来たのって……あっそうだ、そうじゃないわスレた、推しと同じ空間に入れる事が嬉しすぎて、遂にここに来れた事への興奮が強すぎて完全に忘れてた……!?私、私は―――フローラお姉様みたいに、推しへの愛を表現する為に、推し達が走るレースの素晴らしさを色んな人にもっともっと知ってもらいたいから、此処に来たんだ……」
デジタルがしたい事、それはもっとウマ娘の魅力を色んな人に知って貰う事。その原点は敬愛するお姉様事アグネスフローラの活躍を見たから、色んな人がフローラの事を好きだと言っていた、人によってはランページよりもずっと推せるという人もいた。だがそんな人達が掌を返す所を見た。無論それはフローラが自身の変態性を発露させたことが原因でそれによって見る目が変わってしまった、なんなら妹二人からはガチ軽蔑を向けられている……が
『あれもお姉様のいい所だと思いますよ?』
とデジタルは素直に思った。あれだけ他人に執着して、思いを寄せて、それを力に変えられる想いはどれだけの物なんだろう……それは親族である自分にも推し量れない、あれは素直にフローラの長所で絶対的な優位性だと思っている。そして同時に思った。
『もっともっとレースの事を知りたいし知ってほしいなぁ~……』
自分の理解度もそれほど高くないのに偉そうな事を思ったなぁとは思うが、心からの本音だった。レースを走る一人一人には様々なドラマと思いがある、それはこれまでを築いた先達も、これからを築こうと走るウマ娘もそうだ……だからそれにもっと目を向けて欲しい、知ってほしい、ならどうする?そんな走りをしつつも自分でその魅力を見つけて発信すればいいんだ!!と思い立った。
「サラッと言ってるがすげぇ事考えてたんだな……いや悪いすげぇ目的あったんだな」
「いえ私はそれを忘れていたんです、尊みでオーバーフローして思考停止の一ファンにしかなれてなかったんです!!そんな私を正してくれて有難う御座います!!それではお茶とお菓子御馳走様でした!!このご恩は何れ必ず!!では!!!」
「お、応……全く手つけてなかったやんけ」
やっぱりあれはフローラの親類だな、というのを強く実感したランページであった。