貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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75話

また負けて、次も負けた、今度も負けて、その次も負ける。負けて負けて負けて、負け続けの経験ばかりが積み上がっていく。

 

「マルゼンスキーさん、もう一回お願いします!!」

「んもう元気いっぱいちゃんなんだから、いいわとことん付き合ってあげるからついてらっしゃい!!」

 

暴風にも等しい空気が身体の周りを駆け抜けていく、その風から逃れるようにマルゼンスキーの背後に付いて追い回す事は出来る―――だがそれはあくまでマルゼンスキーに勝つ為の走りであってこれから先のレースで勝つ為の走りではなくなってしまう。

 

「スリップストリームに頼る、そんなので勝ったって意味がねえんだよ!!」

 

圧倒的に格上の相手(マルゼンスキー)にスリップストリームを使っては意味がない、今度は自分が彼女のように走らなければならない。だったら今の自分はこれから走るレースでの対戦相手となる訳だ、それと同じ勝ち方をするのか、いや違う、これを、今の自分すら振り切るように走る、それしかない。

 

「俺は、俺は……メジロランページだ!!」

 

 

「やるわねぇ!!」

 

コースを疾走するマルゼンスキー、そして追走するランページを見つめるカツラギエース。この話を受けた時に思った事はメジロのお婆様は孫に甘い、と思った。だが違う、本質はまだまだ格上がいるから調子に乗ってはいけないと孫を諫める為。厳しくも優しさに溢れた鞭として自分達を振るっている。

 

「だが驚いたもんだ……徐々にだがマルゼンスキーに喰らい付ける時間が伸びてきている」

 

トリプルティアラと言われているランページだが、まだまだ彼女は原石のままだ。研磨が途中までしか終わっていない宝石、勝負の中やトレーニングという時間の中でウマ娘はその実力を高める事で輝きを増して行く。だが彼女にはまだまだ足りていない、絶対的なライバルがいない。天敵や負けるかもしれないという相手は存在するが、勝敗を本当の意味で奪い合えるような相手と走れていないからこそ磨ききれていない部分がある。

 

「渡り合える相手はいる、だが絶対的なライバルがいない。それ故の無敗……ウマ娘にとっての幸運、だがそれは同時に不幸でもある……だからこそ、私達が今こうしている訳だがな……マルゼンスキー!!そろそろ本気を出してやれ、本気で磨きに掛かるぞ!!」

「モチのロンよ!!ランページちゃん、あたしを捕まえられるかしら?」

「やってやる、やってやりますよ!!」

 

 

「失礼する……おっと、済まない会議中だったか?」

「失礼しま~す」

 

トレセン学園のカノープスの部室、そこへと訪れたのはルドルフとシービーだった。やって来た二人の三冠ウマ娘に何事かと思わず声が上がる。

 

「ランページはいるかな?」

「え、えっとお姉様ですか?ううん来てません」

「ランページさんはまだメジロ家の方に行ってますね、私の方にも少しの間休ませてあげて欲しいという連絡が来ましたので其方に確認して頂くの早いかと」

「そうか……ではライアンに確認がてら連絡を取ってもらうしかないな」

「何々、ランに何か用なのか?」

 

ターボが尋ねるとシービーが答える。

 

「ほら、ランとライアンでダブル三冠が達成出来ちゃったじゃん?そこでドリームトロフィーで戦うアタシとルドルフとの対談イベントをやりたいって話が来たんだよね。その話をしに来たんだけど……取り敢えず引き上げかな」

「成程……確かにその対談は見たいですね」

「それ故か、トレセン学園にはその連絡が多くてね……一先ず此方で話をしてみるから少し待ってくれと言わなければずっと連絡が来て続けてしまうよ」

 

矢張り一つの家が三冠を完全な独占というのは凄まじいインパクトがあったのだろう。それを他の三冠と一緒にイベントをさせたいというのも分からなくもない、トレセン学園としても興味があるし、何より常に鳴り響いてくる電話の音に参って来たのもあるだろう。

 

「では私達はライアンの側に行くとするよ、先ずは彼女のトレーナーかな」

 

そんな話をしていると扉がノックされた、またカノープスに来客だろうか。今日はまたお客さんが多い日だなぁと思っていると扉が開けられた。

 

「済まんがカノープスの部室は此処で……っとまさかの対面だな」

「あっ~エースじゃん!!如何したの!!?」

「それは此方の台詞だ、スピカとリギルのお前らが何で此処に」

「カ、カ、カ……カツラギエースさんだぁ!!?」

 

思わずチケットが大声を上げてしまった。シービーの最高のライバルとも呼ばれたウマ娘の登場に思わず興奮を抑えきれなくなってしまう、それと同時に思わず南坂も驚いた顔を浮かべた。そんな彼を見ながらカツラギエースは笑った。

 

「久しぶりだな南坂トレーナー、相変わらずの優男っぷりだ」

「いきなりそれですか……お久しぶりですね、それで如何してウチに?」

「ああ。今、メジロ家保有のレース場でランページを鍛え上げている身としては顔を出しておいた方がいいと思ってな」

「ええっ!?エースが鍛えてるの!!?」

「教導は私で直接的な相手は別だがな……」

 

それでも十分とんでもない話だ、ジャパンカップを征した初めての日本ウマ娘。その身で世界の力を体験し、その舞台でルドルフとシービーを同時に下した正しく日本が誇るエースプレイヤー。それに鍛えられるとなると、益々ランページの戦闘能力が加速度的に上昇していく事になる。

 

「それで偶にこっちにも顔を出す事になると思う、南坂トレーナーさえ良ければ私が皆のトレーニングを見るのを手伝おうと思ってな。彼女だけを見るというのも不公平だろう?」

「それは―――」

「願っても無い事です」

 

南坂が応える前に、イクノが声を上げた。

 

「私はランページさんに勝ちたい、いえライバルになりたいんです。その為にシンザン鉄を導入して鍛えていますがそれだけではきっと足りません、お願いします」

「……そうか、君がイクノディクタスだな。成程……良いだろう、時間が合えば君だけとは言わずに全員を鍛えてやる。ルドルフ、ついでにリギルにもそう伝えてくれ。お前を破ったエースが来たとな」

「おハナさんもきっと喜ぶだろう、是非頼むよ―――それと如何だこれから、折角あの時のジャパンカップの三人が揃ったんだ」

「走るって事だね?」

「面白い、良いだろう―――あの時同様、お前達を叩き潰してやろう。まあその前に理事長に挨拶をさせてくれ」

「それじゃあ早く速く!!挨拶早く終わらせて走ろう~!!!」

「分かった、分かったから押すなシービー!!?南坂トレーナー、11月に入ったらランページは学園に来る!!それを今の内に伝えておくからな!!」

 

慌ただしく出て行くカツラギエース達を見送ったカノープス、正しく嵐のような出来事が巻き起こった瞬間だった。

 

「も、もう驚きすぎて声でなかった……」

「わ、私も……」

「ターボは凄いワクワクする!!だってあのカツラギエースだよ!?ターボでも知ってるようなウマ娘だもん!!」

「お姉様、そんな人に教わってるんだ……」

「武者震いが止まりませんね……!!」

「やれやれ……これはまた、メニューの修正が必要かもしれませんね」

 

そう言いながらも南坂は何処か抑えきれない嬉しさが笑顔となって漏れ出ていた。

史実の馬の性格を取り入れるのはあり?

  • あり、見てみたい。
  • 無し、見たくない。
  • 寧ろ逆を見てみたい。
  • どっちも見たい。
  • 興味なし。
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