「ぐあああああっぐやじぃぃぃ!!!!」
「ああもう、そんなに泣くなっつのターボ……大健闘だったじゃねえか」
「ぐやじいぐやじいぐやじいぃぃぃ!!!!」
「あ~わぁったわぁったっつの!!」
年末、カノープスメンバーは教室の一つを借りて忘年会を行う事になったのだが……そこでターボが声を上げながら悔し涙を流し続けていた。
「タ、ターボ落ち着いて……ねっ?」
「ラ、ライスは凄いと思うよ……?」
「うわぁぁぁぁぁんん!!」
タンホイザとライスに慰められるのだが、肝心要のターボはランページの胸に顔を埋めながら泣き続けていた。どうしてこんな事になっているのか、それは先日行われた今年最後のG1レース、ホープフル
ホープフルステークスまではランページと同じく無敗、その勢いのままで望んだホープフルステークス。だがしかし、1番人気に押さえていたターボは確りとマークされており、バ群に呑まれてしまった。普段の大逃げを完全に封じられた状態でもターボは出来る事を諦めずに模索し続けた。
「考えるんだ、ターボに出来る事は……逃げる事と、後ドッカンターボと……ランといっぱい走って……そうだ、ランのあのステップ!!よぉ~しイチカニカ、だっけ?あれ、諦めたら一つで進めば二つだっけ、まあ何でもいいや!!ドッカンターボだぁぁぁぁあ!!!」
『残り200mを切った、あぁっと此処でツインターボが漸く抜け出した!!間に合うのか!?今からで間に合うのか!!?今年最後のエンジン全開!!ツインターボが一気に激走する!!届くか届くのか!!?あぁ~っと惜しくも届かず、ツインターボは2着ぅ!!!』
そしてなんとランページのクロスオーバーステップとドッカンターボを組み合わせて抜け出すという離れ業をやってのけた。それはずっとランページの併走相手として走り続け、その走りを目に焼き続けたから出来た芸当だった。そしてそこからの大逆襲、ドッカンターボで加速して2着に滑り込んだ。この結果を悪く言う者はいなかった、寧ろあの状況からよくぞ2着に……と南坂も大手を振って称賛したほど、だが本人は悔しくてたまらなかった。
「ターボ、何時まで泣いてんだよ。2着でも立派だ」
「だっで、だっでぇっ……ダーボ、デイオーど、やぐぞぐじだんだもん……!!」
「約束だぁ?」
「(コクッ……)」
「ターボ先輩、何の約束をテイオーさんとしてたんですか?」
チケットが尋ねた、それにターボはポツリポツリと語り始めた。
「ランとライアンが、約束してたみたいに、一緒に約束してライバルになろって……テイオーが、テイオーがカイチョーみたいな無敗の三冠ウマ娘になるんだったら、ターボだってそれに負けない位の、無敗のウマ娘になるって……約束したんだもん……それなのに、それなのに……ターボはその約束、破っちゃったぁぁぁぁ……」
自分とライアンに倣って、ターボはテイオーとライバルの契りを交わしたらしい。ルドルフへと憧憬を向けるテイオーは無敗の三冠ウマ娘に、ターボはそんなテイオーのライバルでいる事を誓って無敗でいる事を約束した。だが……今回のホープフルSでターボは破れてしまった。
「約束したのに、約束したのに……ターボが破っちゃったぁぁぁぁぁ……!!!」
「ターボさん……ですけど、頑張ったのでしょう。精一杯やったんでしょ、それならきっとテイオーさんだって分かってくれる筈ですよ」
「駄目だよそんなの……約束破ったのはホントだもん……謝りたいけど……会うのが、怖い……」
「ターボ……」
イクノの言葉も届かず、泣きじゃくり続けてしまう。ライバルに恥じない自分になる、それを掲げて走って来た、ライバルは約束を守っているのに自分は破ってしまった。それが重く圧し掛かっているのだろう……これは相当にメンタルをやられてしまっている、唯の敗北ではなく果たしそうとしていたモノを出来なくなってしまったのだから。
「ターボ、お前の気持ちは分かる。俺だって約束破っちまったら如何しよう思った、怖いよな、辛いよな、約束を破っちまうのは」
未だに胸に顔を埋めるターボを抱きしめてやる、身体を震わせるターボ。自分がテイオーと約束しようと決めたチームメイト、その走った道を自分も走りたい、ランみたいにカッコよく走りたい、そう思い続けていた。
「だけどなターボ、今のお前は最低だ」
