貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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81話

「今回、ランページさんは良い所まで行けるのかな」

「大丈夫!!だってランだよ、国際徒競走だって目じゃないよ!!」

 

何処か不安げなタンホイザの声にターボが勢い良く答えた。

 

「徒がいらんって……まあ実際問題、掲示板には入れれば大金星……っていうのがテレビでも言われてたもんね」

「なんか感じ悪かったですよね、何で先輩応援しないんですかね」

 

TVでも新聞でも、ランページに対する風当たりは強い傾向にある。確かに無敗の三冠ウマ娘、ルドルフに続いて二人目なのだから日本からすれば喜ばしい。だが無敗の三冠ウマ娘であったルドルフの無敗神話はジャパンカップで消える事になった、しかもランページと同じく中1週の強行軍だった。此処まで同じとなるとランページが敗北すると考えるものは多い。偉大なる先人は此処で消えた、故に今回も……それ程までに海外ウマ娘は強い上にランページには経験が足りなすぎると考えるものが多い。

 

「だ、大丈夫ですよ。お姉様は勝ちます」

 

だがそんな中でもカノープスの面々の気持ちはライスと同じ、ランページの勝利を信じている。きっとやってくれる筈だと、そんな思いのままゲート入りを待つ。そしてそれは南坂トレーナーも同じ……ではなく、全くの平常心、何も変わらぬ表情を作っていた。

 

「経験が足りないですか……フフフッこれまでに13戦、それらの経験で少ないというのならばルドルフさんを貶めている事に気付けていないのですから、日本のマスコミは大した事ないんですよね」

「トレーナーさん、何か言った?」

「いいえ別に、さあライスも大きな声でランページさんを応援しましょう」

「う、うん……お姉様~頑張って~!!」

 

ファンファーレが鳴り響き、遂にゲートインの時がやって来た。次々とゲートインしていく皆を見ながらもランページもいよいよそこへと足を踏み入れる、2枠2番……中々に良い場所を引けたものだ。

 

『世界のウマ娘が栄光を求めジャパンカップの府中に集う、日本勢は対抗出来るのか!?』

 

昨年のジャパンカップは途轍もなかった、2分22秒2というワールドレコードが誕生したのだから。ジャパンカップでシンボリルドルフが勝利して以来、日本馬は再び外国馬に勝てなくなっていた。だが今年こそ、今年こそは再び!!それを願うファンは数知れず、さあジャパンカップ、いよいよ出走の時を迎える。この中では最も期待されない日本ウマ娘、ランページもその時を待ち続けるが……この状況は自分にとっては最高の状態だった。

 

『ランページさん、初めてとも言えるこの人気ですがどう思いますか?』

『最高だな。全部引っ繰り返してやるよ』

『それは頼もしいですね、今回の作戦ですが―――最初から全開で行きましょう』

『あいよ』

 

『さあ!!ジャパンカップが今―――スタートしました!!各ウマ娘綺麗なスタートを切りましたが、おっと此処で真っ先に飛び出したウマ娘がいるぞ!!いきなり行ったぞ我らが暴君、ターフの独裁者、メジロランページがいきなり先頭を奪って行ったぁ!!正面スタンド前の歓声を独占しながらも疾走していきます!!』

 

互いがけん制し合っている隙を突いていきなり飛び出したランページ。オグリとヤエノはやっぱりそうするよね、と言わんばかりにマイペースに自分の走りをするが、海外ウマ娘達は正しく仰天と言いたげに困惑していた。国際競争であんな大逃げを打って大丈夫なのか、それとも緊張で掛かっているのか?あれならば確実に持たずに潰れるな、誰もがランページを無視してエルグッツにベストルーティン、そしてオグリとヤエノに目を向ける。

 

『オグリキャップは中団のこの位置に付けました!!その背後にはゴーストフリーズ、ヤエノムテキが続きます。そして前には1番人気のエルグッツと2番人気のベストルーティンが行きますが、その先を4~5バ身のリードを付けるのは独裁者メジロランページ!!だがこのペースは余りにも速過ぎないか!?大丈夫なのか、最後まで走り切れるのか!!?』

 

最早ランページの走りは自らの破滅を完全に顧みない玉砕戦法にしか見えない、それ程までに超ハイペース。アイネスフウジンのそれを思わせるが、それよりももっとペースを上げている。

 

『なんだ、なんなんだこのスピードは!?半分を既に過ぎるのに、まだ行けるというのか!!?』

『冗談がキツイわ!!何であれで持つのよ!?』

 

ワンツートップ人気が驚愕する、最早常人には理解出来ない狂気の逃げ戦法、このレースに自分の全てを賭けていると言わんばかりの激走に海外勢に動揺が走る。次のレースなんて如何でもいいと言わんばかりのそれ、だがそれに逆に火を付けられたのが居た。そう、オグリキャップとヤエノムテキだ。

 

「ラン、そこまでやるなら私だって答えなければ先輩としての面目が立たないな!!」

「日本の底力を、見せ付けてやりましょう!!」

 

『オグリキャップとヤエノムテキも上がってきた!!さあ間もなく直線だ、府中の心臓破りの坂と長い直線へと駆けて行く!!依然先頭はメジロランページ、なんという大番狂わせだ!!メジロランページが先頭のまま、直線へと入ったぁぁぁ!!』

 

よくぞ自分を侮ってくれた、9番人気だから相手にする価値がない?そんな甘い認識をした結果がこれだ、さあ世界よ見るが良い、これがターフの独裁者だ、俺を観ろ、俺を感じろ!!

