貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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675話

「スペシャルスパイイイクッ!!!」

「甘いっ!!」

「足で拾ったデース!!さあGOデース!!」

「ATTACK!!!」

「マ~ヤレシーブ!!」

「此処でトス―――と見せかけて」

「ゴールデンスマアアアシュッ!!!」

「うああああっまさかのダイレクトぉ!!?」

 

楽しげにビーチバレーをしているメンバーを見つつもパラソルを立ててその下でのんびりとしている上ちゃんとランページ、当人としては是非とも遊ぶ為に走り回りたいが、旦那様の目が厳しいので自重中なのである。

 

「こうして砂浜でのんびりするのも乙なもんだな、これでビールでもあればなァ」

「せめて出産後にしてよね」

「わぁってるよ、スズカにサウナ云々出散々我慢させてんだ、俺が出来ねぇ道理はねぇけど……やれやれだね、この夏合宿だと酒が上手いシチュエーションだらけで生殺しだねぇ……」

「それ、俺の台詞なんだけど……」

 

肌面積こそ普通の水着より少ないが、網目上の生地で腹部を覆い隠しているだけなので彼女の身体自体は確りと見えている為か、セクシーさが出ているので上水流からしたら婚約者がワザとらしく誘っているようにしか見えない。だがここは合宿に来ているのでそんな事をしたら大問題である。色んな意味で最も悶々としてしまっているのは上水流なのかもしれない。

 

「それにしても、改めて君の教育方針って亀仙流だよね」

「言い得て妙な表現だな、確かに亀仙人のじっちゃんと同じ感じだな」

 

確りと遊ばせながらもその中には修行に向けてのあれこれが仕込んであったり、トレーニング後のあれこれには贅を凝らして労う事が出来るようにしている。よく食べ、よく学び、よく遊び、よく休息し、心も体も大きく健やかに育てる事、確かにカノープスから引き継いだあれこれを自分流にやっていたら亀仙流になっている気がしてしまうが寧ろこれが正しいとすら思っている。

 

「だってよ、競技人生よりもその先の人生の方がずっと長いんだぜ?たった僅かな数年の為だけにその後の数十年を棒に振るなんて事は俺は好ましいとは思わねぇ。太く短くって人生を否定する訳でもないけどさ、それだったらもっとこう……たとえ失敗したり未達成だとしても、何年も経った後に飲み会の席で酒でも飲みながら、あの時はやっちゃったよね~って軽口を叩きながら昔を懐かしめる、過去を思う度に悔しさと苦痛が過って情緒不安定になるより余程建設的だとアタシャ思いますが上ちゃんは如何よ」

「……なんていうか、全く以てその通りだと思うけど、凄く、安定した考え方をしてるんだなって思っちゃったよ」

「俺にしては?」

 

生涯無敗、中には狂気的と言っても過言ではないスケジュールでレースに挑み続けた暴君がするにしては酷く落ち着いているというか、酷くアベレージと安定性を重視していえると素直に思ってしまった。

 

「そんなんでいいと思ってるよ俺は、波乱万丈の人生なんて俺からしたら必要性がない只の無駄さ。俺はその無駄を体験しつつ敢てそこに飛び込んでみた、これまでの落ち込んだマイナスをプラスに化けさせる為の大博打だ。しなくてもいい筈なのにやれるところまでやってみて、満足したかっただけの大戯けだ。俺は唯……悲劇を覆い隠せるだけの喜劇を望んでただけなのかもしれないが、俺の目が黒い内はうちの奴らにそんな人生を送らせたりはしねぇ」

 

矢張りというべきか、そんな考えの根幹は彼女のこれまでの人生か……と思う、彼女ほどに波乱万丈な人生を送っているウマ娘も中々いない、比類するそれこそサンデーサイレンスぐらいだろう。だからこそ、彼女は自分の走りから得た経験を総動員してプレアデスのウマ娘達には辛くあっても楽しい思い出の方が沢山あった、此処で走っていて良かったと笑って去る事が出来る環境を準備したいと願っている。

 

「まあそれ以上の俺の輝きに集う奴らの方が圧倒的に多いんだけどな、虫かってんだ」

「そういう事言う?」

「だってそうじゃね?」

 

本当にこの暴君は……。

 

「まずは、俺が出来る限りの事をやるだけって事さ。俺が何か言われても気にしないさ、するだけ無駄って奴だし、こんなロートルウマ娘に何を期待するんだろうな」

「少なくとも外交と経済には凄い期待出来る奴だけどな」

「経済はともかく、外交はテメェらでちゃんとやれやボケって言いたいよアタシャ。最悪の場合は俺が政治家にならなきゃいけないとか何の地獄絵図だよ。その時は日本がまた大日本帝国に改名せにゃいかんくなるぞ」

「それだけはやめろ洒落にならない、そこらじゅうで万歳!!!エディションが勃発するわ」

 

と言ってもそんな事は死んでもやりたくはないのだけどね。

 

「さてと、俺も遊んで来るかね」

「あんまり激しく動いたら駄目だぞ、と言ってもこれまでの併走があるから通じ難いのがまた酷い……はぁ……」

「大丈夫大丈夫、三女神お墨付きだから」

「その女神の加護があるってなんで断言出来んの?」

「実際にあったから」

 

また適当な事を……と言いたげな顔をする上ちゃんだが、マジなんだよなぁ……と思いながらも太陽の下に出る。さて、皆の調子は如何かなと思いながらも今週の何時辺りにあれらが来るのかな、と頭の中で計算をする。今回の合宿でも惜しむことなくレジェンドを呼び寄せている。傍から見ればズルくね?と思われるかもしれないが、これでも自分の走りで得た財産だ、文句を言われる筋合いはない。

 

「ヘイローは……キングが暴走しかねんからキャンセルしたんだよな……文句言いに来ないよな」

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