貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

663 / 678
663話

「トレーナーちゃん……ランページさんって、なんなの?」

「独裁暴君、かな……」

「それで納得しそうになった……」

 

宝塚記念へと備えて練習を重ねるマヤ、マヤノトップガンと言えばプレアデス屈指の天才肌で数々の練習をあっという間に物のにして来た麒麟児、そんな彼女に今更習得できない技術などはない、と思っていた所に叩きつけられたのがランページ愛用の10倍シンザン鉄、それでの練習が申し渡された時、マヤは遂に来た、攻略してみせる!!という意欲を滾らせていたのだが……

 

「ぜ、全然違う……」

 

これまで9倍の重さに適応してきたマヤだが、遂に10倍になった途端にその負担に耐え切れずに崩れ落ちるように膝を付いてしまった。確かにこれにも技術は必要でその技術自体はマヤも持ち合わせているが……単純に10倍の重さに耐えながらもそれを行う事が難しいのである。

 

「流石に我らがマヤちんも10倍にゃぁ音を上げるか」

「ラ、ランページさんと一緒にしないでよぉ……」

「俺は数年こいつを使い続けたからな、もう慣れてるだけだよ」

「そのなれるのが可笑しいと思うんだけど……」

「そりゃ南ちゃんのせいだから苦情はそっちにどうぞ」

 

宝塚記念に向けての特別メニューは10倍シンザン鉄を使用した上でのランページお手製の特別メニューをこなすという物、9倍なら何とかできただろうが……その辺りはランページ自身を使って緻密に計算と調整と繰り返して作ったメニュー。

 

「これを超えられたらお前さんは確実に宝塚記念に勝てるぞ、そもそも10倍使う理由ってなんだかわかるか?」

「全然分かんないよ~絶対ないと思うけど虐められてるって思ったら凄い納得しちゃうもん~!!」

 

手足をばたつかせて駄々っ子のように頬を膨らませているマヤに思わず笑いそうになるが、これはマヤ最大の弱点の克服にも必要になって来る事なのだ。

 

「ちょうどいいや、エアエアにステゴにスズカ、ちょいとカモン。はい質問です、マヤの弱点ってなんだと思いますか」

「マヤさんの弱点、ですか……?」

 

ふいに呼び止められた三人に意見を求めてみる事にしたのだが、エアグルーヴは思わず首を傾げながらも思案するが、マヤの弱点と言われてもパッと思いつかない。

 

「しかしマヤさんに弱点という物がありますか?マヤさんには周囲を観察する目もスピードも加速度も、カーブでの体重移動なども全く隙がありませんが……」

「うん私もそう思います、私なら兎に角先頭を取って勝つしか思いつきませんが……」

「そりゃお前がそれ以外の戦術無いだけだ」

 

お前はそれでいいんだけどね~と頭を撫でてやる、マヤが羨まし気に坂原に抱き着きながらもナデナデ要求をする中でステゴが手を叩いて分かったように声を上げる。

 

「体格、だな?」

「そ、マヤはシニア級を駆け抜ける中では小柄だ。これは強さにもなれば弱さにもなり得てしまう」

「どういう事ですか?」

「これからマヤが走るのは宝塚記念、中距離G1戦だ。中距離はレースの華とも言われるメインレース、それに向けて調整する奴が多いしこのレースだからこそ力を発揮出来るってウマ娘が統計的に極めて多いんだ。そしてそこに強豪がでりゃそれはマークされるからマヤの弱点も狙って来る確率も極めて高い」

「それが、体格、ですか」

 

体格の小ささが如実に強みとなるのは長距離、身体が大きければその分大きな距離を移動する事が出来るが、身体が小さければ操縦性が落ちる事がないので統計的にも怪我をする事も少ない結果も出ているのだが……中距離では多くのウマ娘が入り乱れて、物理的な圧力の押し合いになる恐れが出て来る。

 

「んじゃ、体幹を鍛える的な意味でもこれを使ってるって事なのか?」

「そう言う事。ぶっちゃけ、マヤはプレアデスの中じゃ非力な方だからな」

「ムゥッ……」

 

いじけるように坂原のお腹にぐりぐりと顔を押し付けているマヤをはいはいとあやすように撫でる坂原。

 

「技術的に優れてる相手に競り勝つ分かり易い強みが相手になくて自分にはある強みを物理的に押し付ける事だからな……そうなるとマヤの小さな身体を攻撃してくる可能性が最も高いって訳だ」

「まあ道理だと思うぜ~それが一番分かり易いもんな」

「だろ?そういう訳だから頑張ろうなマヤ、じゃないと……次はもっとあれな奴をぶつけるぞ」

「だ、誰?」

「フローラ」

「さあ頑張ろうトレーナーちゃん!!さあ今すぐやろうマヤいっぱい走っちゃうぞ~!!!」

 

と途端に元気になって大声を出しながらも準備運動を始めるマヤに呆れながらもメニューを取り出す坂原とマジでフローラとやらせんの……?的な顔をする三人がこっちを見て来る。

 

「いや流石にギャグよ、あいつと走らせるかよ……というか、やっぱりお前らからしてもフローラとは走りたくない?」

『はい』

 

綺麗なハモリを見せながらも頷くお三方、丁度いいのでみんなから見たフローラについて尋ねてみる事にした。

 

「色んな意味で尊敬に値する人だとは思いますが……同学年の中でフローラさんのようになりたいと言っている者は極めて少数派ですね……」

「そうね……戦術とか海外遠征のあれこれとかは授業でも使われるけど、フローラさん本人はその……」

「まああのド変態を推してる奴は見た事ないね」

「アハハ容赦ねぇわこの子」

 

フローラ、お前本格的にちゃんとしないとマジで実妹から見捨てられるぞ。

 

「ご安心を、既に捨ててます」

「フラちゃん当然何言いだしてるの、そういう事言われるとお姉ちゃん凄い不安になってブロウクンハートになっちゃうから勘弁してね?」

「砕け散ればいい」

「誰かぁぁぁぁ妹と仲良くなる方法を教えてぇぇぇっ!!!!」




最近フローラと夢の中で将棋打ってます。将棋やりながらあいつが要望垂れ流して来る、そのせいか、あいつ将棋くそ弱い。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。