 

『調子に、乗るなぁぁぁぁ!!!』

『負けるかぁぁぁあ!!!』

 

『ベストルーティンとエルグッツも上がってきた!!オグリキャップとヤエノムテキを追走する!!全員がメジロランページを捉えられるか!!?そして心臓破りの坂へと入った!!だがメジロランページは依然先頭!このまま逃げ切れるのか、逃げ切ってしまうのか!!?いやベストルーティンが迫る!!!抜きに掛かるぅ!!!』

 

半バ身差の所まで迫って来たベストルーティン、その後方にはエルグッツが居る。その直ぐ後ろにはオグリとヤエノ、自分達の心の隙を突いたつもりだろうが……これ以上好き勝手にやらせるか!!と迫って来る。

 

『私は勝つ為にこの国に来たんだ!!お前の様な格下に負けてる事はあり得ない!!』

「格下ぁ?」

 

同時にベストルーティンから全力の圧力が圧し掛かって来た。全身の動きを縛り、ギリギリと締めあげる鎖の様な凄まじいプレッシャー、これを受けたら普通のウマ娘ながら硬直して一気に順位を落とすだろう。だが―――それを待っていたんだよ、自分に誇りを持っているのならば心の隙を突かれたならばこうしてくると思っていた。圧力を掛けられる状況であればある程に、自分は活きる。

 

「だったらよく味わって国に帰るんだな、日本ではな―――ジャイアントキリングって奴は大人気のド定番なんだよ!!!」

 

亡き魂よ、共に暴れよう。

 

受けたそれらをベストルーティンへと返しながらも、自分の中にあるすべての力を開放しながらも一気に地面を蹴る。モンスニーから受け継いだ走法、マルゼンスキーから貰った勝利への心、カツラギエースから教導された技術をこの瞬間に全て出し切る!!迫り来るベストルーティンのそれを振り切りながらもランページは飛び出して行く。

 

『メジロランページが飛び出した!!1バ身から2バ身とベストルーティンを突き放しに掛かる!!後方からはオグリキャップが上がってきた!!だがエルグッツも負けていないぞ!!ヤエノムテキも迫るがベストルーティンを抜けるのか!!』

 

『くそ!!一番警戒するのは暴君だったのか!!何が何もしてないだ、大問題児じゃないか!!』

「何を言っているか分からないが―――ランを舐めたお前達の失敗だ!!」

「Oguri Cap!?SHIT!!」

 

『さあオグリが行くオグリがエルグッツを抜けるか、そしてメジロランページは完全に先頭だ!!何という事でしょうか、シンボリルドルフがジャパンカップに勝利してから勝てなかった日本の夢、海外からの挑戦を打ち砕いたのは奇しくも同じく無敗の三冠ウマ娘、メジロランページが夢を勝ち取り守り切ったぁぁぁぁぁ!!!!勝ったのはメジロランページ!!何という事でしょうか、クラシッククラスでジャパンカップを征しましたぁ!!!2着にはエルグッツ、3着にはオグリキャップ、4着にはヤエノムテキ!!日本のウマ娘達が意地を見せましたぁぁぁ!!!!』

 

勝利したのはメジロランページ、掲示板に入りさえすれば大金星だという前評判を完全に引っ繰り返しての堂々の逃げ切り勝ち。海外の並み居る強豪を跳ね除けての勝利を勝ち取ったランページはゆっくりと止まりながらも荒い息を整えた。羽織っていたコートに手を掛け少しだけスピン、勢いよくコートを脱ぎ捨て叫びをあげた。

 

「―――シャアアアアアアアアアアオラァ!!!」

 

心、いや魂からの雄叫びを上げたランページに大歓声と大きな拍手が捧げられた。それこそ独裁者への貢ぎ物、日本で独裁者と呼ばれたウマ娘が海外から日本の誇りを取り戻した瞬間だった。そんな自分にオグリが拍手を送りながら近づいて来た。

 

「凄かったぞラン、私もつられて凄い気合が入った」

「いやいやいや元々オグリさんは凄かったじゃないですか」

「いや、きっと此処まで頑張れたのはランが温泉に連れて行ってくれたりしたからだと思う……うん、有難う」

「よしてください、頬っぺたが赤くならぁ」

「もうなってるぞ」

 

同時に、観客がどよめきに満ちた声を上げた。何事かと思ったら直ぐに実況がその正体を明かしてくれた。

 

『な、なんという事でしょうか!!?レ、レコ、レコードです!!2:22:0!!なんと、前年のホーリックスが叩きだした2:22:2を上回りましたぁ!!!レースレコードやコースレコードどころではありません、文句なしのワールドレコード!!ワールドレコードを更新したぞメジロランページィ!!!日本から世界の歴史へと名を刻み込みましたぁぁぁ!!!』

 

「ワ、ワールド……レコード?」

 

その言葉に思わずランページは簡単オグリのように簡単ランページになってしまった。余りの出来事に処理が追い付かずに呆然としてしまった。そんな事など露知らずに目の前のオグリはおおっ凄いぞラン、とパチパチと純粋にお祝いの気持ちを込めて拍手を送る。

 

「凄いですよランページさん!!まさかワールドレコードとは……!!おめでとうございます!!」

「アッハイ、エット……喜んで、良いんです、よね?」

「良いと思うぞ、おめでたい事だぞ」

 

先輩二人に祝福された漸く再起動したランページはコース場全体から響いてくるランページコール、それに身体を震わせながらも次第に喜びが沸き上がって来たのか―――拳を突き上げながらも喜びの声を上げた。

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