貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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627話

「(不覚……つい、反応してしまった……!!)」

 

マヤがそんな意図もなかったうえに全くそういう事を言ってなかったのに反応してしまったハヤヒデは内心で自罰していた。海外に行くに当たって最も注意が必要とされているのが所謂デバフ攻撃であり、此方の調子を崩して本調子を出させないようにする戦術であるとフローラからも言われており、その克服のために色々やっていた筈なのについ、出てしまった……。

 

『凱旋門に行く、かぁ……う~ん……』

『フローラ先輩は反対でしょうか……?』

『いや反対じゃなくてどうやって海外のあれこれに適応させるべきかメニュー考えてた……』

『しかし、私はメルボルンカップで……』

『いや、オーストラリアって普通に親日国でライスちゃんとパーマーさんの影響もあって真っ向勝負をしてくれる感じになってただけだから』

 

フローラもじっくりと海外のそれになれる為に時間を掛け続けた。その結果として、フローラは何を言われてもランページ程じゃねぇや、という結論に至ってのでそれらの影響をまともに受ける事が無かった。ランページの場合はそれすらも力に変えるので、寧ろそういうのはやって来ればいいじゃんというスタンスだったので全く参考にならない凱旋門勝利コンビである。

 

ハヤヒデの場合はコンプレックスでもある頭の大きさ云々を持ち出されると殆ど反射的に反応してしまうので、その矯正が中々に難航している。現にマヤの大きな影に隠れさせてもらうという言葉にもバッチリと反応してしまっている。

 

『さあ向こう正面へと入りまして先頭は未だビワハヤヒデ、そしてマヤノトップガン。ですが此処でビワハヤヒデが何やら振り向いてしまいました、何かあったのでしょうか、さあ後ろからどんどんどんとサクラローレルとナリタブライアンが凄い勢いで上がってきているぞ!!海外戦線へと移行する日本が誇る怪物二人が上がっていく、それに続くと言わんばかりにライスシャワーも行く!!天皇賞春の盾は譲らないと言わんばかりであります!!ウイニングチケット、ナリタタイシンもビワハヤヒデだけがBNWではないと言わんばかりに上がっていきますが、既に淀の坂に入っているというのにも拘らずスピードが落ちませんビワハヤヒデとマヤノトップガン!!』

 

「先輩たちならば確実に落とさない―――!!」

「体重移動と歩幅で常にそれを管理すれば!!!」

 

『体重移動と歩幅、ですか』

『ええ、私も出来ますけど私の場合は筋力でそれを体重を支えつつも次の一歩に体重をかけて前に出て、倒れそうになるのをまた筋力で支えてを繰り返します。だけどあれは技量で成り立ってるなぁ……凄いなぁ私じゃ絶対に出来ないや』

『一応言うときますけど、筋力で抑え込むも並のウマ娘じゃ出来ねぇから。出来たのマジで今の所ブライアンだけぞ』

『……三冠って改めてレベ違って事を今理解しました』

 

淀の坂は攻略されている、というのが最近トレーナーの中で流行っている言葉だ。というのもその火付け役は凱旋門でのランページであり、坂で一切減速せずに駆け抜ける姿に見せられている者が多い上にこの坂をプラスに出来ないかと前向きにとらえる物が圧倒的に増えたのである。

 

「貴方は本当にこれまでのレースの常識を壊すわね」

「常識なんてものは結局それまでの積み重ねた偏見っすよ、偏見は何れ正される」

 

『さあ最終コーナーを回って現在ビワハヤヒデ先頭!!いやマヤノトップガン、マヤノトップガン先頭に立ったが此処でライスシャワーが最ウチからついて並び立ててきた!!ビワハヤヒデも最後の一伸びか!!?此処でナリタナリタナリタ!!い、いやサクラだサクラだ!!大外からナリタブライアンとサクラローレルがトップスリーに大強襲!!!観客の声に背中を押されて一気に並びかけて来る!!』

「勝つのは、私だ!!」

「いや今度こそ私が、勝って見せるぅ!!!ハアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

『サクラサクラサクラ!!!春の舞台に春吹雪!!?いや祝福の青いバラか!?プレアデスのトップエースも負けじと足を伸ばして来る!!姉も負けていないぞ妹に負けていられない!!!さあ天皇賞春の盾を手にするのは―――サクラサクラサクラだサクラ!!京都舞台に春一番!!桜前線此処に在る!!サクラローレル一着!!!二着ナリタブライアン!!三着にライスシャワー、四着にマヤノトップガン、五着にビワハヤヒデ!!』

 

「っっっっ私の勝ちだよブライアンちゃんっ!!!」

「くそっ矢張り長距離では貴様の方が上手か……!!!」

 

ギリギリのところで紙一重の一伸びで勝利を手にしたローレルは思わずブライアンに向けて叫んでしまった。ブライアンもそれを受けつつも長距離という舞台ではやはり一歩、劣る事を自覚せずにはいられなかった。だがこのままでは絶対に終わらない、本番は凱旋門なのだから。

 

「負けちゃったなぁ……ライスちゃんもお疲れ様」

「うん、マヤノさんもお疲れ様。ハヤヒデさんも」

「あ、有難う御座います……」

 

敗北こそしているが、マヤは特段負けを悔いていない。負けてもいい、その負けを更なる糧とばねにすれば自分はもっと速く高く飛び上がる事を既に知ってしまっている。その味を理解していると……敗北は悔しさだけでは終わらない。

 

「……こんな事ではブライアンの足を引っ張るな……」

 

メルボルンカップの覇者という看板が、自分を弱くしたのか、いや違うそれ以前の自分の弱さだ……これは本格的に自分を鍛え直さないと駄目だ……。

 

「ライスさん、一緒にヨーロッパ、行って頂けませんか」

「ラ、ライスも?う、う~ん……まずはトレーナーさんとお姉さまに相談しないと……」

 

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