「に、妊娠って……!?ラン、アンタ早過ぎじゃない!?」
「言うても、俺お前らと違って普通に社会人やしなぁ……何時までも学生気分でいる訳にはいかねぇし」
「いや学生辞める=妊娠ではねぇから!?ンな事になってたら少子高齢化なんて言葉自体が生まれてこないんだわ!!」
「流石ネチャネチャ、エッジの利いたいいツッコミだ」
「ネ・イ・チャ!!!」
お次に訪れたのは古巣であるカノープス、そこでは自分とかお馴染みメンバーが勢揃いしていた。ツヨシやチケット、ヒシアマなどは外へのランニングに出ているらしく、残念ながらいない。本当の意味での昔馴染み連中ばかりが揃っている。佐々田ちゃんはその付き添いで原付で付いて行った、何故かヘルメットを逆にかぶってたけど。
「ランがお母さんになるとか、全然想像できないんだけど……」
「おうターボ、どういう意味だゴラ」
「いやだって、ターボの中だとランはいつまでもランだし……ターボにとっては走ってる時のランのイメージが余りにも印象的過ぎるんだもん」
「それは確かに言えてますね、私などもその印象が強いです」
「それは褒められてんのか貶められてんのかどっちか反応に困るんだが」
「ラ、ライスはビックリ……で、でもお姉様の子供……う~ん……」
「ライスにまでそう反応されるのかよ俺は」
「これが世に言う自業自得ですね」
「南ちゃんそれ使い方あってる?」
しかしまあこういうボケとツッコミの乱立も久しぶりな気分になる、こう思うとカノープスは本当に居心地が良かったんだなぁと我ながらに思う。
「しかし上水流さんとそこまで進んでいたんですか?」
「進んでたっつうか、酒の勢いっつうか」
「あちゃ~……ラン、それウチの実家にくるお客さんみたいな事になっちゃってんじゃん……ダメだよお酒を飲むなら飲まれるなってよく言うじゃない」
「いや俺は全然素面だったんだけどさ、上ちゃんがいい感じに甘えて来るんでつい味見したくなってそのままズルズルと」
「何やらバーボンを三本飲んで体調崩してたとも聞きましたが」
「バーボン!?バーボンって言った!?」
実家がスナックをやっているだけあってお酒には詳しいネイチャ、ランページがやったバーボンを三本あけたなんて話を切って思わずギョッとしてしまった。
「ランアンタバカなの!!?仮にも妊娠してる状態でそんな度数の強い酒をバカ飲みしたらそりゃ体調崩すに決まってんじゃん!!?」
「いやその時はまだ妊娠してるとか気付かなかったんだよ、それで悪阻と重なって体調崩しちまってさ……いやぁ不覚だったわ。悪阻と奇跡的に重なったとはいえ俺がマスターリバースするとか」
「ダメだこいつ……マジでなんとかしないと……」
ケラケラと笑い続けるランページにネイチャは本気で頭を抱えた。そう言えば休みに実家のスナックだと知らずに入って来て、そこで超高級酒ばっか飲んで凄い売り上げに貢献してきたって母が言ってた気がする……後その場で即席ライブをやってくれた影響もあったからか過去最高売り上げを更新したとも……。
「兎に角ラン、アンタは禁酒!!アンタの家にある酒瓶出せ、ウチで預かるから!!」
「え~」
「問答無用だっつの!!アンタ家にあったら絶対飲むでしょ!?」
「というかもうお婆様に取り上げられてんだよこちとら、仕事後の晩酌をどいつもこいつも取り上げやがって……」
「お姉様、メッ」
「はい禁酒します」
「なんでアタシじゃ聞かないのにライスの一言でやめるんじゃ己はぁ!!!?」
「何言ってんだ、俺はライスのお姉様だぞ」
「イクノ、こいつ一発殴っても私許されるよね、許されるよね!!?」
「気持ちは凄く分かりますが抑えてください、一応妊婦なんですから」
「一応じゃねぇよ双子身籠ってるわ」
「尚の事飲むなぁ!!!」
ゼェゼェと荒い息をしながらもネイチャは自分の分のお茶を一気飲みして喉を潤す。何故長距離走った時並に疲れなければいけないんだ……。
「ま、まあ兎に角お姉様おめでとう、でいいんだよね……?」
「おう是非とも祝ってくれ、生まれたらお前らにも見せに来るからな」
「いや連絡さえ頂けるのならば此方から出向きますが?」
「こういうのは自分から出向くから意味があんだろ」
「にしてもランの子供かぁ……凄いウマ娘になりそうだね!!」
ターボの言葉に思わず全員が頷き、それにランページは鋭い……と思わずにはいられなかった。曰く、三冠を達成したらしいし……能力的には保証されているも等しい。
「まあどんなウマ娘になってくれても俺は構わないさ、なんだったらトレセン学園に通わなくてもいいし」
「えっいいの?」
「そもそも子どもの人生を親が決める事は無いだろ?親は選択肢を与えて、その道を歩むかどうか、どうすればいいのかって相談を受けた時に自分の経験を基本にして相談に乗ってやればいい……まあそもそもな話、俺の子供なんて注目浴びちまうだろうけどな……そこは確りと守るつもりだ」
「なんていうかさ、ランってかなりしっかり考えてるよね。普段あれな癖に」
「そりゃ自分の事だから適当にやってるだけだ、子供ならもっとしっかり考えるさ」
これもきっと、叔父夫婦を反面教師にしてるんだろうなぁと思う南坂、その一方でちゃんとした親になれそうで少しばかり安心した。
「つうかよ、天春でタンホイザ引退するんだろ?勝てそうか?」
「う~んまあまあかなぁ……私は私で頑張るだけだし、えいえいむんって胸を張るだけかなぁって思ってますね」
「お前らしいと言えばらしいな……にしても、カノープス第一期黄金期もいよいよ終わりが近づいて来たって感じだな」
「そうですね……そう思うと改めて、カノープスは妙なチームでしたね」
「お前が言うか南ちゃん、ある種お前さんが一番妙なトレーナーだぞ」
「恐れ入ります」