貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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664話

今年の宝塚記念は7月に入ってから、大体が6月の終わり辺りに開催されるイメージだったのだが、こういう事もあるのだが……しかも7月7日とは……。

 

「こっちの方が七夕記念じゃね?」

「それ言っちゃいます?」

 

食堂でランチタイムを楽しんでいたのに入り込んで来たフローラに溜息を吐きながらもそんなどうでもう良い事を口にするランページ。実際七夕記念は前日の7月6日に行われるため、名前負けしているのだが、それは暦上致し方ないというもの。G3の七夕とG1の七夕という事にしておこう。

 

「ンでそっちはどんな調子よ」

「いやぁ漸く統制がまともに取れて来たって感じって言ったら語弊あるんですけど、皆私の指示に即座に従ってくれるようになってくれた感じですね。一応おハナさんにちゃんと任されたチーフトレーナー代理なのに酷くね皆」

「今までが今までだからなぁ……」

 

フローラの良い所は自分の戦歴を自慢するわけでもなければそれに胡坐をかく訳でもない親しみやすさ、なんだったら入学直後のウマ娘とも一瞬で打ち解ける事が出来る、というか基本的に相手から舐められる、というのは言い過ぎだが―――

 

「え~本当で御座るか~?」

「本当です~事実です~」

 

みたいなやり取りから一気に仲良くなることが多数、そして本性がばれて一気に離れていくまでがデフォである。それ故かリギルの皆からも未だに懐疑的な所がある、それを正していた筆頭であるブライアンが海外に行っているのでなおさらである。

 

「ンで如何だって正した?」

「実力で叩き潰しました」

「……加減した?」

「してないに決まってるじゃないですか」

「メディィィィイイイイイクッ!!!!」

「大丈夫ですってちゃんと全員医務室に搬送しましたから」

「アウトだよっ!!!??」

 

フローラの解決策、それは全員相手にした模擬レースだった。しかも2400でハンデとしてフローラ自身は出遅れを必ずするという条件付きで、それでいながらも全員をぶち抜いて8バ身差で勝ってみせたというのだ。

 

「大丈夫ですよ全員怪我とか一切してませんから、唯精神的な疲労と肉体的な疲労が蓄積してる程度に済ませましたから大丈夫ですって」

「お前の大丈夫はマジでお前基準で大丈夫だからなぁ……後でフォロー入れとかねぇと駄目な場合あるからマジ気を付けろよ、場合によって俺を飴にしてもいいから」

「舐めていいと!!?あっやめてください静かに流派東方不敗式握撃の準備をしないでください」

「ったくこのくそたわけが……なんでお前は理論派なのにこういう時に限って物理的な手段に訴えかけるんだよ」

「だって、その方が早いし」

「……」

 

というかまだフローラを侮る馬鹿がいたとは驚きだ、あのおハナさんが補佐としてサブトレーナーとして重用しているのを間近で見ていたのならば分かるようなもんだが……。

 

「というよりも、今回ばっかりは私がおハナさんと比較されちゃった感じですね。というか全体的にリギルっておハナさんに依存気味なんですよね……っていうか依人籬下?」

「どこの恐怖の大王だテメェは、というか使い方あってる?」

 

東条 ハナという人物が極めて有能で頼りになるというのはリギルのウマ娘だけではなくトレーナーも理解している。厳しいと思われがちだが、実際は相談を持ち掛ければ普通に応対してくれるし新人からは頼りになる先輩として慕われているし、どこぞのトレーナーなどは多くのツケを抱えている存在でもある。だが、その優秀さ故に彼女の指示ならば……その指示にさえ従えば……という思考を持つウマ娘が一定する生まれてしまう。しかも指導方針が管理主義なのでそれとも噛み合ってしまう。それが今回の一件に繋がっている。

 

「それを打破する為に全力で叩き潰したか……お前らしいと言えばそうだが、それはそれである種の恐怖政治の始まりじゃねぇのか?」

「普段が甘めなんですから怖い時は怖いって認識を持って貰えたら普通に御の字なんですよ。そもそも私だって厳しくはしたくないんですよね、今回のこれだってやりたくてやった訳じゃないんですから。こういうのはあくまで普段の練習を損なわない為の合理的な判断のそれだと思ってます。これでも理論派の合理的主義者ですから」

「合理的ねぇ……」

 

理論重視な癖に最終的にそれらを超越した力を発揮する奴が何をほざくかと言いたいが、以前試しにフローラの本を読んでみたらこれでもかと理論が書き連ねられていた、しかもこれが初めての本だという事に配慮して読み方や実践の仕方、実践した後の身体のケアの仕方までも事細かに、それだけではなく大雑把な感じでも出来るように配慮までされていた。面倒臭がって細かく読まない奴は大雑把なやり方でも効果が実感できて、次はちゃんと読み込むような流れが作られている。改めて本当に恐ろしい奴だ……。

 

「そう言えばグラスの奴は如何だよ、スペとかキングにエルから色々頑張ってるだ~的な話を聞いてるんだけど」

「最近だと私の理論を教え込んでるぐらいですかねぇ……フラちゃんが見張りみたいになってるから常に真面目モードじゃないと怒られますから……というか偶にフローラさんって呼ばれて心臓が止まる位の衝撃叩き込んで来るのマジで勘弁してほしいんですよ……ランページさんからもお願いしますよじゃないと私マジで心停止しかねませんよ」

「是非ともしてくれ、そうしてくれたら俺も枕を高くして寝られる」

「ひでぇよこの人!!人の心とかないんか!?」

「そっくりそのまま返してやらぁ」

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