貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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92話

「ホッホッホッ……!!」

 

軽快な声とは反比例するかのような重々しく、低い音が地面に炸裂している。シンザン鉄を装着したままのラダートレーニングに取り組んでいるランページ。

 

「ラン凄~い!!ターボもやる、ターボもターボも~!!」

「南ちゃんターボ用のシンザン鉄ってあったっけ?」

「実は先日、皆さんの入門用のシンザン鉄が届きました。と言ってもクラシックに上がった皆さんは2倍程度の物ですけど」

「いやいやいや、2倍でも普通の蹄鉄とは全く感覚違うだろうからキツいとネイチャさんは思う訳ですよ」

 

漸くやって来たカノープスのシンザン鉄にターボはワクワクウキウキ、ネイチャはこれから更にキツくなるのかぁ……と溜息混じりだが、やる気に満ち溢れている。

 

「イクノの奴が基本的な奴だよね」

「はい、普通の重さの4倍です」

「4倍の普通なんだね……ライスもこれ付けるの?」

「ライスさん達はデビュー前ですので、1.5倍から慣らしていきましょうか」

「えっライスさんが1.5倍ならあたしは!?」

「チケットさんは……まだですかね、代わりに専用のパワーアンクルをご用意しました」

 

まだまだ身体作りの途中のライスは1.5倍スタート、その一年下のチケットは流石に未解禁。しかし、代わりの手段は既に構築済みだったのか鉛の板を入れられるようになっているアンクル。

 

「これを足首に装着して貰います、既にそれぞれ500に調節してありますから両脚に1キロの負荷が掛かるようになってます」

「ふぅ~ん……この位なら全然!!このまま1000mダッシュだって余裕!!」

「チケット、これはそう簡単に甘くはねぇぜ」

 

タオルを首に掛けたランページがドリンクを飲みながら迫る。

 

「確かに大した事はないかもしれないが、徐々に効いてくるタイプだ。南ちゃんも代わりにこれとは、相変わらずお綺麗な面してキチぃメニュー組みやがる」

「お褒めに預かり恐悦至極」

「皮肉だっつの」

「ターボはこの位なら大丈夫~!!」

 

ネイチャにシンザン鉄を装着して貰ったターボ、重さを感じさせないウサギジャンプを披露する。元々イクノとランページと走り込んでいただけに脚力は既に相当なものがあるいい証明だ。

 

「それじゃあ、折角だからゲームと行こう」

「ゲーム!?」

「そう、これから俺を除いた皆で1000mダッシュ。今の状態でシンザン鉄を装着してどれだけ走れるかテストだ」

「面白そう~!!」

「うん、ライスも気になるからやる」

「アタシも~!!」

「勿論私もやる~!!」

「負ける訳にはいきませんね」

「こりゃ逃げ遅れたかな~?」

 

南坂は先に言われてしまったか、と言いたげな顔を作っていたのでしてやったりと陰でVサインを作る。

 

「勿論ゲームだから、賞品も用意するぞ」

「どんなのどんなの!?」

「秘密、まあ中身は無敗の五冠が保証してやるから期待しとけ」

 

そんな事で釣りつつも皆がスタートラインに着き、南坂が合図をして一斉にスタートしていく。先頭は矢張りイクノ、既に慣れているというのもあるだろうが通常のシンザン鉄でレースで走りが出来るようになっている辺りは流石の適応力だ。

 

「イクノさんはそろそろ5倍でも良さそうですね」

「倍率が少し変わるだけでもガラリと世界が変わるんだよなぁ……」

 

尚、今ランページが付けているのは8倍、ダントツの重さである。

 

「うおおおおおっテイオーのライバルになるぞ~!!」

 

次に伸びが良いのはターボ。先日のテイオーとの一件が精神的な成長を及ぼしたのか、走りにキレが見え始めて終盤に脚が伸びるようになってきた。スタミナも引き続き向上傾向、曰く、クラシック路線かティアラ路線かで未だに悩んでいるらしいが、何方に出てもいい結果になる事だろう。

 

「負けないぞ~!!」

「ついてく、じゃなくて追い越せ追い抜け……!!」

 

