本編のラスト辺りにありますのでどうぞ見て行ってください!!個人的にはこれとトレーナーしてる奴が好きです。
「「マーベラース!!」」
今日も元気にマーベラスという声を響かせながら元気に行くのは仲良しコンビのマヤとマーベラスサンデーのマヤベ組、楽しそうだなぁと思う一方でトレーナーとしては油断が出来ない相手でもあるんだよなぁ……と思わざるを得ない。
「やっぱ、此処だよなぁ……此処なんだよなぁ……マジでなぁ……」
「うるせぇぞ沖ノッチ、どんだけ悔しがってんだお前」
「そりゃ悔しがるわ!!お前に分かるかハナ差で差し切られたウマ娘のトレーナーの思いがぁ!!?」
「あ"っ?ダービーじゃ7mmでフジに負けた俺達を舐めてんのか、どうする坂原さんあれ、処す?」
「そうだね、君のタイキックでどうかな」
「マジすいませんでした勘弁してください」
土下座をする沖野、彼らがいるのは職員室。そんな所でも聞こえてくる二人の声には微笑ましさを覚える一方で沖野としては悔しさがにじみ出て来るのも致し方ない。だが接戦で負けた悔しさならば負けない自信がある。
「大阪杯でマベちんに負けたのが随分と利いてるな」
「まあなぁ……ブリザードの調子は絶好調で勝てるレースな筈だったんだけどなぁ……」
沖野が愚痴を零すのも致し方ない、大阪杯当日は雨上がりの稍重でのレース。まだ雨の影響もあって乾ききっていない芝は所々落とし穴のような泥濘が存在していた。それを避ける為にも皆が内を避けて外で走るレースが行われていたのだが……
『マーベラース!!!』
内を激走して差し切ったマーベラスサンデーがタイキブリザードを越えての1着ゴール。ブリザードは惜敗の2着となってしまった。沖野としてもまさか内をあんな速度で走れるとは思わなかったのか度肝を抜かれた。
「コーナーで最ウチの泥濘で一切失速せずに突っ込んでそのまま走りやすい芝に横っ飛び、ありゃ見事な作戦勝ちと言わざるを得ない」
「それについては正しく完敗だよ……まあブリザードにはいい刺激になってよ、知ってるかあいつ安田三連覇を成し遂げて見せる!!ってやる気になってんだぜ」
「イクノのあれに続く気か」
安田記念を制覇したブリザードは次も勿論狙っている、そして来年のそれも狙うつもりでいる。三連覇は極めて難しい、自分の能力のピークとの戦いでもあるがそれを阻止する相手との戦いも激化しているのだから。改めてイクノのそれがやばいという事がよく分かる。
「それを超えて最速最強を勝ち取った貴方がそれを思いますか」
「おっ南ちゃんの脳内スキャン久し振りだな」
「するまでもありませんよ、貴方の考えてることは顔を見ればわかりますから」
「さっすが~」
ゲッツと言いながら指を向けるランページと古くないですか?と言いつつもコーヒーを淹れようとする南坂、矢張りこの二人は色んな意味でベストマッチ過ぎるコンビなのだ。
「ンでカノープスはどうよ」
「タンホイザさんが決断をしまして、天皇賞で引退するそうです」
「あいつが遂にか」
「ええ、ネイチャさんも今年いっぱいでの引退も検討中です。此方はドリームトロフィーリーグへの移籍は一切考えずの引退を考えていると」
そう話されると少し寂しい気もするが、致し方ない。寧ろカノープスは色んな意味でチームメンバーの活躍が長い傾向にある、南坂謹製のメニューによる体調管理も万全で健康面にも配慮されている上に基礎が確りとしているので怪我をする可能性が低い。なので長く活躍したいならカノープスとも言われる事もある。
「時代が本当に変わるか……ンでローレルも天春に出んだろ?」
「勿論、ここでもブライアンさんが出るらしいので大激突です。というかハヤヒデさんも出ますから本当に怖いですよ」
「メルボルン勝ってるしなぁ……でも見てるのはそこじゃねぇんだろ?」
「はい、今年は取りに行きますよ凱旋門」
ブライアンも言っていた、リギルとカノープスの共同海外遠征、最終目的地は
「何時から行くんだ?宝塚辺りには出ないとマズいだろ、適応には時間かかるし」
