貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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626話

『ウマ娘たちが今、ゲートインを終えました。G1最長の船出が始まろうとしています。精鋭中の精鋭達の航海はどのようなはためきを見せるのでしょうか、そして今―――スタートしました。出遅れはありませんがビワハヤヒデがいいスタートを切って先頭スタート、そのまま先頭に立ちましたのは日本ウマ娘の三代目メルボルンカップ覇者でもあるビワハヤヒデであります。ライスシャワーという三重の意味での先代に力を示す事が出来るのでしょうか。二番手はテイエムグレート、さあ先頭の妹のナリタブライアンは三番手、その直ぐ傍にはマヤノトップガンが控えています。これも我らが暴君たるメジロランページの策略でありましょうか』

『何でもかんでも俺の策略にせんといて』

『サラッと実況に混ざるのやめてください』

『アッハイ』

『いや切りなよラン……』

 

笑いが入りながらも進行していく実況、赤坂はこういう時にはランページにも怯まない。だからこそ彼女を重用するしているのだが……ライスもマヤの直ぐ後ろ当たりに控えて流れを伺っている。その背後にローレルと殆ど一丸の塊となったまま駆け抜けていく。殆ど順位の変動もなく一度目の第三コーナーの淀の坂へと突っ込んでいく。

 

「(ペースは……可能な限りキープだ、75~80を維持だな。いや少しだけ踏み込んでいいな)」

 

その先頭を行くハヤヒデは今の自分の状態とレースの展開を頭の中で、京都レース場の盤面を作り、各自をチェスのような駒でイメージしつつも自分のスピードを調整する。3000mを逃げ切りに近い勝ち方をしているハヤヒデだが、それでも3200では話が違う。故に自分の走りと慎重にすり合わせながらも前へと進んでいく。

 

「ハヤヒデはやっぱりその手か……先行と逃げの中間、若干力を溜めてる感じがあるから先行よりかな。こりゃマヤも初体験のタイプかもな……よぉく勉強しろよ、ハヤヒデの走りは俺も育成に関わってんからな」

「4割私ですけどね」

「触ろうとするな近寄るな息するな変質者声出すぞ」

「酷い!?」

 

『さあ第二コーナーを回った所でマヤノトップガンが前に出始めて現在三番手、ナリタブライアンは少し下がります。ライスシャワーが少し前に出て四番手です。さあウイニングチケットがじわじわと前に出ているか、ナリタタイシンもいつでもスパートをかけられるぞという圧が出ているが、BNWの勝負所は何処になるのか、おっと此処でマヤノトップガン強気に攻めていくぞビワハヤヒデの背後に着いた!!』

 

「利用させて貰うよ、大きな影にね!!」

「誰の頭が大きいですって!?」

「言ってないよ!?」

 

マヤ的にはスリップストリームで利用させて貰う的な意図で言った言葉が思わぬ方向に飛び火して吃驚してしまった。それを見た東条とフローラは思わずあちゃぁ……と言いたげに額を抑えてしまいランページもあ~出ちゃうかぁ……と肩をすくめる。

 

「一応フォローしときますけど、多分マヤはそういう意図があった訳ではないと思います。恐らく、大きい身体に隠れさせて貰うよ、みたいな事だと思います」

「それは分かってるわ、ハヤヒデももう少し……いえコンプレックスにこういう事を言う事自体がいただけないのは分かってるのだけど、こういう場であれが出ちゃうのはちょっと問題なのよね……ハヤヒデ唯一にして最大の欠点とも言えるわね」

「まあ他が凄い分、問題点があれだけと思うと大分まともな領域だとは思いますよ私は」

「というかハヤヒデは普通に小顔だと思うんすけどねぇ……」

 

ハヤヒデは頭が大きく見られる事が多い事をコンプレックスに思っている為に無意識的に大きいなどに反応してしまっている。だからと言ってあそこまで大きく振り向く事はないだろう……お陰でペースが少し乱れてスピードが落ちている、それでも直ぐに持ち直しているのだが……あれが致命的な事に繋がらない事を祈るとしよう。

 

「にしてもおハナさん、ハヤヒデも凱旋門に出すってマジすか」

「ええ、帯同バとして同行してもらう予定よ。ローレルは既に経験はあるけれどブライアンは初の海外だからハヤヒデにお願いしたの」

「そこのボケじゃ駄目なんですか」

「だから私の扱い……」

「それも検討したけど、このボケナスには次期リギルのトレーナーとしての経験を積んで貰わないと困るから日本を任せる事にしたわ。私自身、海外経験を積みたいし」

 

以前のようにフローラはリギルを預かる事になり、東条はトレーナーとして渡欧する事になっているとの事。南坂じゃなくていいのかとも思うが、何時までも甘える訳にはいかないと辞退したとの事。それに南坂とてチームを持つトレーナーなのは変わらない。

 

「彼にはローレルのトレーナーに徹して貰う予定よ」

「あれ、結局南ちゃんも行くんすか?」

「佐々田トレーナーに経験を積ませるそうよ」

「相変わらずスパルタだなぁ……」

 

流石に佐々田だけでは負担も大きいだろうから補佐としてイクノや後で自分にも話を持って来る予定らしいのでその時が来たらちゃんと話を聞くようにと東条に釘を刺される。刺されるまでもないのだが、自分はそんなに問題児に見えるのだろうか……まあ問題児ではあるのだが。

 

 

「ライスシャワーもどうかって誘ってるわ」

「ライスもっすか?ライスはどっちかと言ったらパーマーコースの方が適性ある気もするけどなぁ……」

 

そんな会話を紡いでいると、レースにも動きが見えてきた淀の急坂で―――ローレルとブライアン、そしてライスが一気に牙を剥き出しにしてハヤヒデへと向かい始めた。

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