貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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614話

「……ヴォェッ……」

「だ、大丈夫ですかランページさん!?」

 

2400の模擬レースをエアグルーヴと行ったのだが……矢張りというべきかここでも現役さながらの走りを見せつけたランページ、エアグルーヴに6バ身差を付けて勝つのだが……思わず口を手で抑えて吐き気を催してしまい、エアグルーヴも慌てて駆け寄ってしまった。

 

「大丈夫大丈夫……昨日飲み過ぎたか……流石にバーボンを3本開けたのはバカだったか」

「何やってんですか貴方は!?」

「いやぁだって……ワイルドターキーの12年物をウ~ちゃんとスーちゃんが持ってきて酒盛りしようっていうからつい……」

「……本来なら一言言いたいのですが、そのお相手では何も言えなくなってしまう……」

「まあ俺が誘ったんだけどさ」

「正座しなさいそこに!!今すぐ!!!」

「きゃ~ベロちゃんが怒った~☆」

「こら待ちなさ、ゲホゲホッ……」

 

エアグルーヴがランページを捕まえようとするのだが、仮にも2400を走ったばかり故に直ぐには足が動かない。なんであの人は自分と同条件、しかもシンザン鉄装備であんなにぴんぴんしているのだ……

 

「エ、エアグルーヴ先輩大丈夫ですか!!?」

「だ、大丈夫だ……なんであの人は本当に平気そうな顔をしているんだ……」

「だって……ランページお姉さまですし……」

「ランページさんだもんね」

「ランページさんだもん」

「ドーベルにスズカ、そしてマヤさんそれだけで私を論破しないでください……されている私も私だし納得しているのが悔しい……」

 

伊達に現役時代から鬼の南坂に扱かれていないという訳である、と言っても今のかなりレアな光景だと坂原は思った。あのワクで飲み会でもいくら飲んでもケロッとしているランページが酒でやや体調が悪いなんて……それでもバーボンを三本あけて二日酔いになっていない辺りは流石……

 

「いや流石に一人三本って訳じゃないか……」

 

 

「……ヴォエ……」

「ちょっと大丈夫かいランページ」

「いやマジすまん、今になってアルコールの影響か……」

 

ベンチに腰掛けながらも水を飲むランページ、これまでこんな事はなかったのだが……流石にバーボンという大物を連続飲みはきつかったらしい……これからは日本酒にしようと心に誓いながらも何度も呼吸をして吐き気を忘れようとする。

 

「必勝祈願を兼ねて二人を誘ったんだけどなぁ……今度の天春は結構な勝負だからな」

「遂にだからねぇ……」

 

今度の天皇賞春を目途に、サクラローレルとナリタブライアンは本格的に凱旋門賞挑戦に向けて海外遠征を開始する。二人にとっては遠征前の最後の勝負、マヤとして二人と戦う大きなチャンスとなる。凱旋門が終わればそのまま日本に直帰する予定なので年末のG1では戦えるが……ランページとしては少々遅いと思う位のスケジュールだと感じてしまう。

 

「俺ちゃんは春始まった時には既にドバイ行ってたのよ、それに比べたらなぁ……って思わずにはいられないのよね」

「いやぁ君程じゃないよ……でも結局滞在先の斡旋はしたんでしょ?」

「アイルランド送りです」

「……ローレルちゃんはともかくブライアンはビックリするんじゃない……?」

 

今回もファインの所にお世話になるように手配をしておいた、ローレルはどうせそうなるだろうなぁと思ってたらしく苦笑された。ブライアンはランページの紹介なら心配いらないな……と安心しているらしいが……現地でビックリするのが目に浮かぶようだ。

 

「だけどトレーナーはどうするんだい?」

「フローラにぶん投げるっておハナさんと南ちゃんが決めたってさ」

「ええっ……仮にもサブトレーナーに任せて良いの?」

「忘れてるかもしれないけどさ、あいつ凱旋門賞ウマ娘よ」

「……御免完全に忘れてた」

 

そう、今回のトレーナー枠はフローラという事になっている。流石に連続でスーちゃんにお願いする事は出来なかったし、他に信頼出来る上に海外経験があるトレーナーともなるとそれこそ東条か南坂が出張るしかないのだが……二人も二人で忙しいのでどうするかとなった時にフローラがいるじゃん、という事になったのである。

 

「あいつはあいつで何とかできるだけの実力も実際に体験してるんだから割と適任だと思うぜ?俺が行けたら一番かもしれないが、流石にプレアデスほっぽり出す訳にはいかんしな……」

「そこは素直に有り難いよ、俺と坂原さんだけでこのメンバー纏め上げるのはぶっちゃけ無理だ」

「主にステゴな」

「最近大人しいけどね」

 

ステゴはかなり大人しくなったというか、かなりのんびり気質に変わった。レースにこそなればそのパワーを全て発揮する傾向へとなって行ったので別にパワーが落ちたという訳でもない。

 

「Hey タイキ!!スプリントで勝負よ!!」

「YES!!負けマセ~ん!!エル~スタートお願いデース!!」

「OH~任せるデース!!!」

「姦しいアメリカトリオだなぁ……」

 

新しくプレアデスに加入したパールことシーキングザパール、その圧倒的な存在感と陽気且つ器の大きい性格故に一番の新人なのにチームの中心になる事もしばしば……マヤの補佐的な役目をして一番の先輩を立てたりとなんだかんだで処世術にも長けたりもしている。

 

「なんだかんだでプレアデスの未来が楽しみ―――……ごめん上ちゃん俺ちょっとお手洗い……」

「マジで大丈夫かいどんだけ飲んだの、マジで一人で三本飲んだの?」

「うん、飲んだ」

「バカでしょ最早!!?」

 

そんな声を受けながらもランページはお手洗いに入って、乙女の尊厳を色々と守ったのであった。

 

「……やべぇ俺こんなに酒弱かったっけ……」

 

色々とリバースしてスッキリしつつも、自分のあれこれに不安を覚えつつも一応薬を飲んでから皆の元へと戻るのであった。そんなランページは僅かながらに光を浴びている事に気づかなかった。

 

 

『やれやれ……手のかかる子羊君だ、自分の事もちゃんと知るのも大切なのに……しかし本当に気付いていないのかな……?』

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