「あの、本当に私を何だと思ってるんですか?これでも一応リギルトレーナー代理として本当にあれこれ頑張ってる私に対しての扱いじゃないと思うんですよ」
「これまでがこれまでだからなぁ」
「それを出されると何も言えなくなるのでマジでやめてくださいよ」
リギルのトレーナー代理として忙しい日々を送っているフローラの愚痴を食堂の一角で聞いてやるのだが、こいつの相手を何故自分がせにゃならんのか、ハッキリ言ってこいつの事は大嫌いだし近寄りたくないと常日頃から思っているのだが……
「というかよ、なんで俺がテメェのストレス解消に付き合わなきゃあかんのじゃ、妊婦にストレスは大敵という名台詞を知らんのか。流産したらテメェを本気で恨むぞ」
「ちょっとそこまで言います!!?なんですか貴方にとっての私は全てのストレスの元凶とも言うべき存在なんですか!?」
「そうだと言っておる、この場でゾンダーメタルを俺に組み込んでみろ、すげぇパワー出してやるぞ、原種顔負けの事してやるぞ」
「ええっ……」
まあと言ってもこいつには別に遠慮する必要性がないのでそういう意味でストレスが一切かからないから別の意味で楽ではあるのだが……だからと言ってこいつと好き好んで一緒にいたくはない。
「ンでそっちは如何なんだよ、またグラスにバッチが足りませんって言われてんのか」
「ジャパンカップ2勝な上に凱旋門賞取ってるのにバッチ足らないって他に何捕れば言う事聞いてくれるんですか……」
「ブリーダーズカップのターフとかじゃね?」
「ハードルたっけぇなぁ……」
と言ってみる物の、グラスはそこまで言う事を聞かない訳でもなく割と素直に聞いてくれているとの事なのでフローラの悩みとは現在は無縁の存在。純粋に忙しいだけな様子なのでランページからしたら全く面白みに欠ける事この上ない。
「ダイダちゃんとかサンデーちゃんにロイちゃんとか豊作だった子達が頑張ってくれてますからね、ダービーは誰が勝ってくれるのかって期待がありますけど……なんでダービー前ってタイミングでおハナさんは海外行っちゃうんですかねぇ……せめてダービーまではいてくれてもいいじゃないですか……」
「リギルはダービー勝ち慣れてるからだろ」
「私は慣れてねぇんですけど!?」
「慣れろって事じゃね?」
「んな無茶な……」
プレアデスも人の事は言えないが、矢張りリギルもリギルでやばい面子ばかりが揃っている。バブル以外のサンデーサイレンス四天王を全て獲得していてもう笑えない。なんだかんだで層の厚さという意味合いではリギルがトップを独走し続けている。プレアデスは自分ありきの一枚岩な所が問題ではあるのでどうにかしなければとも思っている。
「つっても昨今じゃクラシック路線とティアラ路線の地位が逆転しつつあるって話もあるのも事実だが別にダービーが貶められてる訳でもねぇだろ、お前もダービートレーナーの地位狙えばいいじゃん。俺はあんまり興味ねぇけど」
「ダービーをそんな感じで甘く考えられるのはそうはいないと思うんですけど……」
「だって早くても来年からなんだもん、俺の生徒達が出るの」
「ああそうか、ランページさん的にはマヤちゃんは坂原さんの子だから違うんですか」
「結果的に菊花賞を取ったのは坂原さんの支えがあってこそだからなぁ……俺は取り敢えずオークスを取ってくれるようにエアエアを鍛えるだけさ」
「オークス、かぁ……」
フローラが不意に空を見上げながら、昔を懐かしむような声を上げた。
「私達のオークスは本当にランページさん一強状態でしたね」
「あん時は俺が幻惑逃げを打った時か、大逃げばっかりやってたから上手く嵌るだろうって南ちゃんが言い出した時は流石にビビったけどな」
「仮にも同じチームのイクノさんいるのによくやりましたね」
「俺も思ったけど南ちゃん曰く、イクノさんはランページさんのライバルであって敵ではありませんよ、それに気づかないのであればそれはイクノさん自身の問題な上にそこは上手く突くべきです。ってお綺麗な面で言ってのけたんだぜ」
「うっわ、正しいとは思いますけど辛辣なご意見ですね……」
「だろ?だからプレアデスも基本的にデビューとトライアル以外は基本的にガンガンとレースに出させていく方針にした」
「やっぱりその方が伸びるんですかねぇ」
「アスリートは特になんじゃねぇの?レースへのモチベって想像以上にデカい訳だしよ」
気付けば、当たり前のようにフローラと会話しているランページ。当人も気づいていないが時折笑顔すら作っている。彼女の事を毛嫌いしてはいるが、なんだかんだである種最大の理解者としての信頼を置いているという事でもある。
「いやだからよ、あんまりべったり教えすぎるのもテメェがトレーナーよりテメェの事が知らないってのが問題になる訳だ。ンじゃそのトレーナーがいなくなったらどうする?お前は自分の事をトレーナーよりも知らないのか?ってなったら一気に崩れるだろ」
「あ~成程……」
「あとご褒美のやり過ぎも考えもんだな、俺もウララのやる気引き出す為に最初にこの手やってたんだけど、やり過ぎなくてよかったって思ってる」
「あ~それはモチベがそっち行っちゃいますもんね、私のランページさんへの固執みたいなもんですよね」
「それは絶対違うと思う」
「同じです」
「なんでそこだけ断言すんの?お前やっぱりそっち系なん?」
「やめてくださいよ折角最近漸くデートまでこぎつけたんですから!!?」
『『『『『えっフローラさんお相手いるんですか!?』』』』』
「うおおおおいっアンタら私を何だと思ってんだぁ!!?」
「俺狂いの狂人ウマ娘」
「泣くぞ!!?」