「改めて、ジャパンカップ制覇おめでとう。私以来の制覇が君のワールドレコードだったのは正直なところ予想を超えていたよ」
「ハハッ皇帝様の予想も外れる事があるとは、俺にもトリックスターの素質があったって事ですかね」
「んもうランページちゃん、ルドルフをあんまり虐めないの」
「あ~いちゃん先輩」
療養所での療養もそこそこに終わらせ、トレセン学園へと復帰したランページ。居続けるのも身体に良くないので学園で過ごしつつ、休日などは療養所で確りと身体を休めるという事に変更できる程度には回復した証でもあるので南坂はまたトレセン学園で姿を見られる事に笑みを浮かべる。そんな彼女は生徒会から呼び出しを受けた、何かをした記憶はないが、訪ねてみるとそこには会長のルドルフと副会長のラモーヌが自分を待ち受けていた。
「君に期待してなかったという訳ではなかったんだ、唯メジロの療養所から戻って来たオグリキャップの仕上がりがかなり良かったのでね、彼女の方が取るんじゃないかと思っていたんだ」
「あ~……確かに、オグリさんスゲェ楽しんでたからな。六平トレーナーも良いリフレッシュが出来た、感謝するってお礼言ってましたし」
史実は11着、そこでオグリは終わったと言われた。だがメジロの療養所で集中的且つ専門的なケアを受ける事が出来たのでオグリの体調は一気によくなった、そして美味しいご飯も沢山食べられたので精神的にも漲り、スタッフからの応援の後押しがブーストされて3着と好走出来た。あの調子の良さならば……とオグリに期待する気持ちはよく分かる。
「次の有馬記念では凄い走りを見れるだろうな。会見では色々と言われていたが、私は出ない方が正解だと思っている。万全の状態にまで回復するのが最良だ」
「俺もそこは分かってますよ、大人しく休んでるつもり」
ルドルフも会見は見ていたが南坂を全面的に支持している。というよりもこれは東条も沖野も同意見、寧ろ話題性やらばかりを気にしているマスコミに対して辟易してしまった。有名になればなる程に自分の身体は自分だけの物ではなくなっていく事が多い、小さな失敗も大きな失敗へと取り立てられる事だってしばしば……故に対面を気にする。だが南坂はそれに囚われずにウマ娘の身体を優先した。
「んで、何で俺呼び出し食らった訳?なんかやったっけ、会見で問題発言したからそのお説教?」
「いやあれはあれで私も正しいと思う、トレセン学園としてはあれらの出版社は出禁にする事を検討している」
「そりゃ嬉しい限りですわ」
スカッとした気持ちとざまぁみろの笑いが込み上げて来るが、それを出したら絶対に怒られるので抑える。
「本題に入ろうか。メジロランページ、生徒会に入るつもりはないかい?」
「生徒会って……此処?」
「ああそうだ、現在は私が会長、副会長をラモーヌがやってくれているトレセン学園の生徒会だ」
生徒会。アプリなどではルドルフを会長、副会長にブライアンとエアグルーヴが就任していた。と言っても現在は副会長にラモーヌが居る位だが……まさかそこからの勧誘を受けるのは予想外だ。
「無論君だけを勧誘している訳ではない、ライアンにも声を掛けさせて貰っているよ」
「生徒会って三冠統一縛りでもしてんの?」
「仮にそうだとしたら、全員揃えて19冠かな?」
「ライアンが有馬取ったら20冠か、笑えねぇよ。後任が尻込みしかしねぇよ」
そんな事になったらまた三冠が出ないと生徒会に入れない……って事態が生まれかねない。
「加えて、君は英語やフランス語にも明るいとラモーヌから聞いた」
「ドイツとイタリア語も行けるが?」
「想像以上に眩しいな」
ヒト時代にドイツ語のカッコよさに惚れて勉強していた事があった。それから中二時代に神話やらに嵌った結果、こんな事になってしまった。若さとは怖いものだ。
「生徒会に入らなくても構わない、だが偶に手伝いを頼んでもいいかな?君宛ての書類も来るようになってね、流石に私も君程語学に明るくないものでね」
「それ位だったらお安い御用だぜ会長」
「助かる」
兎も角、生徒会に入るかどうかは一旦置いておくことになった。やっても良いのだが、今はまだレースに集中したいという気持ちがある。せめてシニアに慣れてからだと思う。
「さて、君にはシニアで何を目指すのかな。無敗の三冠を成し遂げ、ジャパンカップをワールドレコードで制した。何ならもうドリームトロフィーリーグに移籍する事も出来るぞ?」
「いやそっちは興味ねぇし眼中にないな、まだライアンと走ってねぇし」
誘いをかけてみるが一蹴される、URAの幹部から誘いをかけてみてくれないかと言われたのだが……まさか興味なしとノータイム返答とは。勝負服のデザインの事と言い、URAは一体何回ランページに心を折られればいいのだろうか。
「では海外に挑戦するのか?」
ジャパンカップで海外のウマ娘を破った事で、彼女に対する期待は益々大きな物へとなっていく。今だ成しえていない世界最高峰のレース、凱旋門賞の制覇も出来るのではないかと思うファンも少なくない。語学も堪能という事で単身で渡欧し、挑戦する事も視野に入る。
「いや海外も別に……というか、洋芝は日本の芝とじゃ全然違うって話だし日本で勝ったからって向こうで勝てる訳じゃないだろ」
「現実的な意見だな」
思わず肩を竦めてしまった。洋芝は日本の芝に比べて草も長い上に地面も柔らかい、故に日本よりもパワーが要求される。日本の芝はスピードが、海外の芝はパワーが、要求される物が違うので日本で勝てても海外では勝てないという事は多い。
「天皇賞を狙ってるぐらいかな、これでもメジロのウマ娘だから」
「成程、納得の意見だな」
目標を宣言するとそれに納得する、ランページはそのままカノープスに顔を出しに生徒会室を後にする。そして残されたルドルフとラモーヌは自然と顔を見合わせた。
「……彼女ならば、海外の芝も苦にしないと思うが」
「シンザン鉄でトレーニングしている訳だからパワーはある、そしてスピードもある……適性はあると思うのよね」
手元の資料で隠していたある物をルドルフは見た。そこにあったのはジャパンカップで彼女が破った海外ウマ娘からのラブレター、そこの一つにこうあった。
―――凱旋門賞で君を倒す。
「さてさて、興味も無い海外にどうやって目を向けさせる物か……難題だな、これは」
「えっ~!?ドンファンに輝石持たせても意味ないの!?」
「ターボ、イダイナキバはドンファンの進化系じゃねえぞ。俺も初見は勘違いしたけど、メガシンカどころかゲンシカイキだぞ」
「フフン、ネイチャさんの晴雨パの敵じゃないね」
「そう言えばさ、古代活性が晴れで起動するのってゲンシグラードンの影響なのかな?」
「あ~なんかありそう」
「皆さん楽しそうで良いですね」
カノープスは今日も平和です。