「問題はそこですね、宝塚記念をどうするか……佐々田さんの免許皆伝試験にはちょうどいいんですけどね」
「おっ期待されてるな佐々田ちゃん」
「期待が重い……」
問題はローレルを宝塚記念に出すかどうか、個人的には出しても良いような気もするが海外環境の適応には当人の資質や環境にも左右されるので早めに渡るのが定石。
「まあそん時はカノープスの面倒は見てやっから安心しな、最悪スーちゃんの手でも借りるわ」
「それは有難いですが、あの方をお呼びしてもいいんですか?」
「良いんだよ、今度一緒に温泉行こうとか言えば大丈夫だしっとフローラ座ってろテメェは御呼びじゃねぇし誰がテメェを誘うか死ね」
「まだ何も言ってない所か行動もしてないのに!?」
「テメェの考えてる事なんざぁお見通しじゃボケカス」
そんなやり取りをしているランページを見ているのは彼女の婚約者事上水流だった、仕事を片付けながらも彼は何処か複雑そうで不満とまでは言わないが何か言いたげな顔をしているので坂原がコーヒーを差し出しながら相談に乗る事にした。
「如何したんだい、ランページさんに何か不満かい?」
「不満って言うか……俺が本当に彼女の隣でいいのかなって思っちまって……」
それを聞いて分かった、南坂との以心伝心っぷりに自分じゃなくて彼の方が適任なのではないかという気持ちが湧いてしまった。実務能力や交渉、育成の手腕は誰もが認める超一流っぷり、加えてあの暴君を唯一完全に制御する術を心得ているのが大きい。ランページも南坂の言葉ならば多少の寸劇を交えるが確実に従う。なのでランページへ何か相談を持ち掛ける時は南坂に一言尋ねてみるのが定石と化しているのが笑えない。
「以前にも聞いたけど、南坂さんは仕事としての相棒ならいいけど人生としての相棒はちょっと遠慮したいって言ってたからね。仕事なら割り切れるけどそっちは遠慮したいって彼女も言ってたし……そもそも君は彼女が直々に結婚を申し込んだんだからもう少し自信を持っていいと思うよ」
「……でも俺には実績がない」
「それを言ったら僕も同じさ、マヤと出会うまではうだつの上がらない中堅一歩手前トレーナーが坂原というトレーナーの全てだったさ」
だがそれがマヤノトップガンとの出会いで一変した、その矢先に事故での入院を余儀なくされた。しかしそこにランページという神風が自分に奇跡をくれた、再び彼女と歩めるという奇跡を。
「僕の手腕?それだって彼女に会わなければ発揮出来ずに埋もれていた」
「坂原さん……」
「君だってプレアデスの一人として尽力した、桜花賞だって君の一助があったからだろう?このチームの誕生だってカノープスのサブトレーナー時代のダービー制覇のお陰である。つまりそういう事さ」
「……じゃあ、俺もっと頑張ります。隣に立っても何も言われないぐらいに」
そうした方がいい、腐るよりもずっと建設的だ。と思っていたら
「そんなくだらない事考えたのか上ちゃん」
「うわあっ!?」
気付けばそこには珍しく頬を膨らませたランページがいた。引っ繰り返りそうになるのを引っ張られて抱きしめられると吐息が混ざるような超至近距離に招かれた。
「いいかお前は俺が決めた伴侶だ。お前に代わりなんざぁいねぇのよ、功績がない?能力がない?それがどうした、心から好き合った他人同士がして家族になる事だ。そこに妙な事はいらない、そいつといて幸せになれてその絶頂の時にするのが結婚だ。それでいいんだよ、余計な事を考えるな」
「で、でも……」
「何かあったら俺が捻じ伏せればいいだけの話だ、悩むのはそうだな……俺が着るのはドレスか白無垢かどっちがいいかで良い」
それを言われて素直に想像してしまった上水流、どっちもきっと似合うがどっちが良いのだろうか……どっちもきっと美しい光景なのは間違いない、それを目の当たりにするのは片方だけ……と思うと本気で悩ましくなってきてしまった。
「あ~あ、真剣に悩み始めちゃったよ」
「言うて坂原さんだってこのままだとマヤがきっと逃がしてくれねぇぜ?」
「あははっ……」