貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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617話

「やぁ子羊君」

「ダー様アンタ本当に頻繁に来るな」

「暇だからな」

 

いやアンタ三大始祖で一番繁栄してるのお前だろ、というツッコミをグッと喉奥に押し留めながらも茶を出しておく。お婆様たちは今日は一応泊まると言ってくれたが、ちゃんと大人しくしていると約束したので帰って貰った。それを見計らったように下りて来る三女神の一柱は何なんだろう。

 

「さて、まさか本当に妊娠に気づいていなかったとはね……」

「何、そっち気付いてたんすか?」

「当たり前だよ俺を誰だと思ってるんだい?」

「スタイルのグンバツのいい女」

「もっと言ってくれ」

 

まあなんだかんだで三女神の中で一番親しみを持っているのはダーレーアラビアンだとは思っている。他の二人を悪く言うつもりもないが、悪友的な距離感が個人的には有難く思える。

 

「というかもうその身体になって随分経つんだから気付く物だと思ってたんだけどねぇ……」

「そこはほら、俺ってば鈍感だから」

「というよりもガサツだな」

「言えてる」

「それで如何だい、双子を妊娠した気分は」

「……何とも言えんねぇ」

 

ダーレーが連れて来た子供達、その一番上とその下の子供が自分のお腹の中に居るというのは何とも言えない気分だ。子供なのだから自分から生まれて来る事には別段違和感はないのだが……成長した姿を先に知ってしまっていると何とも言えない気分になる。

 

「つうか双子ってきついって聞くのに全然そんな感じしねぇな」

「そりゃ俺達の加護があるからね。加護によって転んだとしても子供に被害はないさ、何ならこれからも並走したとしても身体に影響はないさ」

「へ~母親全員そうしてやればいいのに」

「そんなキャパがある訳ないだろう?まあ子羊君が此方側に来たらキャパは増えるだろうけどね、確実に此方側になるだろうから楽しみにしておきたまえ、死んでからのお楽しみが増えたな」

「縁起でもねぇ……いや、天国確定チケ貰えたと思えば喜んだ方が良いの?」

「君次第♡」

 

魅惑的なウィンクをしながらも微笑む姿に肩を竦めておく。

 

「んじゃ加護あるのになんであんな気分悪くなったん?」

「単純な加護のキャパを超えたからだよ、流石にバーボンを三本も飲んだら身体に悪影響が出かねないから加護がそっちのフォローに全開になったんだよ。それで並走の負担が来て、ウェッ……という訳だ」

「改めて聞くとほんとバカみたいな理由だなぁ……」

「ホントだよ」

 

取り敢えずこれで酒さえ飲まなければ普段通りに生活を送れるという事が分かった。流石三女神の加護だ。だが、そう思うとほんと酒は毒だな……と思い直して、ウチのある酒は大切に保管しておくか、学園の先輩やらに渡すなどしておこうと決めるのであった。

 

「子羊君、君は君らしく生きればいい。下手に良い母親ぶろうとかは考えなくていいさ」

「……まだ何も言ってねぇっすよ」

「その位分かるさ、自分に母になる資格はあるか分からない、だから良い母親にはなろうと思ってる事位はね」

 

酷い話だが、今の自分には既に亡くなっている母親との記憶は余り残っていない。時折、何かを切っ掛けにして思い出す程度でかなりボンヤリとした輪郭で母親を見ている。だけどそんな母の事をランページが大好きだったのは分かる。だからそんな母になろうかとは思っていた。

 

「君らしくが一番さ。悪い事をしたら叱って、良い事をしたら確りと褒めてやる、これが出来ればちゃんとした親さ。変に飾る必要も力を入れ過ぎる必要もないのさ」

「……なんかダー様からそういう言葉が出るとは思いませんでした、ターク様の領分では?」

「アハハハッ君は俺を如何にもチャランポランにしたいらしいな」

「したいというか、既にチャランポランなのでは?」

「否定出来ないのが情けないなぁ」

 

まあ兎も角変に緊張する必要はないという事だろうか、まあ子育てなんて予測通りに行く訳もないのだから高度な柔軟性を保ちつつ臨機応変に対応するしかないだろう。事実な筈なのにこういう考え方をすると凄まじく不安になるのはなぜだろうか。

 

「しかし君にはもっと懸念すべき事があるだろう?」

「子供服の調達?」

「いやそれもあるだろうけど……君が妊娠したんだぞ?それに一番反応を示すであろう子がいるだろう、最近は落ち着いてきているが……この事実が大爆発を引き起こす事もあり得るだろう」

「……忘れてたぁ……」

 

そう、独裁暴君狂いの大華。結婚すると決めた時には結構すんなりと祝福してくれたので忘れていた……子供が出来たと分かったらアレが発狂して暴れ出したとしても不思議ではない。下手したらその場で襲い掛かって来る事もあるだろう……おハナさんも呼んだ状態で話をした方が良いか……最悪は沖野も巻き込んで盾として使おう。ウマ娘に蹴られてもピンピンしてるんだから多分盾としては申し分ないだろうし。

 

「ま、まあうん……あれだって好きな男が見つかったらしいし大丈夫でしょう……多分きっと恐らくメイビー……」

「つまるところ全然安心してないな子羊君」

「あいつに信頼出来る要素なんてありません、信用だけです」

「最大のライバルとか言ってた相手に言うセリフかね」

 

兎も角明日は理事長に話を通して、場合によってはトレーナー全員と共有したりと色々と大変だ。天皇賞も近いというのに……全く面倒な事だ。

 

「そう言いつつも楽しそうだぞ子羊君」

「忙しいのは嫌いじゃないんでね」

「なんだかんだで社畜根性あるよな君」

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