『さあ宝塚記念、まもなく私とあなたの夢が走り出します。一番人気はマヤノトップガン、それに続く形で二番人気はギリギリでのランクインのライスシャワー、長距離においてはこれ以上の役者を求めるのは厳しいですが、中距離でもその強さは変わらないでしょう。そして三番人気にはダービーウマ娘のナイスネイチャが続きます。こうして見ますとプレアデスとカノープスが競っているような感じになっておりますが、さあ一体どんなレースになるのでしょうか?今ゲートインが完了しました、さあ今……スタートしました!!おっとナイスネイチャ素晴らしいスタートです!!先行争いで真っ先に抜け出したかと思ったらの束の間、マヤノトップガンも素晴らしいスタートで並びかけていきます!!それにぴったりと付いていくのは青い花束ライスシャワーであります』
スタート直後、スタンド前を駆け抜けていきながらもそれぞれが自分のポジション争いをしながらも前へ前へと出ていく中、飛び出していくのはマヤやライス、ネイチャと言ったメンバーではあるがそれらより前に出ていくのはジェニュイン、ブリザードというマイルで馴らしているメンバーでもある。
『さあ先頭に立ちましたのはリギルのジェニュイン、並びかけるのはスピカのタイキブリザードであります。三番手にマヤノトップガン、ナイスネイチャ、ライスシャワー、そこからレガシーワールド、マーベラスサンデー、ウイニングチケットとここでひと塊、そこから3バ身程離れた所に、ナリタタイシン―――』
「よしよし逃げが上手く嵌ってる!!」
「応誰か警備呼んでくれ変質者だ」
「ちょっとまだ何もしてないんですけど!?」
「つまりこれから何かすると」
「いやしねぇから!!?」
と何時の間にかやって来ていたフローラが近くに来ていたので上ちゃんと位置をチェンジする、この程度では意味がないかもしれないが、やらないよりマシなのである。
「先行じゃなかったか?」
「まあそうなんですけど、選択肢の一つとして逃げも研究中なんですよ。対逃げの練習なら私がいくらでも付き合えますし」
「流石ストーカー、誰かを追いかける事に関しては誰にも負けねぇってか」
「だから人聞きが悪いってぇの!!」
「それを活用してランページに対してあれこれしてるからそういう事言われるんじゃないのかな」
「現役時代からランを凄い追いかけてたもんな~フローラってば全然変わってないだな」
「まあそこがフローラさんらしいと言えばそう言えるのかもしれませんが……」
「何この嬉しくない理解のされ方」
そんな事を思っているとランページはとあることに気づいて南坂に話を振ってみる。
「そう言えばよ、アマちゃんとドラランとかは如何してるんだ?2200なら適正距離ないだろあの二人って」
「ええ、実は……あなたの偉業に挑戦する為に回避したんですよ」
「……どれだ」
偉業という言葉ではなく、どれだ、という声を上げてしまうランページ。事実としてランナーとしてのランページの偉業というのは色々あるので正直どれなのか全くわからないのである。真剣に考えている彼女に南坂が声を出す。
「天皇賞秋からエリザベス女王杯、そしてジャパンカップという俗にいうランページローテです」
「あれやんの?バカじゃねぇの?」
「いや、君それをやってたんだよ?」
二人が挑戦するというのは同じティアラ路線であるランページが成し遂げた怪物的なローテ、秋華賞からエリザベス女王杯、そしてジャパンカップというローテをシニア流に変更したという物。それに向けて現在二人は猛特訓中であり、その為に宝塚記念を回避したというが……肝心のランページは何言ってんの?と極めて懐疑的な目を向けている。
「俺って言う先駆者がいるからこそ自分達でも出来るなんて楽観的に考えちゃあかんよ、寧ろ俺っていう存在自体が特異点みたいなもんだから……それを誰にも適応出来る訳じゃない」
「それは承知しています、それでも挑みたいと言われてしまったので……その代償が宝塚記念の回避という訳です」
「そこまでの価値があるかねぇ……」
まあ本気で挑みたいなら自分だって条件を付けて容認はしていただろうが……まあこれも現役時代の自分の成果と思うと本気で溜息が出てきてしまう……。
「ンで俺の力いんじゃねぇの?」
「夏合宿はカノープスと合同練習の機会を持ってください、それで十分ですので」
「OK、後で色々と詰めるとしよう。やれやれ……トレーナーってのは本当にウマ娘のスケで振り回されるもんだな」
「私の気分が少しは分かりました?」
「その分ちょいちょい俺に対して仕返ししてたじゃねぇか」
「バレましたか」
「お綺麗な面で色々言われて来たからな」
また忙しくなりそうだ、本当に多忙な仕事だな……確かにこれはトレーナーの結婚率が低いのも頷ける……いや別の意味合いでは結婚率は高いんだったな、同時に寿退社する事が多い、だからこそトレーナーは人手不足とされる事が多い訳だが……。
「まあ兎も角、今はレースに集中しようや……ウチのマヤ、舐めんなよ」
「それは此方の台詞でもありますよ、ネイチャさんとライスさんの力は貴方がよく知っていると思いますが?」
「さあどうなるでしょうねぇ……?」
「……上水流さん、お二人ってこういう雰囲気にもなれるんですか?普通に怖いんですけど……」
「まあうん……なれる、かな……」