「はい、という訳で今日から本格的に合宿がスタートする訳ですが、ゲストがいます。はい毎年恒例の奴ですね、それで今回は俺が呼んでもいないのに来た人がいます、まあサンデーが呼んでるからギリOKかなぁ……微妙だな、ぶっちゃけ来てほしくなかったわ」
「ちょっと何よその言い方は!?」
「お母様ぁ!!?」
翌日、改めて本格的な合宿に入ろうと思ったのだが……やっぱりいるグッバイヘイローに頭が痛くなってきたランページは色々と愚痴を零しながらもゲストの紹介をやっている訳だが……自分の母親の登場に驚いてしまうキングに申し訳なさが溢れて来る。
「はい、サンデーに愚痴かまして無理矢理ゲスト枠を確保してきたグッバイヘイローさんです。今ので分かると思いますがキングのお母さんです、ゲストと思わずに路傍の石だと思って気にしないようにして下さい」
「貴方本気で怒るわよ……!?」
「応怒ってみろやテメェ程度のそれなんてただのキレ芸程度なんじゃ此方、テメェの故郷の大統領とFBIとCIAの長官と対面した事もあんだぞこら」
「キングさん、貴方のお母様、中々に無謀な事するわね……ランページさんに真っ向から喧嘩売るなんて……」
「ああっ恥ずかしい……」
アヤベさんからの言葉に顔を隠して絶望するようにうめくキング、何で楽しみにしていた合宿で母親と顔を合わせなければいけないんだ……最悪だ、マジで最悪だ……と意気消沈していくキングをウララが背中、マヤが頭を撫でるのであった。
「という訳で、折角来て頂いた一応アメリカウマ娘のレジェンドクラスなのでこき使っていきたいと思いますので皆さん、これの事は都合の良い道具だと思って使ってあげてください」
「誰が道具よ!!?」
「テメェだよテメェ」
「本当に容赦ないなランページさん……グッバイヘイローさんと言えばG1で7勝した怪物なのに……」
「ああそれG1を20勝位した俺より凄いの?俺、凱旋門とBC勝ってるけど、アンタは?」
「ぐぬぬぬぬっ……!!!」
「ホントこの返しが出来る人が世界にどれだけいるのかしらね……」
本当にキンチェムぐらいしかランページに勝てる実績はないのではなかろうか……。
「じゃあ取り敢えず、はい」
「えっ何よこれ」
全員の分が入った袋を皆へと渡して装着させていく中で同じものをグッバイヘイローにも渡す、グッバイヘイローは一体何なのかしらと手に取ってみると、思わず目を見開きながらも力を込めてそれを持ち上げる。
「な、何よこれ……!!?」
「プレアデスとカノープス名物のシンザン鉄です。まずはこれを付けた状態で砂浜を走ります、波打ち際とそれ以外の場所を走ります」
「あ、貴方こんな時代遅れな物でトレーニングさせてるっていうの!?」
「それで結果出してるのが俺なんすわ」
因みに一人一人重さが異なっている、顕著なのがスズカでスズカの物は1.5倍程度の重さしかない。シンザン鉄は適正のあるなしによる差も激しいのでその辺りも確りと配慮されている。
「まさかキングにも!!?」
と思いながら視線を彷徨わせると黙々とシューズにシンザン鉄を打ち込んでいるキングの姿があった。そしてシューズの感覚を確かめながらもランページの方を見る。
「あら、もう重さ追加かしら?」
「おまけしといたぞ、お前は今日から5倍だ」
「ふふん、この程度一流のキングによってはお茶の子さいさいよ!!」
「キングちゃん凄~い!!」
と太鼓持ちと似たような事をしているウララだが、ウララだって3倍である。そして付け終わった奴から走ってこいという指示を受けてキングは同じく付け終わったスペやエルと共に駆け出して行くのだが……そんな様子を見たヘイローは言葉を失っていた。自分の現役時代以上に時代錯誤と言えるメニューだ、だが皆文句を言う事も無く取り組んでいく姿に喉がなった。
「キングとシンザン鉄の相性はぶっちゃけ滅茶苦茶いいぞ、あいつ根性あるからどんなメニューにもへこたれないし上手くいかなかったら徹底的にその使い方を身体に叩き込んで覚えようとする。そのお陰でマヤを除けば最速で5倍まで辿り着いてる、このままいけばデビュー時期には7倍には行けるんじゃないかな、ンでクラシック時には多分10倍に行くか行かないかぐらいかなぁ……」
因みにエルとスペはまだ4倍である。マヤを除いたプレアデスメンバーの中でシンザン鉄を一番使いこなしているのは現状タイキの7倍、ついでエアグルーヴの6倍でキングは4番手となっている。
「因みにあんたのはキングと同じ5倍な、ダメなら素直に言えよ。無理して怪我されたらこっちが困るんだわ」
「……というかなんで私もトレーニングする羽目になってるのよ?」
「だってアンタが合宿者と同じ目線で協力するわ、っていうから同じ目線に立てるように配慮したつもりなんだけど」
「……こういうつもりじゃなかったんだけど……」
「んじゃ走らなくていいから重さだけでも体感してくれ」
「流石にそうさせて貰うわ……引退してからトレーニングは体形の維持程度なのよ」
ここで無理に意地を張らずにそういう方向性に持っていくのは流石にプロとしての仕事をしているだけはあるなと感心する、これで走りだそうとするならば止めるつもりだったのだが……流石にそこまで愚劣ではないらしい。
「こいつ心配性の親馬鹿で言葉足らずのボケナスだが、伊達や酔狂でG1を7勝してる訳じゃねぇって事なんだよ」
「会長クラスだもんな7勝って」
「だから少しは尊敬の念ってものを……いややめておくわ、多分また返り討ちに合う……」
「おっ少しは学習したな」