貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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651話

「おんどりゃあああああああああ!!!!」

 

気合いを入れて走りまくっているサニーことサニーブライアン、プレアデスの中で最初にメイクデビューを駆け抜ける事に決まった彼女は幻惑逃げ……というにはあまりにも力業過ぎる走りを決めていた。本来幻惑逃げとはペース配分や緩急を巧みに操ることで後続を翻弄する特殊な逃げ戦法の事を指している、ランページの得意な戦術の一つでもあり、彼女にはそれを継承させたつもり……だったのだが……ハッキリ言おう、出来ていない。

 

「う~ん……なんというかまるで成長していない……とは言わないけど、緩やかやねぇ……」

「序盤は出来てたけど……」

「これあれだね、やってたのが同期とかだったから」

「あ~……ズレか」

 

上ちゃんと坂原と共に感想を述べる。サニーの走りが決して悪いという訳ではない。寧ろレベル的には高レベル帯に属している類の走りが出来ている、いるのだが……それが強く影響しているのか、周囲も極めて強いレベルで通用させる事が大前提の幻惑逃げになっている。

 

「よぉっランページ、サニーブライアンすげぇじゃねぇか」

「なんだ沖ノッチ遂に首になったか」

「なんでだよ!!?トレーナー病的なあれだ」

「成程、完治が難しい病だ」

「テメェ……」

 

と言いつつも本当はスピカのメンバーの一人が走っているのである、その名もシルクジャスティス。今回のレースに出走しているのだが……此方はサニーの走りに幻惑されてペースが乱されている感じがする。

 

「沖ノッチ、サニーの走りどう思う?」

「それ俺に聞くのか?まあそうだな……強いて言えば随分とハイレベルな想定だな、と思う。ウチのには通じてるけど他には全然、ある種ハイレベルな練習メニューが裏目に出ちゃってる、って感じか」

「だよなぁ……う~む想定外の効果だわこれ」

 

つまり、サニーの幻惑逃げは一定以上のレベルのウマ娘には通じるものではあるが、それ以下のウマ娘にとってはそもそもがペースが違い過ぎて幻惑出来ていないという事である。お前はEXTRAのドレイク船長かと言いたくなってしまった。これも基本的に自分と走っている且つ用意した相手のレベルを高く見積もり過ぎた弊害だろうか……。

 

「つっても素のレベルが滅茶高い、既にジュニア期の末か、クラシック序盤辺りの物がある。これに追いつこうとするのはそうだなぁ……それこそクラシックの初戦になると思う、その間もサニーが成長する事を加味すると……こっちもかなり気合入れたメニュー組まねぇと駄目だろうなぁ……やれやれトレーナーにキツい現実を突きつけてくれるな」

「そりゃどうも……成程な」

 

ある意味マルゼンスキーに近い何かを感じずにはいられない、ある意味このままでもいいかもしれないが、それはそれで格下の隠した刃に何時かやられる日もあり得てしまう訳でトレーナーとしては考慮せずにはいられない。

 

「いいいいいいよっしゃあああああああ!!!ランページさん勝ちましたよ私ぃぃぃぃ!!!」

 

そんな事を話している間に結局二着のウマ娘に6バ身差を付けて見事にメイクデビューに成功したサニーが大声で喜びをあらわにしているのだが……勝つには勝ったが、正直あんまり褒められた勝利ではない、トレーナーとしては苦々しい勝利となってしまった。

 

「調整、しないとなぁ……」

 

 

『さあまもなく最終直線に入る、此処で内から伸びて来るのはタイキシャトルタイキシャトルだ!!こ、此処で異次元の伸びを見せるぞタイキシャトル!!まだ足を残していたのかタイキシャトルが一気に足を伸ばしてくる!!?アリゾナパレットも足を伸ばすが、それ以上に伸びがエゲツないぞこれがメジロランページの教え子の力ぁぁぁぁぁ!!?タイキシャトル、ラスト200mで凄まじい走り!!独裁暴君のダートの後継者は自分だと言わんばかりの走り!!アリゾナパレットとはなんと8バ身差!!圧倒的なまでの力を見せつけるぞプレアデス!!』

 

「YE~S!!I AM A CHAMPION!!!」

 

「人の真似をそこまでせんでいいわ」

 

ダートでも圧倒的な力を見せつけるタイキ、芝ばかりを走らせていたので少し心配ではあったのだが……余計な心配だったか、流石は世界のタイキシャトルだ、バ(りき)が違いますよ。

 

「こっちも終始安定してたね……」

「ま、こればっかりには逃げと先行の差って奴やね」

「最後の一伸びは理想的な物だったね……個人的な趣味としては最後にちょっとだけ抜くだけでもいいとは思うけどね」

「流石坂原さんだな、俺としてはある程度抜いてほしくはあるけどな」

「結局のところ、レースは最初にゴール板を駆け抜けた子の勝ちだからね。必要な力だけを使えば休養も疲労抜きも効率的に終わるし」

 

そりゃそうだ……とも思いながらこれからそれをやるウマ娘が登場し、それと戦わなければならないと思うと本当に鬱屈とした気分になりそうだ……折角我らのウマ娘が勝ったというのに……。

 

「ランページサン~勝ったデス~!!!」

「お~よしよし流石俺のタイキだ、いい子いい子」

「Oh!!?上ちゃん聞いたデ~ス!?ランページさんは私のデース!!」

「違うさタイキ、俺の、ランページさ」

「こらこら妙な言い合いすんじゃねぇ」

「エヘヘ、やっちゃったデ~ス♪」

 

さて、明日は京都でスズカか……ホント強行軍だ。

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