貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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643話

ゲートインしていく選ばれた18人のウマ娘、7枠15番に入ったエアグルーヴ。プラチナの光は何処か温かく強くありながらも自分を励ます。励ます必要などないぞ、今の私は緊張もしていない、しているのは周りの方だ。奴らにとってすでに既に主役の座を降りているのだ、奴らにとっては主役とは私から奪い取る物へと変わっている。

 

「(ならばこいつらは既に失格という訳だな、ラモーヌさん)」

 

『レースにおいて最も重要な事が、何か分かって?』

『……レースを愛する事ですか?』

『それは大前提、それは―――自らを中心と思う事。どのような走り、立ち位置でも全ての中心に自らがあるという事を認識する事、そうでなければ自らの走りは他者を活かす、他者を害する為の低俗な物へと変わる』

 

「……さあ行こうか、私の戴冠式へ」

『さあ今スタートしました18人のウマ娘がスタートしましたいいスタートを切りました。これから第一コーナーへと向かっていきます18人のウマ娘、今チラリとエアグルーヴが観客席を見ました。おっとそのまま加速しますエアグルーヴ!!?声援を背に受けて前へと飛び出していきますがこれは、掛かっている、訳でもなさそうだぞエアグルーヴ一人旅!!あっという間に先頭で6から7バ身!!これはまさかまさかのメジロランページのあの走りを再現していると言わんばかりの堂々たる走りをしております!!キンジョウシャープが追いかけます、マークリーマッシュも前へと出ます。ビワハイジは5番手で悪くない位置をキープしその背後にはファイトガリバーと続きますが、エアグルーヴが止まらない止まらない!!先頭を駆け抜けます!!』

 

「あれま、先行指示じゃなかったっけ?」

「マルゼン姉さんみたいな事になったな」

「マルゼンスキーさんの事だよねそれ」

 

現在は女優としても活躍中のマルゼンスキー、今はマルゼンスキーを主役に据えたドラマにも出演中、因みに旦那役は彼女のマジ夫だったりもする。二人揃えばどこでもトレンディになるカップルとも言われている。

 

「そう、マルゼン姉さんは脚質が逃げって言われてるだろ?」

「えっ違うの?」

「ちゃうの、あの人素のスペックがバケモン過ぎて様子見のつもりで走ってたらどんどん他を追い抜いちゃって先頭に立っちゃってたんだとさ」

「……噂には聞いた事あるよ、マルゼンスキーは身体スペックが違い過ぎたって」

 

他者にとっての100%が彼女にとっては60~70であったという、それ故にマルゼンスキーは孤高の王者とも言われた。ライバルがいない中で駆け抜けた彼女に一人でも同格のライバルが、いや、どんなに負けても絶対に喰らい付いてくるライバルがいたら……と思わざるを得ない。今のエアグルーヴの走りはそれに近い。

 

「こりゃちゃん様とターボとの併走が相当に効いてるな……つうか、多分基準があの二人になってる恐れすらある」

「「あ~……」」

 

言ってしまえばこれもフローラの影響が色濃く出ていると言っても過言ではないのだ。フローラも海外を走っていた時には目の前に幻影のランページであるランページ・ゴーストを投影し、それを超えるべき走っていた。

 

『大欅を過ぎても未だにエアグルーヴが先頭!!これはもう疑いようのない走りだ!!メジロランページの再来か、この、ティアラ路線の彼女の愛弟子が、自分こそが彼女の光景だと言わんばかりの走りで大欅を超える!!ビワハイジが伸びて来るが、リードが崩れないぞエアグルーヴ!!』

 

「何だ、この走りっ……オーバーペースではない、のか……!?」

 

不思議と足が軽く、どんどんと前に進みたがっている自分がいた。誰もいない先頭の景色、誰にも汚されていないし場を自らの足で踏みつけていく、その快楽はゾクゾクとする高揚感にも繋がっている。スズカが先頭を好むのもよく分か―――いやあいつは唯の先頭民族だからか。

 

「私に限界などはない、さあ見るがいい―――これが、暴君に続く、女帝の力だ!!!」

 

『エアグルーヴここで渾身の一伸び!!?ビワハイジとファイトガリバーの末脚のキレをその上から更に切り裂くようなキレです!!あの走りで足が溜まっていたと言わんばかりの豪脚!!エアグルーヴ独走!!これはもうセーフティ!!!エアグルーヴ、偉大な女帝が、二つ目のティアラを今ここに戴冠んんん!!!エアグルーヴ無敗の二冠!!ダブルティアラ達成!!二着にファイトガリバー、三着にビワハイジ!!!これがプレアデスか、これがメジロランページによって育てられた女帝!!!』

 

「女帝、などと偉ぶるつもりはないが……そう呼びたければ好きに呼べばいい、私はそう呼ぶお前達を失望などさせはせんよ」

 

ランページとはまた違う魅力、カリスマ性がそこにあった。圧倒的に強く、抗う事の出来ない絶対性がある暴君と違ってエアグルーヴのそれはつい、目で追い、その自信溢れる態度に身を委ねてしまいたくなるような魔性もあった。

 

「これでダブルティアラ……さてと、秋華賞はどうなるかねぇ……勝てたら面白いだろうなぁ」

「面白いどころの話じゃないんだよなぁ……」

「全く本当にとんでもないチームのサブトレーナーになったもんだよ」

「おっ独立でもするかい?」

「さあてどうかな?」

 

 

「全く、私が分からせられてしまったな。参ったもんだ」

「お前の走りも悪くはなかったが、私には及ばなかっただけだ、気にするな」

「いや気にするわよ……」

「というか分からせって何だ?お前の癖?と言っていたが」

「いやくせではないから?っていうかこれ一般的だってお母さんから言われてるんだけど……」

「分からせ、相手に理解をさせる事がか?」

「「???」」

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