「ちょっラン!!」
「ネイチャさん」
「イクノ、だって……」
今のターボには厳しい言葉、相当にメンタルをやられている今その言葉を掛けたら壊れてしまいかねないとネイチャが割って入ろうとするのとイクノが引き留める。
「約束、破ったから……」
「違うぞターボ、お前が最低なのは―――テイオーのせいにしてるからだ」
「えっ……?」
そっと顔を上げる、ランページが自分を見つめて来る。
「確かにお前は約束は破っちまった、そんなターボにテイオーは何で約束破ったのか、ライバルじゃないって言ったのか?」
「ち、違うもん!!テイオーは、テイオーは……」
そんな事は言っていない、ホープフルステークスを彼女は見に来てくれていた。そして自分に声を掛けようとしてくれていた、だけど自分が逃げ出したんだ。怖くて、約束破ったと言われるかもしれないと思って。
「違うだろ。それなのにお前はテイオーのせいにして、次の約束をしないって言ってるんだ」
「次……?」
「そうだ、約束を果たせなかったのが悔しいのは分かる。だったら次はどうするんだ、次は守れるように頑張るんだよ。きっとテイオーはお前の事をまだライバルだって思ってくれてる」
「負けた、のに……?」
「ライバルっていうのはそいつに負けたくない相手って事なんだよ、なあイクノ」
「はい、私はランページの事をライバルだと思い続けていますよ」
イクノは直ぐに返事を返してくれた。この質問が来ると分かっていたと言わんばかりに。
「寧ろ、今回の事でお前は強くなってるんだ。そんなターボを見てテイオーはきっと……勝ちたいって思った筈だ」
「テイオーが、ターボに……?」
残り200mでバ群に呑まれた状態から抜け出し、そこから一気に猛スパートを掛けて2着に入ったなんてとんでもない事だ。勝つ事は出来なかっただろうが、スピカのトレーナーは今回ホープフルSを制したウマ娘よりもずっとターボの事を警戒している筈、それはテイオーもきっと同様。
「そんなテイオーはお前に負けないって思ってトレーニングする筈だ、それじゃあお前は如何する?もう走らないか、諦めるか?」
「……違う、違うもん!!ターボだって、ターボだって頑張る!!無敗じゃないけど、頑張って頑張って走るもん!!それでテイオーのライバルはターボだって皆に見せてやるだもん!!」
「それで良いんだよターボ、やっと泣き止んだな」
くしゃくしゃになっていた泣き顔が漸く変わった。元気とやる気に満ちたターボに戻り始めた。
「だったらまずお前は何をする?」
「テイオーに会って来る!!それで、約束破った事謝ってもう一回約束する!!」
「それでいい、それじゃあ善は急げ、行って来い!!」
「うん行って来る!!」
飛び出して行くターボを見送る、それに世話の焼ける奴だとボヤキながらもシガーを銜えようとするのだが、周囲から視線を集めている事に気付く。
「んだよ、言いたい事があるならハッキリ言え」
「いやいや~なんていうかさ、ターボのお姉ちゃんみたいだったよ」
「ええ、ターボさんがランページさんにずっと抱き着いていたのも姉妹ゆえの絆を思わせました」
「フフフッ新しい妹さんが出来たね、お姉様」
「おいおいおい、勘弁してくれよライス。俺の妹はライスだけだ」
「あ~先輩赤くなってる~照れてるんですか?」
「照れてる照れてる~!!」
「ちがわぁい!!あ~もう、なんか暑っちぃなこの部屋!!もう良い、窓開けてやる!!!」
「ランページさんも可愛いところありますね」
「南ちゃんまで言うか!!俺のトレーナーじゃなかったのか!?」
「ええ、貴方のトレーナーですよ。同時にカノープスのトレーナーです」
「テイオーゴメンなさい。ターボ……バカだった、だからもう一回約束して!!ターボはもう諦めないから、テイオーのライバルになるから!!テイオーのライバルのターボはあんなに凄いんだって思われるようなウマ娘になるから!!」
「うん約束、ボクだってターボに負けない位凄いウマ娘になる!!」
「「約束!!」」
「テイオーに謝って約束してきた!!」
「応そうかい」
「ラン、ありがと!!」
「あ~んもう、慣れねぇ事したから疲れていけねぇな!!ほらお前ら忘年会やるぞ忘年会!!」
「うん!!ねえライスみたいにラン姉ちゃんって呼んじゃダメ?」
「それだけはやめろ」