貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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623話

天皇賞春もあとわずかという所まで迫って来た今日のこの頃。マヤの調整は重畳、テイオーとマックイーンとの並走が中々にいい結果に結びついてくれたのか調子が上向きになっている。後はそれが空回りしないように調整してやる事位だが……

 

「ううんまだやるの、相手はブライアンちゃんにローレルさんだもん。ライスちゃんにタンホイザちゃんだってハヤヒデちゃんだっている、全然油断出来ない……だからお願いっ!!」

「はぁぁぁぁ~……わぁったよ、少しだけだぞ」

「わ~い有難うランページさん!!大好き~!!」

「はいはい俺も愛してるぞ~」

 

マヤからのラブコールを軽く受け流しておきながらも、チームのスケジュールを確認する。マヤの天春も大切ではあるが、いよいよ近くなってきたものがある。それはドーベル世代のメイクデビューである。本格的に自分のトレーナーとしてのあれこれが見定められる世代へと突入する事になる。

 

「スズカ、この後に走るから準備しとけ!!サニー、お前も幻惑逃げの確認だ!!タイキにパールも準備しとけよ!!特にタイキ、お前はダートにも出るんだったらちゃんとやれ!!」

 

一度に6人のメイクデビューをこなさなければならずにプレアデスは更に忙しくなってきている、それでもトレーナーは定時退社しているのだからとんでもないと言われるのがプレアデスである。

 

「スペ、お前らも来年にはこういう事になるんだ、今のうちにちゃんと見とけよ。メイクデビューとかは配慮してやるのはメイクデビューとトライアルレース位だ、容赦なく同じレースに突っ込むからな。特にスズカとサニー、後ステゴお前らは覚悟しとけよ!!」

「はい、望む所です」

「二人相手だと幻惑とか効きそうにないのがまた嫌だなぁ……」

「うぃ~っす」

 

ちゃんと返事を返してくれているのがスズカだけなのでいまいち心配にもなってしまうが多分大丈夫だろう。なんだかんだでちゃんと指示には聞いてくれる、ドーベルはそんな様子を見ながらも、自分はティアラ路線志望でよかった……と心から安堵していると肩を叩かれる。

 

「あら、余裕そうじゃない」

「ラ、ラモーヌお姉様……!?」

 

安堵したのも束の間、やってきたラモーヌの姿に顔を真っ青にしつつも震え上がるドーベル。そんな妹を他所にラモーヌはランページと軽く抱き合う。

 

「来て上げたわよ、また、ドーベルの相手でもしてあげればいいのかしら?」

「そんな所。エアエアの相手もお願いできるかい?」

「ええ、任せておいて」

 

ラモーヌを呼んだのは他でもないエアグルーヴとドーベルの相手をお願いする為、メイクデビューで最も重要なのが緊張しすぎて本領を発揮出来ないという物だ。だったらより酷い緊張を味わっておけば今と昔を比較して、今はあの時よりましだな……という楽観的な考えをする余地が生まれてそこから意識を切り替える事も出来る。

 

「ラモーヌさん、以前の私と思ったら大間違いです。伊達や酔狂で桜花賞ウマ娘になったという訳ではない事をお見せしましょう」

「フフフッ良いわね、その覇気と勢い……ただそれだけでは私達の領域に到達するのは至難よ。貴方は色んな意味でもっともっと上に行かないと駄目よ」

「無論です、貴方からもランページさんからも全てを吸収させて貰います」

「いいわね」

 

以前よりも更にいい顔をするようになったエアグルーヴ、次はオークス。狙うは母と共に確立する親子オークス制覇、ランページの事も心から尊敬しているが矢張り彼女にとってのオリジンは母である為にオークスは絶対に制覇したいと願っている。そんな熱に当てられてラモーヌは微笑んでいるのだが……その隣でドーベルは相変わらず顔を青くしている。

 

「貴方ももう少しは元気を出しなさい、メイクデビューでもそんな顔で走るつもりかしら?」

「ちっ違います!!メジロ家に相応しい顔で―――」

「ダメね」

 

メジロ家を引き合いに出すドーベルにラモーヌは即座に失格の烙印を押した。

 

「メジロの為?そんな事の為に走るつもりなのかしら、それでは何れ貴方はただのメジロドーベルに成り下がるわ。逆よ、寧ろメジロ家を自分の為に使いなさい」

「じ、自分の為にって……」

「そのうち、分かる時が来るわ。先に行って準備をなさい」

「あっはい……」

「失礼します」

 

丁寧に頭を下げるエアグルーヴとは対照的に何処か困っているかのようなドーベル、そんな背中を見送りながらもランページはラモーヌに問う。

 

「それを言うにはちょっと早いんじゃね?俺もジュペナイルフィリーズの時に言おうと思ってたんだけど……」

「それでもいいけど、早い内に頭の中に入れておいた方がいいのよ。何れ分かる日が来るわよ、それに貴方は貴方で最初からそうしてたじゃない」

「いや俺と一緒にするのはそれはそれで酷じゃね……?」

 

ラモーヌのそれがドーベルの事だというのは分かるが、幾らなんでも時期尚早なのも否めない。しかしラモーヌはこの位追い込まないとドーベルは自分の強さに目を向けようとしないと思っている。

 

「あの子は未だに貴方に自分を重ねている、貴方の為に走ろうとしている。貴方に恥をかかせまいと努力する、理由としては悪くない、だけどそれを一番上に据えている時点であの子はあの子ではなくなる、分かって?」

「……妹思いだねぇちゃん様は」

「貴方も私の愛する妹よ」

 

そう言いながらランページの額にキスを落としながらも遅れてやって来た自らのトレーナーの元へと向かって笑いかけている。本当に敵わないなぁ……と思わずにはいれない。

 

「さてと、俺も気合入れるか……おいスズカ並走するんぞ~」

「はいお願いします!!」

「いや懐妊しているのに良いの!!?」

「今更じゃね?悪阻と酒のダブルパンチで2400を駆け抜けるんだから大丈夫だろ」

「いやそれはそうかもしれないけど、私が可笑しいの!?」

「落ち着けサニー、髪の毛をピンク青白に染めるぞ」

「なんで複数色!?」

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