貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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RPG-7様より新しいAIイラストを頂きました!!


【挿絵表示】



608話

桜花賞を制し、桜の冠を戴冠した女帝。次代の女王は女帝となるか、エアグルーヴ、オークス制覇への意欲を見せる。視線を動かせば次々に飛び込んでくる記事の数々に若干うんざりとしている気分になっているのは桜花賞を制した張本人たるエアグルーヴ。自分にとっては通過点でしかない、本当の目標は尊敬する母が制した舞台たるオークスを制する事、そしてランページを超えられるようなウマ娘になる事だ。この程度の事で何時まで騒いでいるつもりなのか……そんな事を思いつつも適当に入った喫茶店で注文した珈琲を啜る。

 

「……偶には悪くないな」

 

そんな言葉が口から出るが、実は珈琲はランページがよく飲んでいるので興味があった。コスタリカの珈琲が好きだと言っていたので注文してみた―――と言っても珈琲の上には角が立つ程に硬めなクリームにハニーシロップが掛けられているアイスコーヒー、コーヒー初体験だったエアグルーヴにとってはこれが精いっぱいな背伸びだった。

 

「(しかし……随分と騒ぎようだ)」

 

桜花賞から早三日、エアグルーヴ的にはもう話題は皐月賞に移っても可笑しくないと踏んでいたのだが……随分と自分の話題が長続きしているように映る。そんなに自分が勝ったのが意外かと思うと腹が立ってくる。

 

「そうじゃねぇさ、俺のトレーナー能力にそれだけ疑問があっただけの話よ」

「ッ!?」

「やっほっ♪」

 

極めて自然に自分の前の席に着席したのはなんとランページだった、思わず大きな声が出そうになるのを抑え込みながらもエアグルーヴはサングラスの裏の瞳を限界まで大きくした。肝心のトレーナーは自分の反応を見て満足気に頷いている。

 

「ダッチコーヒーを」

「畏まりました」

「ど、如何して此処に……プレアデスの仕事は!?」

「これでもしてきた帰りでね、有象無象のマスゴミ相手のトークショーって所だな」

 

注文を済ませながらもランページは事情を話してくれた。彼女は彼女で確りと仕事をしてきた帰りで学園に戻ろうとしていたのだが、休養中の自分を見つけて悪戯っ気を出して顔を出してきたとの事。一応確りと変装をしてきたはずなのだが……何故分かったのか。

 

「愛しい愛を俺が見紛うと思うか」

「……そういう事を平然と言うからフローラ先輩にも迫られたのでは?」

「少なくともあいつに言った覚えはねぇよ、にしてもつまらなかったぜトークショー。乙名史記者位だぜ面白いの、お陰でまた出禁出版社が増えた」

 

トークショーとは名ばかりの取材要望、桜花賞後の取材でこれはURAが主催しているので出ない訳にはいかなかったが……中には自分から失言を引き出そうとする愚か者も居た訳で、逆に自分は煽り返して失言を引き出して御退場&出禁を申し渡してやった。

 

「まだランページさんの指導力を疑っている人が多いんですか……?」

「これまでがノリと勢いとテンションでやって来たようなもんだからな、それがちゃんとウマ娘の人生を確り背負って指導できるのかって疑問視する奴らがいるのも分からなくもない」

「ですが、ランページさんはマヤ先輩を菊花賞やジャパンカップで」

「それは坂原さんの手腕だっていうのがあいつらの言い分だ、まあ6割位は正論だけどな」

 

同時にこれは一部からの嫉妬のあれこれだという事も理解している、G1どころか重賞勝利が出来ないトレーナーなんて数多い。それなのに自分はどうだ、僻みの対象になっても可笑しくない。実際問題坂原とマヤの強い絆があったからこその勝利だという事は分かっている、だからこそ、今回の桜花賞の勝利は極めて有意義且つ大きな証明にもなった。

 

「ドヤ顔で言ってやったよ、これで俺のトレーナー不適格論はどうなるかってな。ぶっちゃけ上ちゃんを引き合いに出すかと思ったが、俺と同じ新人だからかそこまで言われなかったな、多少言われたけど」

「出る杭は打たれる、ですか」

「ハッ上等上等。打てるもんなら打ってみろ、こちとら世界に轟く独裁暴君たるメジロランページ様だぜ?怖いものなんてあんまりねぇよ」

「あっあるんですね」

「そりゃあるよ、冷蔵庫に入れ忘れた煮物とかな」

「ああっ……それは確かに」

 

気付けばエアグルーヴはランページと楽しい会話をしていた。本当に何時からこんな事が出来るようになったのかと分からなくなる程度には自然と出来るようになった、自分にとってこの人は憧れの人であり、敬愛するトレーナーであり、偉大な先達、自分がリスペクトする要素しか纏っていない筈なのに自分はまるで年上で先輩な友達程度にしか思わなくなっていた。

 

「プレアデスは良いんですか、早く戻らなくて」

「お生憎様、今年はクラシック三冠に挑む奴はウチにはいないので大丈夫。あったとしても天春ぐらいだからな気にするのは」

 

そう言うと漸くやって来たダッチコーヒーを口に運んだ。そうは言うが、ならば来年からは大変な事になると思う、何せ今年デビュー予定のウマ娘が5人もいる、その内の一人はティアラ路線を確定しているのでダブル路線を戦う事は目に見えている。その後も複数のデビューを抱えると思うとプレアデスは色んな意味で忙しい年を送る事になる。

 

「私が言うのもなんですが、ランページさんはもう少し自分を労わるべきなのでは……」

「ハッ俺が過労で倒れたら考えてやるよ、俺は面白いレースを見る為なら苦労する奴なのさ。そもそもURAファイナルズとレジェンドレースなんて七面倒臭いもんをたった数年で成立させたバカだぞその言葉が今更過ぎて笑うわ」

「……そうだったこの人はバイタリティと行動力が怪物級だった……」

「誉めて何も出さねぇぞ」

 

別に褒めてはいませんよ……と思いつつもこんな時間の流れも楽しくて嬉しいと感じるエアグルーヴなのであった。

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