貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

632 / 635
632話

「今更だけどよ、お前飛び級とかしねぇの?」

「随分といきなりなお言葉だねぇ」

 

休日、それは競争ウマ娘たちだけではなく、ランページにも確りと存在しており今日はゆっくりと羽を伸ばそうとのんびりとしようとしている。といっても家の中だと何もする事がない、妊娠している事が分かってからは家の事はメジロ家お抱えのハウスキーパーがやるようにされてしまったので致し方なく家を出て、タキオンを誘って適当にドライブをしている。

 

「残念ながら飛び級やらをするつもりはないねぇ……ぶっちゃけ面倒くさいというのもあるが、そもそもな話、私はポッケやカフェと競い合いたいというのがあるからね。飛び級をして一足先にトレセンに入学しても意味がないさ」

「そういうもんか、最初からライバルがちゃんといてくれてるようで何よりだ。その場合、お前何処のチームに入る気なんだ?」

「そこが悩みどころなんだよねぇ……」

 

タキオンは常々フローラに対する愚痴を零したり失望したりはするが、別段絶対的に姉を嫌っている訳ではない。なんだかんだで姉の事は大好きだし信頼はしている、それでも尊敬が出来ない辺りは本当に辛いと口にしているが。

 

「フライト姉さんは如何なんだい?」

「あいつもあいつでリギルで頑張ってるらしいな、ツッコミ役を」

「そっちか」

「フローラも一応リギル代理として頑張ってるんだけどなぁ……ちょくちょく変態性を発露させるから元々憧れてた筈の子に幻滅されたり、その子から辛辣な扱いされたりで凹んだりもしてる」

「いい気味だ、なんであれが凱旋門賞を勝ってしまったのか、世界の七不思議だよ」

「そこまで言うか」

「勝利後インタビューであんな事を言ったお陰で私が学校でどれだけ同情の視線を向けられたか知ってるかいランページさん、先生にすらなんて声を掛けたら良いのか分からないって顔をされたらそりゃ色々と言いたくもなるさ」

 

凱旋門を勝ったのは本当に誇らしかった、自慢出来るとは思わなかった。そもそもが自慢の姉なのだから、唯々姉の勝利が嬉しかった。かの暴君にも劣る事がない強さを秘めたウマ娘だとこれで、姉を否定的に叫ぶ親類縁者を黙らせる事が出来ると思っていたらあれだ、本気で頭が痛くなった。

 

「デジたんから聞いたが、色々言われてるんだってな」

「そりゃこれでもアグネスはウマ娘の中でも結構いい立場の家系だからね、それなりに力も規模もあるのさ。それ故にそれに相応しい礼儀を知れと私も言われてきたよ、私のお父さんとお母さんは穏健派且つ庶民派だが……」

「そう思うとデジたんってなんかすげぇ考え方してんだな」

「私としても彼女のあれこれは否定しないよ、寧ろ考え方とすれば一番だとも思っている。彼女の根底にあるのは理解の歩みだからね」

 

そんなデジたんは現在チームには所属せず、まずは世界を広める為に様々なチームを見学して調べ物をしている。トレーナーの中でも話題になっており、一人のトレーナーがメモの取り方についてどう思うかと尋ねられた時にはその完成度の高さに驚いてしまい、今すぐにサブトレーナー研修に入らないかと誘いをかけたほどだった。

 

「別にデジたんを貶すつもりはないけどさ、お前らってなんか変態性がある方が強いのか?」

「やめてくれランページさん、その言葉はシンプルに私達に効く。私だって他者と比べて色んな意味で濃いのは自覚してるんだから……それは認めるけどフローラ姉さんと同類に扱われるとなんか胸がキュっと苦しくなる」

「OK俺が悪かった」

 

マジ顔になるタキオンに素直に悪い気持ちになって来た。

 

「俺のチームにでも入るか?それはそれで面白いと思うが」

「正直言ってはそれは有りだと思う、だけどまあ今の所は選択肢に過ぎないね。姉さんたちと組んで貴方に挑むのも楽しそうだからね」

「楽しそう、ねぇ……タキオン、お前やっぱりアイツの妹だよ」

「当たり前さ」

 

誇らしげに胸を張るタキオンになんだかんだで姉の事が大好きなんだなと思う。思う所こそあるがそれでも姉に対する愛情が損なわれている訳ではないのだから。

 

「もうすぐオークスだが、その備えは良いのかい?暴君の女帝はティアラ路線で結果を出せるのかと此方でも話題になっているが……」

「俺がしっかりしてないと思ってるのか?」

「だろうね……ああそれと、なんか最近妙にランページさんを推している街があるが、あれは貴方の地元なのかい?」

「……まあ地元ではあるかな」

 

この質問に関してはランページもどう返すべきか悩んでしまう。元々住んでいた街では自分を只管に推している、ランページ記念の設立からそれが加速度的に増しているという話もある……個人的にはあそこを地元とは既に認識していないし、どうでもいいとすら思っている。だからこそ一度、顔を見せてくれ的な連絡が来ても全てガン無視している。

 

「いい思い出が皆無でな、地元ではあるが何とも思っちゃいねぇよ。商店街のおっちゃん共には色々と世話になった記憶あるけどな」

「貴方でもそういう事があるんだねぇ」

「俺がこうなったのもトレセンに入ってからだからな……やめだやめだ、ダチと話してるのに不景気な気分になってたらやってられねぇよ」

 

タキオンもこの話題はランページの中で地雷ではないが、触れて欲しくないんだなという事を理解してそれ以上話すのをやめておく。

 

「さあて、このままどっかまでぶっ飛ばすかなぁ……」

「何処までも付き合おうじゃないか、どうせ明日も私は休みだ」

「んじゃ北海道辺りまで行くか、白い恋人喰いてぇ」

「弾丸旅行すぎないかい?それ買うなら近場の空港でもいいじゃないか」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。