貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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62話

「もう一回!!ターボともう一回勝負!!」

「ズルいですよアタシも走りたい!!」

「ラ、ライスも……!!」

「おっと流石に此処ばっかりはネイチャさんも引けないなぁ」

「私もです」

「私も!!」

「フフフッ大丈夫ですよ、皆のお相手をさせて貰いますから」

 

そう言いながらも余裕を見せ付けるラモーヌ、先程走ったとは思えぬほどに息は乱れていない。ランページとのマッチレース後、カノープスの面々がラモーヌに挑戦した。が、見事に全員をブッちぎっての1着をもぎ取った。

 

「ランページさんは如何します?」

「俺は休憩してる……流石にキチィ……」

 

流石に疲労困憊と言いたげな様子のランページに南坂はこのまま休憩させるので、他のメンバーの相手をお願いする。ラモーヌは快くそれを引き受けて再度のレース開始を宣言するのであった。そんな様子を見ながらもランページはこれが三冠ウマ娘の実力なのかと、思い知らされた。

 

「参ったぜ……数回走って分かってた筈なのにぶち抜かれた……俺の出せるもん全部出したのにこれかよ」

「流石は初のトリプルティアラウマ娘ですね」

「全くだ……メジロの至宝と言われるのも納得の強さだよ」

 

マッチレースでも走っているランページ、ラモーヌの凄さは聞いているが実際どの程度の物なのかは把握していなかった。それでもドリームトロフィーに出ているという事で油断せずに全力で挑んだ。大逃げ、幻惑逃げを展開、自分の持てる限りの技術と走りを駆使したのに……最初は2バ身、その次は4馬身、最後のカノープス全体レースでは5バ身差で敗北した。

 

「幻惑逃げが通用してたけど負ける……これが経験の差か」

「それと技術の差でもありますね、それをされてもカバーしたり巻き返す手段を持っている」

「身に染みたよ」

 

これが自分が目指している三冠の称号を得たウマ娘なのか、そう思うと矢張りルドルフとシービーもとんでもないんだなと思う。あの二人を侮った事などはないが……

 

「つうかよ、ちゃん先輩って先行か差しだろ?それなのにあれで一番抜かれたとか流石にショックだぞ俺……」

 

カノープスで走った時ラモーヌは皆の走りを見る為に後方策、言うなれば追い込みを取っていた。本来の脚質とは違うフィールドである筈なのにあそこまで走るというのは凄まじいという言葉しか見当たらない……。

 

「凹みました?」

「俺がその程度でやられる豆腐メンタルだと思ってんの?舐めんなよこちとら一回あの世まで行ってんだ」

 

南坂の挑戦的な瞳にそう返す。確かに全力を出しても全てを跳ね返された、それどころか本領発揮どころか得意分野ではない領域で一番の敗北を喫してしまった、完全敗北も良い所だ……だがそれだけだ。まだ負けただけだ、取り返す事が出来ない致命的な敗北ではなく自分を成長させる余りにも有意義な敗北だった。

 

「ったく南ちゃんもひでぇ事を考えやがるもんだぜ、俺が調子に乗らない為に目指してるトリプルティアラに叩きのめさせるんだからな」

「申し訳ないとは思いましたが、この程度でランページが潰れる姿が思い付きませんでしたから」

「悪かったな。がさつでズボラなウマ娘で」

「そこまで言ってません」

「ある程度は言ってるって事じゃねえか」

 

だがまあ、それはそれで南坂が自分を心から信じてくれている事の裏返しでもある訳だ。それはそれで嬉しい事この上ない。ならば自分はそれに応える為に唯只管に強くなるしかない。メジロの至宝さえも打ち砕く様な強さを手に入れる為に。

 

「なんだ、打ちのめされていると思ったが存外に気丈だな」

 

不意に勇ましい声が聞こえて来た、振り返るとそこにはサングラスを掛けていたウマ娘、直ぐにサングラスを取ったのだが……そこに居たのはモンスニーだった。

 

「モ、モンスニーさん!?」

「元気そうだなランページ。済まない南坂トレーナー遅くなった」

「いえいえ、ラモーヌさんがお相手をしてくれてますのであまり待っていませんよ」

 

仲良さげに話しているが、まさかモンスニーも呼んだのだろうか……と思っているのを見透かされたのか本人が事情を話してくれた。

 

