「……本当によくやりましたね、私は貴方の事を誇りに思いますよ」
「お婆様にそう言って頂けると素直に照れますね」
先日の秋華賞で見事に三冠を達成、無敗でのトリプルティアラとなったランページ。当然その事をアサマは我が事のように喜んでくれた、そしてその翌日にはランページはメジロ家の邸宅へと戻っていた。名目上は次のエリザベス女王杯に向けての調整と休養、実際それが目的ではあるが本当の所は蟻のように群がって来る記者から逃げる為でもある。
「ラモーヌも喜んでいましたよ、あの子の喜びようは凄い物でした」
「ちゃん先輩らしいな……」
史上二人目のトリプルティアラが同じメジロ家、そして自分の同室なのだから嬉しいのも当然だろう。
「さて、次はエリザベス女王杯ですか……其方も厳しいレースになるでしょうね」
「でしょうね。でも走りますよ、モンスニーさんに教えて貰った走りで」
「その意気だ」
そう答えると扉が開けられてモンスニーが入って来た、その手には書類が抱えられておりそれをアサマの机の上へと置いた。
「あの時の走りは悪くはなかった、だがお前ならもっと高められる。精進しろ」
「分かりました……それでそれは?」
「お前宛てに来ている取材、TV出演、雑誌取材etc……それらの書類だ」
「ラモーヌの時よりも多いようですね」
「まあ無敗ですからね、当然でしょう」
思わず呆然としているランページに比べて、アサマとモンスニーは大して驚いてはいなかった。ラモーヌの時も似たような事があったからだろう。
「流石に全てを断る訳には行きません、私の方で選んでおきますから貴方はそれに応じなさい」
「わ、分かりました……でも、凄い数ですね……」
「本来はこんな物ではないんだがな、トレセン学園に居たらこの数十倍の量になっていただろうな」
実際問題、トレセン学園の電話は鳴りっぱなしになっていてその殆どがランページに対する取材の申し込みでパンク寸前となっている。南坂の携帯も同じような状態になっているらしい、そしてそれをメジロ家がフィルターとなって選別を行ってこの数に収まっている。
「中には悪質な会社や記者も混じっていますからね、それらを大事な孫に会わせる訳には行きません。それらの選別は私とモンスニーでやっておきますから貴方は身体を休めておきなさい、南坂トレーナーとは話を付けてありますから」
「そういう事だ、無敗の三冠」
半ば、放り出されるかのようにアサマの部屋から追い出されてしまったランページ。まあ取材の方は任せるしかないだろう……やらなければならない取材ならば喜んで引き受けるが……そう思いながらも久しぶりにメジロ家の自分の部屋へと入った。絶対になれる気がしなかった筈の広くて豪華な部屋で何時の間にかリラックス出来るようになっているのだから驚きである。
「後はエリ女だな……」
自分にとっては三冠は通過点、本当の意味でのトリプルティアラ、牝馬三冠を達成する為にはエリザベス女王杯を取らなければならない。まあこの世界では違うのだろうが……史実では秋華賞はまだなかった、なのでエリザベス女王杯がその秋華賞の立ち位置だった。故に、本当の意味でラモーヌを超えたという看板を得るにはそれがいる。
「まあ、時間はあるんだからじっくりと休ませて貰おうじゃないの……」
そう思いながらも最近やって無かったツイッターの更新でもしようかな、とアプリを起動させようとしたら扉がノックされた。どうぞ、と入室を許可すると入ってきたのは大きな花束を抱えたライアンだった。
「ラン、トリプルティアラおめでとう~!!これプレゼント!!」
「こりゃまた立派な物を持って来たなぁ……何処で見つけたんだ青い薔薇なんて」
「えへへっメジロ家お抱えのお花屋さんで」
「もう何でもありかメジロ家」
兎も角それを受け取るのだが、後ろに控えていた執事さんが花瓶を持って来てくれていたのでそれに飾る事にした。確か青い薔薇の花言葉は神の祝福、奇跡、そして夢は叶う。きっとそれに合わせて持って来てくれたのだろう。
「んじゃ、来週は俺が青い薔薇を送らせて貰おうかな?」
「気が早いよ~、まだ勝ったって決まった訳じゃないんだから……菊花賞は今までの中で一番のレースになると思うし」
「だろうな……すげぇ面子だからな」
ライアンは当然としてマックイーンも出て来る、その他にも有力なウマ娘が多く揃う。そして全員がライアンの三冠達成を阻みに掛かる、強いて違う点を探すのであればライアンは無敗ではないので自分ほどのハードルはない……と言いたい所だが、マックイーンが出るのでその辺りは何とも言えない。
「パーマーが出なくて良かったな、メジロが三人揃い踏みじゃ誰を応援したらいいのか分からねぇよ」
「言えてる~でもパーマーはステイヤーズステークスに出るって言ってたよ」
「3600を逃げ切れるか試す気かあいつ……マジで逃げ切れたらもうある意味俺以上の逃げウマ娘だぞ」
それについては異論はないとライアンも頷く。
「んで、お前は菊花賞で勝つ自信はあるのか?」
「それは……う~ん……一応トレーナーさんに菊花賞に向けてのトレーニングメニューを組んで貰って満点は貰えてるけど……マックイーン相手に何処まで戦えるかは分からない」
万全の準備を進めている、その筈なのに勝利を勝ち取れるという絶対的なビジョンを浮かべる事が出来ずにいるライアン。長距離という舞台において恐らくメジロ家に置いては最強と言ってもいいウマ娘が相手、そういう気持ちになるのも当然だろう。
「お前の走りをすればいいと思うよ、俺だってそれで勝てたわけだしな」
「まあそうだね、うん取り敢えず頑張るよ。全力で」
言葉を掛けられて直ぐに立ち直った、というよりも最初からそう思っていたのか笑顔になるライアン。菊花賞にはアサマも応援に駆け付ける、そして勿論自分も行くつもりでいる。どんな結果になろうとも、全力で自分らしく走るだけだと既に決めているライアンの走りを……その力を信じるつもりでいる。ライアンの強さを自分は知っている、それを信じるだけ。
「あっそう言えばさ、秋華賞での走りがモンスニーさんに教えて貰った奴なんでしょ、あれ凄くない!?」
「いやぁでもあれモノにするのマジできつかった、というかまだ俺も完璧に修得した訳じゃないし」
メジロランページの固有スキル。
デバフを一回以上受けるとレース終盤に発動。受けた分のステータスを回復しつつ加速、相手に受けた分のデバフを与える。デバフを受ければ受ける程に効果は上昇する。
アプリ的に表現するとこんな感じ。チャンミとかで見るデバフ構成ウマ娘に対するカウンター型で育成しようとすると固有が腐りやすいタイプのウマ娘で難易度は高め。