貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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86話

「やれやれ、困ったものだなこれは。如何したものか……」

 

ランページ宛に向けられた手紙、直筆の物もあれば挑戦的にレースへの案内状、パンフレットのような物まで様々。どれもこれもがジャパンカップでランページが打ち破ったウマ娘ばかり。アメリカ、フランス……その中でも一番異彩を放っているのはたった一枚の紙、そこにはなんと毛筆で書かれたであろう文字があった。

 

凱旋門賞で君を倒す。

 

慣れない筆と日本語なのだろう、文字が崩れていたり所々掠れていたり読みにくい、それでも本人が自分で筆を取って一生懸命に書いて送りつけて来た挑戦状である事が伺えた。込められた思いは唯一つ、打倒メジロランページ。それだけが込められた挑戦状だった。

 

「……かと言って、凱旋門賞か……」

 

ルドルフにとっても様々な意味で因縁がある世界最高峰のレース、凱旋門賞。その名を知らぬ者はいないと行っていい程の世界最強ウマ娘決定戦、と言っても差し支えない程の大レース。このレースに挑んだ日本のウマ娘はこれまでに3人しかいない。その最初の一人こそ、ルドルフのお婆様、スピードシンボリ。二人目はメジロ家、メジロムサシ。3人目は親戚にあたるシリウスシンボリ。3人とも素晴らしい名ウマ娘であった、だが凱旋門は、いや海外の壁は厚かった。

 

「君ならば、どうなるのだろうか……」

 

ルドルフは海外への遠征へと臨もうとした時に脚に不調を感じ、それが原因で欧州遠征が取りやめになってしまった。結局、出来たのはアメリカだけであった。出来る事ならば、祖母が走ったあの地で勝負したかったと今でも思う。

 

「ラモーヌ、君はどう思う。ランページは海外挑戦すると思うか?」

「何とも言えません。それしかいう言葉が見つかりません」

 

同じく、凱旋門に挑戦したメジロ家のラモーヌに言葉を問うが煮え切れない言葉しか返ってこなかった。自分と彼女の境遇は似ている、故に何か思う所があったと思ったのだが……

 

「―――実の所、メジロ家内部からお婆様へ対してランページちゃんを凱旋門賞へと出したら如何かという意見書が幾つも届いています」

「だろうな、あれ程の走りを見せたのだ」

 

メジロ家もそう思うのか、それも当然だろう。あれだけの走りを見せられたら次を期待しまうのも当然だ、それは自分も―――

 

「ですが、邪な思いから来る物があったんです」

「―――邪?」

「あの子を、良く思わない者も多いのです」

 

ランページのメジロ家の立場というのはかなり繊細なのである。元々がライアンの友人だったのにも拘らず、突然メジロ家入りをしているからか反感を覚える者もいる。寒門のウマ娘をメジロに入れるなどと、という事を大きな声で言っていた者も居た、だが―――それは彼女自身が実力で黙らせた。デビューから連戦連勝、遂にはG1を制覇し、そのままの勢いでトリプルティアラを獲得、そしてジャパンカップでワールドレコード。

 

「だからこそ、凱旋門賞に出そうと言っているんです。凱旋門賞に出して海外ウマ娘の力で押し潰そうとしている、ジャパンカップで勝ったのも日本だから、海外なら絶対に潰れると」

「……気に喰わんな」

「同感です」

 

あそこまで大きくなってしまったランページに対して表立って反対的な行動を起こしたら確実にカウンターを喰らうだけ、ならばその逆。背中を押して転ばせてやろうとしている。凱旋門ならば、確実に……と思われている。

 

「お婆様としても悩んでいるそうです、ですが……ムサシさんの無念を晴らして貰いたい、そんな思いがないと言えば嘘になります」

「……そうだな、それこそ私も同じだ」

 

出来る事ならば、来年の凱旋門に出場したいとさえ思う。お婆様に、勝ちましたと胸を張って言いたい。

 

「でも、結局のところはあの子が行きたいと言わない事には……」

「極論そこに行き着くな……機を見て、南坂トレーナーと相談をするのが一番か……」

「それが一番でしょうね、あの人かライアンが一番ランページちゃんを理解してますから」

 

 

 

「お姉様、何の本読んでるの?」

「ラテン語の教本」

 

カノープスの部室、そこで留守番をするかのように本を読んでいたランページに対してライスが覗き込んだ。本はラテン語の教科書で、手元のノートにはラテン語の翻訳文章と思われるものが綴られている。

 

「ラテン語って先輩もしかして海外遠征を視野に入れてるんですか!?」

「全然考えてねぇけど?というか何で俺が海外に遠征しないといけない訳」

「それじゃあ何でラテン語なんか勉強してるのさ」

「カッコいいから」

 

その余りにも単純すぎる一言にチケットだけにも飽き足らず、ライスもよく分からなそうに首を傾げてしまった。いち早く復活したネイチャが聞き返す。

 

「いやいやいや、カッコいいからって全然分かんないんだけど」

「ゲームとかでもラテン語使われてるのあるだろ、壁画に刻まれてるのがラテン語でしたっていうのもさ」

「あ~トレジャーハンターゲームとかそういうの良くありますよね」

「それにラテン語って響きがカッコいいの多いんだよ、俺がドイツ語覚えたのもそれが切っ掛けだしな」

 

それを聞いてチケットとライスがへぇ~と納得する中でネイチャは呆れ顔、ジャパンカップで勝ったから今度は海外遠征を視野に入れていると思ったのに……理由がカッコいいからとは……

 

「後、こういうの覚えておけば引退した後に海外レースのコメンテーターとかやれそうだし」

「確かに!!いいな~アタシも覚えてみようかな?」

「お姉様がやるならライスも勉強してみようかな……英語なら出来るんだけど……」

「ドイツとフランス、イタリアも行けるから教えて欲しいなら教えるぜ」

 

ワイワイと賑やかな雰囲気に包まれる部室、ネイチャはトレーナーへと視線を向ける。

 

「ランって海外遠征したら何処まで行けると思う」

「何とも言えないですね、ですがシンザン鉄で鍛えてますから必要とされるパワーは十二分に備わってますから良い所まで行くかもしれませんね」

「トレーナー的にそこに導かなくていい訳?」

「当人にその気がゼロですから」

「ですよね~……」

 

『Rampage……来年の凱旋門賞で絶対に貴方を倒す!!』

 

「あっそうだ、今日皆でフレンチ喰いに行かないか?俺の奢りで」

「わ~い!!ターボ、一回でいいから食べてみたかったんだ~!!」




ランページ、今の所、海外に行く気、見事なまでにゼロ!!
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