貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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630話

「……」

「大丈夫ランページ?」

「ああ、問題ねぇ……酒飲めなくてつらいだけだ」

「アル中じゃない、よね」

「ちげぇよ、毎日晩酌の一本の缶ビールがノンアルコールビールにすり替えられて若干ナイーブになってるだけだ。あれもあれで美味いんだけどさ……なあせめて1週間に1本ぐらいはさ……」

「ダメ、主治医さんも言ってたじゃないか。基本的に妊娠中のアルコールは厳禁、安全量は存在しないって」

「分かっちゃいるが、ちと辛いねぇ……」

 

妊娠中なので全面禁酒令が出されてしまったランページ、そこまでして酒が飲みたい訳ではないのだが……毎日の楽しみにしていた晩酌が無くなるのはそれはそれで寂しい物がある。

 

「というか、バーボンをあんだけ飲んで子供に影響があったか不安視されてるのに……」

「それ持ち出されたら大人しくするしかないからやめてくれ」

 

そんなこんなでランページの妊婦生活は良くも悪くも新鮮なものとなっており、上水流トレーナーが基本的に何処へにも付き添う事になっている。目を離したらとんでもない事をやらかしそうなのでという理由で理事長直々のお達しが来ていたのでランページはかなり憮然としていた。そんなに信用ないのか、まあそりゃそうかと爆速で理解していたが……。

 

「んじゃ先に走るの止めた方が早くね?」

「そっちはもう諦めた」

「そいつは結構」

「全然結構じゃないんだけどね……」

 

プレアデスのトレーナー、ネメシスの統括チーフとしてランページは今も走り続けている。特にネメシスの場合は急に走らなくなるとそれはそれで生徒たちの不安を誘発して、トレセン学園中に波及する恐れがあるので下手にやめられないのである。因みに許可が貰えるまでは仕事終わりの検診が日課のように行われていたが……

 

『……こ、ここまで正常値を出されると認めざるを得ませんね……』

 

現代医学の敗北を突き付けて、ランページは大手を振って今日も生徒達を導く為に駆け抜けている。ネメシスはともかくプレアデスはその走る姿に毎回冷や冷やしているらしいが。

 

「ふぅっ……シャワー借りたわよランページ」

「応ちゃん様、相変わらず水も滴るスタイルグンバツのいい女で何よりだ」

「いい女は貴方もでしょう?」

「魔性の青鹿毛にそう言って貰えるとは嬉しい限りで」

 

部室で仕事を片付けていると奥からタオルで顔を拭きながら出てきたラモーヌと出くわす、先程までエアグルーヴの相手をして貰っており、現在はターボと交代して貰っているとの事。

 

「ちゃん様はトレーナー殿とはどんな感じなん?つうか、ちゃん様のトレーナーってどんな人?」

「知りたい?」

「そりゃアンタを射止めた色男だ、興味は尽きないよ、まあ俺にとっての色男は上ちゃんだがな」

「そうね……一言で言えば……熱い人ね、身体も、心も」

「おおっ惚気てくれるな」

 

如何やら相性が本当にいいらしく、お互いにレース愛が深いとの事。そこからはラモーヌの様々なあれこれを肴にしながらもお茶を楽しんでいると今度はターボが入って来た。

 

「いやぁ走った走った……久しぶりに走るとスッキリするね!!」

「あらターボ、ウマ娘は走る為に生きるのよ。走るという愛を、忘れてたのかしら?」

「起業するから走ってばっかもいられなくなっちゃってさ~……最近はイクノとあっちこっち別の意味で走り回っちゃってる感じ」

「つうかお前起業するって、何やるか決めてんのか?」

「何も!!でもスポンサーになってくれる所は既に見つけてあるよ、メジロ家とかシンボリ家とか」

「普通はそう簡単になってくれる所ではない筈なんだけどな、そこって」

 

起業するのは決めているのだが、ぶっちゃけそこで何をするかはまだ未定だったりするらしいのだが……ターボらしいでっかい事をやりたいらしいのでウマ娘の支援事業とそれら関連の展開を予定するのが妥当だとイクノから言われているのでそういう系にしようと思っている、程度には考えはあるらしい。

 

「んでさ、そこでCMとか打つ事になったらランに出て貰いたいんだけど別にいいよね?」

「え~……面倒なのは御免だぜ?俺が走ってる姿を出しながらカッコいいナレーションでそれっぽい事言わせる位だったらいいけど」

「あっそれいいね、ラン走ってる所ならインパクトあるし」

「独裁暴君を簡単に使おうとするなんて、貴方も貴方で強かねターボ」

「強かっつうかちゃっかりしてるって言うんじゃないかな」

 

尚、ランはターボの会社たるダブルジェットが正式に設立されてからイメージキャラクターに抜擢され数多くのCMに出る事になってしまった、ウマ娘向けの新型ウマートフォンだったり、ゲーム機だったり、蹄鉄だったり……どこぞのウマおじさん並に酷使される事になる事をランページは知らない。

 

「ンでエアエアの仕上がり具合は?2400だからな、桜花賞とは距離が違う」

「問題はなさそうよ、力の抜き方も心得ているし後は実際に貴方が走って感じてみるのがいいと思うわ」

「ターボも賛成、ちょっとお堅い所あるけどそこがいい味出してるよね~」

「トリプルティアラのお二人にそう言って頂けるなら、俺も漸く一端のトレーナーとして程度なら出来るようになったって事かな?」

「ランで一端なら、世間一般のトレーナーって何なの?木っ端?」

 

そんな事を語り合っているトリプルティアラ三人衆、傍から見たら凄い集まりなのだが、実は唯のメジロ家の集まりだったりもするのである。

 

「ランページさ~ん……リギルの事でちょっと頼みたい事が……」

「あらフローラ、貴方随分と良い姿になったわね」

「……ランページさん、これどっちの意味だと思います?」

「どっちもじゃね?」

「ターボもそう思う」

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