貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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660話 特別編パート3 その5

「やだ、うちの子才能あり過ぎ……!!?」

「親馬鹿此処に極まれりか……まだ産んでも孕んでもいねぇくせに……」

「良いじゃないですかこの位!!?」

 

ターフを駆け抜けるトランザム、ポジトロン、ローラの三人。言葉の節々から中々に侮れない自信の表れを感じ取っていたのだが……それは事実だったらしくその走りはかなりのレベルの物。流石に所属チームなんかは教えて貰えなかったが……。

 

「トランザムは逃げか……」

「ランページさんリスペクトの走りですね、ブライアンちゃんみたいな全身走法を取り入れつつも自分のオリジナルを何とか盛り込んで自分の走りに昇華しようとしてるみたいですね……ですが、自分のオリジナルを出そうとするとちょっとペースを落とさないとキツい、そうなると全身走法の組み合わせを全面的に見直す事になるから躊躇してるって感じですかね」

「なんでお前そんなに解像度高いの?キモいんだけど」

「だって娘の事なら分かるでしょ」

「だからまだ……もういいや」

 

トランザムはその名が如くとは言わないが、逃げを基本に置くスタイルだが明確なランページリスペクトなのか、全身走法を取り入れて前へ前へと突き進み続ける走りを行う。だが最近は苦戦気味で自分のオリジナルを組み込もうと苦心中、だがそうなると逆にこれまで培った全身走法を一から組み直す必要性が出て来るという難題に突き当たってしまっている。

 

「ポジトロンは先行だな」

「こっちは強いて言えばハヤヒデちゃんに近いかな……全体的なアベレージに富んでいてレースという常に変わり続ける環境に即座に対応して適応出来る柔軟性特化の走り……だけどそれ故に問題なのは強い相手が常にペースを握り続ける状況が問題ですね……」

「それでもオリを入れようとしたらお前になるって話なんだろ」

「……なんだろうなぁこのお母さんに似るという本人からしたらエモいそれを不服と思われるのは複雑になってしまう心境は」

 

ポジトロンは周囲の環境こそを味方に付けるタイプ、レースは常にウマ娘たちによって主導権を奪い合う戦場その物、常に流れを変え続ける生き物。そんな生き物を利用するのがポジトロンなのだが……逆に言えばレースの流れが一つに向かっている場合には極端に弱くなってしまう。

 

「そしてローラ……マジでお前の走りまんまだな……俺への執着してないお前の走り的な」

「超嬉しい……」

「……それで当人苦しんでるんだからフォローはちゃんとしなさいよアンタ」

 

ローラに至ってはこれ以上の言葉はない、正しくフローラの走りだ。明確に違うのは自分がいないのに本気のフローラに近い領域の走りをしているという点だろうか……それさえ出来ればという、ある種フローラの理想形の具現化だ。フローラが勝利出来なかった点で挙げられるのは自分がいた場合もあるが、いなかった場合もあるのが性質が悪さを際立たせている。その性質の悪さがない。フローラの完成系というか発展形というか……。

 

「全員すげぇ素質と実力は確かにある、だが同時にこれは根深い問題だな……つうか全部にお前関わってんじゃねぇか」

「人の事ランページさんだっていえないじゃないですか!!?」

「嫌だって……あいつらのオリジナルのオリジンってどう考えてもお前やん」

 

そう、フローラの娘たちの問題の根深い所は、彼女らのオリジナルの部分がフローラとどうしても被ってしまう点にある。自分だけの走りを追求しようとすると母親に辿り着いてしまい、結果的にオリジナルなどでなくなってしまう……己のアイデンティティ云々で不安定になっているローラもいるので割と洒落になってない問題なのである。

 

「如何足掻いても母のデッドコピーと認識されるか……こりゃ確かにキッツい問題だな」

「これ、ランページさんの娘さんにも通じる問題なのでは?」

「……何人の腹に耳当ててんだゴラァ!!」

「いってぇ!!?蹴る事ないじゃないですか!!?」

「キモいわ!!そういう事やってんから妹どころか娘にも避けられるって事を認識しねぇのか!!」

 

なんでこんなのが自分のライバルだったのか、そして凱旋門賞を制したのか……多分、あの子らが生まれて活躍している頃にはマジの謎扱い何だろうな、今ですら意味分からないのに……。

 

「ンで、どうやってあれを解決するよ」

「解決する必要あります?」

「ああっ!!?」

 

思わずランページはフローラの返答に驚いて変な声を出してしまった。あろう事か、あの子達が苦しんでいる答えに対して解決する意味合いが無いとすら言い切ったのだ。

 

「確かにあの子らの問題は深刻ですよ、だけどその程度の物でしかない。己の走りの答えは既に示されている、ならばそれを追求するだけでいい。その果てに自然と自分の走りと昇華されていく、そこに至るまでの苦しみは確かにあるけれど、その苦しみその物が至った時に全てが全返しになるんですよ。我が娘ながら―――甘いな、存外未来の私は甘やかしているみたいです」

「……ホント、お前そういう所はドライだよな」

「これが私ですよ、そうでなければ貴方を追いかけられなかった。冷徹だが冷静に、そして的確にがリギルのやり方ですから」

 

娘たちの苦しみは理解する、だがそこまでしか、自分はしない。それ以上の事は自分との勝負だ、だけど母親として立ち上がる為の手伝いはするつもりだ。

 

「要するは自分の気の持ちようです、それだけあの子達は化ける。それこそ―――全盛期の私を超える程に……」

「お前の全盛期ほどわかりづらい物はねぇだろ」

「良い事言ったつもりなんですからそういう事言うのやめて貰えます?」

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