ネイチャとライスの二人も中々。ロングスパートを活かすような走りになってきたネイチャとステイヤーなライス。1000mではキツいと思ったが二人とも思った以上にスピードが出せている。

 

「う~んこれ、ちょっと走りにくいかも……!!」

「よ~し此処で……ってなんか急に脚が重くなったぁ!?」

 

一方、少々苦戦気味なのはタンホイザとチケット。1000mという距離では根っからのステイヤーなタンホイザは辛そうだが、慣れが足りないだけと言わんばかりに確りと走れている。そしてチケットは半分を超えた所で1キロという重さを自覚してしまったのか、一気に減速してしまった。

 

「最初は大丈夫と思いきや後からグッとくる、違った辛さがあるんだよなぁ……」

 

「ぬおおおおおっっ!!根性根性ぉぉぉ!!」

 

その重さに負けずに、チケットは力を込めて走る。疲労が溜まれば堪る程に脚は重くなっていき、同時に思考力も落ちて行く。自覚する重さとシンザン鉄はそれをクリアする為のメニューでもある。結局、一番乗りでゴールしたのはイクノ、二着はネイチャで三着がターボ、そしてライス、タンホイザ、チケットと続いていく。

 

「お疲れ、如何だシンザン鉄の味は?」

「キ、キッツぃ~……ランこんなの何時も付けてメニューこなしてたの~……?」

「正確にはその数倍のな、俺が南ちゃんに鬼だのなんだのっていう気持ちが分かるだろ」

「身に染みたよ……」

「ラ、ライスも大変……だった……」

「ふええ……これになれるのには時間がかかりそう……」

「あたしなんてそれ以下だよぉ……」

 

「んでも、イクノは流石だな」

「精神的な差です」

「それでは次回からは5倍で行きましょうか」

「望む所です」

 

慣れているイクノにとってはこの程度では精神的に揺らぐ事はない。そして、いよいよイクノも通常シンザン鉄をバージョンアップ版に変更する頃合となった。

 

「ねえラン~……これ、誰が勝ちなの~……?」

「誰が勝負って言ってんだよ、このメンバーでやったらイクノが勝つに決まってるだろ。そんなの出来レースで勝負じゃねえよ」

「じゃあ賞品のも釣りな訳?」

「ンな白ける事しねぇよ、ほれ」

 

そう言いながら懐から一枚の紙を出して差し出す。そこにはメジロ家療養所案内、と書かれてあった。

 

「全員纏めてメジロ家の療養所にご招待だ。お婆様からの許可は勿論とってあるからな」

「えっマジで!?やった、この前ライスと行った時からもう一回行きたかったんだよね~!!」

「うん、あそこ凄かったから……!!」

「楽しみ~!!」

「流石に、気分が高揚しますね……!!」

「ねえねえいつって書いてあるの!?見せて見せて!!」

「あ~先輩あたしも見たい~!!」

 

一気に楽しげな雰囲気になるカノープスに思わず笑みがこぼれるランページと南坂、アサマにチームの皆も招待してもいいかと尋ねたら勿論と言われたので企画してみたが、如何やら大正解らしい。

 

「さてと、南ちゃん俺のメニューは?」

「はい。次はダートコースを8倍です」

「いよいよか……つう事は決まった?」

「申請はしておきました、随分と驚かれましたがね」

「そりゃそうだろ」

 

シガーを吹かす、次に自分が目指すレースは―――G2、東海ステークス。そしてそれは芝ではなくダートレース。

 

「今まで芝だった奴が突然のダートに行くんだ、驚いて当然だ」

「何度も確認されましたよ、本当なのかと」

「まあ本当なんだけどな」

「東海ステークスでダートでの適正を計ります、当然それまでもこれまで通りにメニューを組みますので覚悟して下さいね」

「あいよ、任せとけよトレーナー」




「おはこんはろチャオ~!!今日のゲストは~この方!!」
「イエ~イ皆、お久しマンモス~♪マルゼンスキーでぇす♪」
「今日は二人で」「皆の視線を」
「「逮捕しちゃうぞ♪」」

『またレジェンド呼びやがった!!』
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