「だから、此処では力は抜きつつも姿勢の維持に注力した方が……」
「違うわよ維持したままで荷重移動だけで此処はスイッチしていく方が効率的なのよ!!」
「それは足に負担が掛かり過ぎるのよ!!」
「何のためのシンザン鉄だと思ってるのよお母様は頭が固すぎるのよ!!」
「なんですって!!?」
「文句あるなら自分の身体で試してみればいいじゃないそっちの方が早いわよ!!」
「良いじゃないやってやろうじゃない!!!」
「筋肉痛だったのでは……?」
キングの指導を任せたのは良いのだが、結局のところ自分の理論とのぶつかり合いになっているキングとグッバイヘイロー、その果てにはキングの理論を自分の身体で試してどちらが正しいのかを決めるという事になっているという珍事が起きている。いやキングがそれをやるべきなのではないだろうか……。
「良いのかキング」
「良いのよこれで、それに既に筋肉痛のお母様がベストの走りが既にできないわ。これなら筋肉痛やらはさらに悪化するでしょうし明日には静かになってるわ、これ以上の他のメンバーに迷惑を掛けられないわ」
「アンタ仮にも自分の母親相手に……」
「自分の母親相手だから黙らせたいと思っただけよ」
「よ、容赦ねぇ……」
下手に娘との関係が悪いとこんな事になりかねないのか……未来の自分は基本娘たちの関係が良好らしいことは分かっているが、親馬鹿にならない程度には本当に仲良くしておかなければと改めて思うのであった。
「さてと、エアエアとマヤはっと……」
手帳にトレーニングの進行状況を書き込んでいきながら各所を巡っていくのだが、お次はクラシック以上組でもあるマヤやエアグルーヴのチーム、今担当しているのがリンクスなのだが……
「ふ~ん……うん、いい感じだね」
「あ、有難う………御座い、ます……」
「ゼェゼェゼェゼェゼェッ……」
「流石にキッツいなぁ」
「の割に一番元気そうなんですがそれは」
息も絶え絶えながらも感謝の言葉を口にするエアグルーヴ、もう完全に息が上がってしまっているマヤ、そして一番元気そうなステゴという取り合わせ、というかお前はなんでここに混ざってんだと言いたくなってきた。
「どうだリンクス」
「いい教え方してるよ、マヤちゃんは欧州の芝にもすぐに適応して100%で走れちゃうと思う。エアちゃんだっけ、流石ダブルティアラだって言えるよ、これなら秋華賞は問題ない」
「だとさ」
ランページの現役時代のライバルの一人から高評価を貰えて嬉しい事は嬉しいのだが……言葉を返す事が出来ない。何故ならばリンクスは一切の容赦する事もなく、トップスピードを維持し続けて砂浜を爆走してみせた、しかもシンザン鉄の10倍を装備して。マヤは負けられないとそのスピードに挑みかかったが……スピードの質が違うのか、重さなどを感じていないと言わんばかりの無重力染みた走りでマヤをぶっちぎってしまった。それでも2バ身程度に収めたのはマヤの意地だったのだろう。
そんな相手にエアグルーヴも食い下がったが、流石にクラシッククラスでは辛いのか6バ身差。だが、ステゴは5バ身差を維持した上でまだまだ元気だと言わんばかり。流石身体の丈夫さだとプレアデスでも有数と言っても差し支えない。
「ステイゴールドだっけ、クラシックだとこっちで走らない?」
「話だけにしとく、そっちの旅はシニアにしとくつもりだから」
「そっか~たぶん君は欧州の芝向きだと思ったから」
「そんなにか」
「うん、一番踏み抜く力が強かったからね。というか、ランページと同じ事やってる。芝だったらその気になれば芝を踏み抜いて地面を捉えて走る的な事が出来る」
ステイゴールドの走りは軽快で体力を温存するマヤとも違う、極めて力強くスタミナに溢れている走りである為に海外適性が高いとリンクスが太鼓判を押す。
「やっぱりお前タフなんだな」
「何っ」
「偶にそれネットに見るけどなんなん?」
「ぶっちゃけ知らん」
「知らんのかい」
「日本ってミームに溢れてるね~」
「流石アームストロングがキレる国だよな」
そんな事を宣いながらもステゴは準備体操で身体を解していると再びリンクスと共に駆け出して行く。そんな背中を見送りながらもエアエアとマヤにはちゃんと休むように伝えながらも一旦砂浜から上へと上がって全体を見渡す。
「さてと、次は……」
「私の相手をして頂けると嬉しいのだがね」
振り向くとそこには不敵な笑みを称えているウマ娘がいた、唯のウマ娘なら放置するのだが……その顔は知っている、グッバイヘイローが寄こしてきた資料の中にあった。彼女が呼ぶことが出来た海外ウマ娘……間違いない、その人だ。
「かの名高い暴君とこうして相まみえる事が出来た、グッバイヘイローの誘いというのも存外馬鹿にならない。矢張り美女の誘いには乗ってみる物だな」
「何カッコつけてんの?全然付けられてないけど」
「……そういう言葉を平然というの酷くない?」
呆れたような酷いと言いたげな顔をして来る姿に妙な可愛さと愛嬌を感じる。妙な親しみやすさに包まれている。
「まあよく来てくれたな、メジロランページだ。独裁暴君でもご自由にどうぞ」
「歓迎はしてくれるようで少しは安心したよ……キングマンボだ、まさか来て早々に出鼻をくじかれるとは予想しなかったけどね」
「慣れてくれこれが俺だ」
「噂に違わぬ自由っぷりだ……」