メジロ家によるダブル三冠というのは途轍もない衝撃を与えた、報道各社は先週のランページのトリプルティアラと共にライアンのクラシック三冠を大きく報道。TVを付ければニュースはこぞってこれを報道する事態にもなっていた。同レースの実況担当を行っていた赤坂 美聡のコメントから取ってメジロ黄金時代が大きな見出しとなった。
「……凄い事になったな」
「ホ、ホントだね……」
メジロの邸宅にいるランページとライアンだが、窓の外、敷地の外には多くの報道関係者の車やらが詰めかけており外に出るのも中に帰って来るのにも一苦労な状況が出来上がっていた。流石に迷惑なので好い加減にアサマが警察に連絡するらしいが……そんな事を言っていたらサイレンが聞こえて来た。
「まあ確かに、俺はダブル三冠取ろうぜとは言ったよ。だけど此処までなるとはあの時は思ってなかったわ」
「完全に勢いで言ってたもんねあの時」
「それに乗ったアンタも同罪だからね?」
「うんまあ……取っちゃったし」
そんな話をしていると扉がノックされてそこから執事がやって入って来て頭を下げる。
「失礼いたします。ランページお嬢様、ライアンお嬢様、大奥様がお呼びで御座います」
「あ~……うん分かった、慣れねぇなぁお嬢様呼び……」
「慣れる努力はしといた方が良いよ?その内にメジロ家のウマ娘としてのあれこれ始まるだろうし」
「ハァッ……一般家庭出なんだけどなぁ……」
一先ずアサマの下へと向かうことにした二人、到着した先ではアサマがしみじみとしながらも笑みを浮かべながら自分達を待っていた。
「ライアン、三冠達成……本当によくやりましたね、メジロ家初の快挙、そしてトゥインクルシリーズにおいての最大の快挙をよくぞ成し遂げてくれました……フフフッなんて言葉を掛けるのが相応しいのか、分からなくなってしまうわね」
余りの偉業に流石のアサマですら言葉が見当たらない、命題ともされている天皇賞連覇は言うなれば実力を持ったウマ娘ならば一人でもやる事は出来る、だがトリプルティアラとクラシック三冠を同時に獲得するなんて普通ならば絶対にあり得ないような事。奇跡に等しい事を達成した瞬間に居合わせる事が出来た事をアサマは心から光栄だと感じている。
「あ、あのお婆様そう言われても……アタシは唯、一緒に三冠取ろうってランと約束した事を守っただけで……それにアタシが菊花賞で勝てたというかレースに出れた事自体がランのお陰なんですよ」
「出れた事、がですか」
「ああそうだった、ライアンお前お婆様が来るからってガクブルだったもんな」
「だから何でそれを言うの!?」
「だってマジだし」
「ああもうそういう所は本当に変わってないんだからぁ!!」
以前のランページもこういう所で本当の事を言ってしまう天然系キャラだったんなぁ……と思うラン、尚、今の場合はワザと本当の事を言ったに過ぎないので天然のそれとは大分タイプが異なる。
「では、私がプレッシャーを掛けてしまいましたか……ライアン、それは申し訳ありませんでした。素直に応援したかったのですが……」
「あっえっと、気、気にしないでください!!ほら、学校行事でお父さんお母さんが来ると緊張しちゃうタイプのあれですから!!ねえラン!!」
「それを父さんと母さん死んだ俺に聞いちゃうなんてライアンってばマジ鬼畜」
「誤解だってぇ!!」
顔を赤くしたと思ったら今度は青くしながらも必死に弁解しようとするライアンとそれを分かっていて軽く凹んで涙ぐむ演技をするランページ、恐らくこれが二人の本当の距離感であろう物を見たアサマは心から微笑ましそうな笑みを浮かべつつも最高に美味しい紅茶を飲むのであった。
「ライアン、次走は如何するのですか?」
「えっと……まだ決めてなかったんですけどトレーナーさんから有馬記念を目指さないかって言われてまして」
「へっ~いいじゃん、俺でないけど」
「えっラン出ないの!?」
てっきり出るとばかりと思っていたライアンは大きな声を上げてしまった、正確に言えばまだ計画として組み込んでいないのが正しい。
「現状だとジャパンに向けての調整で南ちゃんが手一杯なんだよ、俺としては出る事を念頭においても問題はないと思うんだけど……肝心の南ちゃんが乗り気じゃねえからなぁ……」
「そうなの?」
「エリ女からのジャパンカップもかなり渋ってた位だからな、マイルチャンピオンシップを目指さないだけ有難いって言ってたし」
「もはや去年のオグリ先輩のローテだよそれ」
天皇賞(秋)からマイルチャンピオンシップ、そしてジャパンカップ……こんなローテションなのに2着、1着、2着というとんでもない成績を叩きだしているオグリキャップ。改めて考えるとこの成績は怪物と言われるのも納得である。
「私としてもそのローテーションでは不安はありますが……エリザベス女王杯終了後はメジロ家の療養所で数日間確りと休みなさい。既に南坂トレーナーには連絡してあります」
「分かりました、取り敢えず有馬云々はジャパンカップが終わってからだなぁ……」
個人的には出てみても悪くはないと思っている、クラシックとティアラの三冠が激突するというのも中々面白そうではある。まあこの時の有馬はオグリのトゥインクルシリーズ引退レースなので強いオグリに蹂躙される気しかしないのだが……。
「ジャパンカップか……そっちは大丈夫なの?」
「今やってるところだ、新しいシンザン鉄でメニューもこなしてる」
「シンザン鉄って……あのシンザン鉄だよね、しかも随分前からやってるらしいけど今何倍なの?」
筋トレが趣味と言っても過言ではないライアンも当然シンザン鉄の事は知っている、トレーナーにも相談して近いうちに導入しようかという話し合いをしているのだが……肝心のランはどれ程の重さでそれを使っているのだろうか……。
「今が……7倍だったかな」
「7倍って……それで走れるの?」
「少しずつ慣らしてるところだよ、幾ら俺でもいきなり走れる訳ないだろ。今までだって4倍から少しずつ上げて行ってるんだから」
「いや倍率を少しずつ上げてるは信用無いよ」
それを聞いてアサマは眉間を揉みほぐし始めた、話には聞いていたがまさか孫がそこまでの事をやっているとは思いもしなかった。だが今此処で話をしない訳には行かないので咳払いをした。
「ランページ、実はあなたに紹介したい人がいるのです」
「俺に、ですか?」
「これから貴方はシニアのウマ娘と鎬を削る事となります、何よりジャパンカップでは海外のウマ娘と対決する事になる。その為には一度、日本のレベルの高さを知っておく必要があります―――日本のウマ娘の最高峰を」
「それってお婆様……!?」
ライアンが驚愕するとアサマは笑いながら言った。
「その方と走ってみると良いでしょう、きっといい経験になるですよ」
そんな風に笑うアサマの手元には資料があった、そこに映されているのは―――とある二人のウマ娘だった。
史実の馬の性格を取り入れるのはあり?
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あり、見てみたい。
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無し、見たくない。
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寧ろ逆を見てみたい。
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どっちも見たい。
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興味なし。