「いや、本来は私ではない者が来る筈だったんだが予定が合わなくてな。私がその代理という訳だ」

「モンスニーさんが代理って……一体誰が来ようとしたんすか」

「―――本当に聞きたいか?」

「遠慮しときます」

 

意地悪そうな笑みを浮かべられたので思わず否定してしまった。多分聞かない方が吉だ。そして同時に納得した、如何して南坂がこれからのメニューはずっとキツいと言ったのか。

 

「モンスニーさんが来るからキツいって言ったのか……」

「ラモーヌは経験も技術もあるが性格的に穏やかさが災いして指導者としては甘さがあって向いていない。だから私が来た」

「いやちゃん先輩にコテンパンに負けてて甘さなんて感じませんでしたけど」

「なら良かったな、甘い後に辛いのでは余計に辛さを感じる事だろうからな」

 

目指すべき三冠を取ったメジロラモーヌ、そして三冠ウマ娘のライバルとして鎬を削ったメジロモンスニー。その二人が見てくれるというのは非常に喜ばしい、喜ばしい事なのだろうが全然喜べない。

 

「さあそろそろ休憩は良いだろう、走って来い」

「あ~あ俺は幸せ者だねぇ……そしてそんな俺と戦う相手は不幸だなぁ……こうなったら徹底的に鍛えて貰おうじゃねえか!!ターフの独裁者が更なる進化を遂げるぞぉ!!」

「その意気だ、さあグズグズするな駆け足!!」

 

まるで軍人のような強い言葉を飛ばしながらもモンスニーの指導が開始されることになった。特訓の相手がラモーヌ、指導をモンスニーという色んな意味で豪華なメジロ仕様となったカノープス。ランページ以外のメンバーもその一端を味わう事にはなるが、これは後々生きて来るのだろう……。

 

「あっモンスニーじゃん!!やっほ~!!!」

「シービー、相変わらず騒がしい奴だな……息災か?」

「そんなの聞くまでも無いって奴でしょ」

「だろうな、お前に元気がないなど考えられん」

 

カノープスが練習しているコースへと脚を運んできたのはリギルとスピカだった。隣のコース場へと行く途中だったのだろうが、シービーがモンスニーを見つけてしまったのでこちらへと来てしまったらしい。

 

「モンスニー先輩……お久しぶりです」

「ルドルフ……なんだその顔は、随分としおらしくなったな」

 

シービーを追って来たルドルフは目の前にいるモンスニーに思わず何処か緊張したような面持ちになってしまった。彼女からすれば尊敬する先輩なのだから無理もないだろうが……モンスニーはルドルフの肩を叩きながらも笑いかける。

 

「この前のサマードリームトロフィーは見事だったな」

「あ、有難う御座います。見てくださったんですね」

「まあ、我が家の至宝が出るから見ない訳には行かないからな」

「あっそうだねえねえモンスニー聞いてよ、ルドルフってばアタシがモンスニーに会いに行っている事が気に喰わないからってレース申し込んできたんだよ。その時に負けた時のリベンジだって凄い張り切ってたんだよ」

「シ、シービー!!」

 

出来れば知られたくはなかった事を然も当然のようにチクるシービーに声を荒げてしまった、それを聞いたモンスニーは呆れたような表情で思わずため息をついてしまった。

 

「成長したと思ったが、前言撤回だ私が現役の時と全然変わっていないなルナライオン。慕ってくれるのは嬉しいが、実力的にはお前の方が完全に上だろう」

「そんな事は関係ありません、モンスニー先輩は私が尊敬する事に変わりはありません……それとライオンは勘弁してください」

「L・I・O・N、ライオーン!!」

「シービー!!!」

「わ~い怒った!!!」

「待てこら!!」

 

ルドルフを煽ってからかうシービーはそのままコース場へと逃げて行き、ルドルフはそれを追いかけて行く。そんな光景に本当に何も変わっていないのだな……と表向きは呆れつつもどこか懐かしそうに、嬉しそうにしているモンスニーがそこに居たのであった。

 

 

「おいおい……よりにもよってラモーヌとモンスニー呼ぶって……南坂、お前ガチすぎるだろ」

「私に言わせたら、ルドルフさんとシービーさんの三冠ウマ娘二段構えの方が余程ガチに思えるんですけどね」

「……御尤もすぎて何も言えなくなるわね」




ラモーヌさんだけだと余り辛そうに見えない?宜しい、ならばモンスニーだ。
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