貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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93話

「ふぅん水族館でシャチとイルカが赤ちゃんを……こういうので良いんだよなニュースってのは……今度ライスとターボを連れて行ってみるか、喜ぶだろうし」

 

新聞を広げて食後の一時を楽しむランページ、余りにも様になっている姿と言動のせいで完全に休日に子供を水族館に連れて行ってあげる事を計画している親にしか見えない。

 

「あっ居た!!」

 

そんな時間を楽しんでいた自分が知っている声が聞こえて来た、それは直ぐに近寄って来た。

 

「ちょっとランあのニュース本当なの!?」

「んだよライアン藪からスティックに……どのニュースだよ」

「あれ!!」

 

指が指される先にあったのはカフェテリアの大型TV、そこではニュースが流されていたのだが……デカデカな文字で速報と銘打たれて流されていたのはメジロランページ、次走は東海ステークス!!?というモノだった。カフェテリアにいたウマ娘達はそれに驚いているのか、先程からざわめきが止まらない。

 

「ああ、その事か……本当だが?」

「ちょっ如何してダートなの!?」

「良いじゃねえかダート、お前の尊敬するオグリ先輩だって元々はダート走ってたんだしな」

「それはそうだけど……!!」

「よし株価上がってる」

 

完全にやってる事が休日のお父さんになっている親友に流石のライアンも力が抜けてしまったのか隣の席に座り込んでしまった。今回ばかりは流石に親友でも何を考えているのか全く理解出来ない。無敗でトリプルティアラを獲得し、ジャパンカップをも制した彼女は芝のマイル中距離で無敵と言っても良い状態なのに敢えてそれを外すように新年一発目のレースをダートにした。

 

「なんで、ダートに……?」

「やれる事を試してみたいと思った、ただそれだけの事だ」

「でも、無敗なのに……」

「どこぞの会長は無敗三冠になった直後の試合で負けてんぞ、その点じゃもう俺が上だ」

 

当人が聞いたらいったいどれほどまでに渋い顔をするだろうか……その一方で事実であるので強く言えない……と苦笑するだろうか。今度言ってみるか、と思っていたらカフェテリアに一人のウマ娘が凄い音を立てながら入って来た。それに全員がそちらを向くがランページは変わらず新聞を読み続ける。ウマ娘がランページの下へとたどり着くと勢い良く新聞を取り上げた。

 

「んだよ、人が新聞チェックしてんのに……邪魔すんなよフローラ」

「そんな事は何時でも出来るでしょう、そんな事よりも……私の質問に答えてください、如何してですか、如何してダートなんですか」

 

アグネスフローラ、イクノと同じく自分のライバルの一人としてティアラ路線を戦った仲。今度こそ、シニアでランページに勝つと思っていたのに、その為に頑張っていたのに如何して当然ダート路線へ進んでしまったのか……。

 

「勝ち逃げなんて許しません、今直ぐに東海ステークスへの出走を取り消してください」

「お前に指図される筋合いなんてねぇな、これは南ちゃんも納得した上での登録だからな」

「えっ南坂トレーナーも納得の上でのダートなの!?」

「あのな……トレーナー無視して出走登録なんざぁ出来る訳がねぇだろ」

 

完全に呆れているランページ、っだがそれ以上にフローラはショックだった。もう自分はランページと戦う事が出来ないのか、一度も勝利する事も出来ずにもう背中を追う事も出来ないのかと思考が堂々巡りしていく中―――目の前でスナップされた。

 

「一つ勘違いしてるらしいが誰も芝を走らねぇとは言ってねぇだろ、東海ステークスの後の予定には大阪杯が入ってんだよ」

「―――えっ?」

 

目が点になった。ダートに転向するという訳ではない、単純にダートも走るようになったというだけの話なのだ。これから芝とダートの二刀流となるという意思表明をしたに過ぎない。

 

「まずは東海ステークス、そこで俺のダートの適性を見る。そしてそっからフェブラリーステークス―――そして大阪杯だ」

「ダートを芝と一緒に走るつもりなんですか……!?」

「応とも、その位出来ないようじゃ―――俺は世界で通用しない」

 

その言葉にカフェテリア中が騒めいた。世界、未だに日本のウマ娘が獲得した事のない栄光を取りに行くといったも当然だが、彼女は撤回もしないまま胸を張りながら言った。

 

「世界の壁は厚い、だからって諦めないのが挑戦だ。勝ち負けなんて如何でもいい、俺は挑戦された、だったらそれには受けなきゃならない立場になった!!同時に俺は挑戦者、ジャパンカップで海外に勝った。だったら次は俺が海外に挑戦に行くしかねぇだろ。その為の第一歩―――それが二刀流だ。こんな答えしか持ってねぇが満足かいフローラ、ライアン」

 

新聞を奪い返し、脇に挟みながら続ける。

 

「……すいません、勝手な勘違いを……」

「気にするな、あれはマスコミの騒ぎ方が悪い。後で俺が自分の配信で今の事をちゃんと話すつもりだよ、ライアンも不安にさせちまったな。でもな、お前と走る前に芝から消えるつもりはないぜ俺は」

「―――そうだよね、ランはそういうことしないもんね。ゴメン色々慌てて肝心な事考えるの忘れてた」

「悪いと思うなら、今度俺の配信に出ろよ。同期のダブル三冠出演で配信を盛り上げてくれ」

「そんなので良いなら」

「言質、取ったぜ」

 

フローラとライアンが安心した顔を浮かべるとランページは「騒がせたな」と一言カフェテリア全体に謝罪しながら去っていった。その直後に叫び声と興奮の声が溢れ出した。

 

 

「おはこんハロチャオ~!!貴方の記憶にワールドレコード、独裁暴君、無敗のティアラ、この頃話題の女の子~ナイスなバディのウマ娘~なランページだぜい!!皆の者~善行積んでたか~?」

 

・積んでたぜ~!!

・待ってましたぁ!!

・この時の為にクソゲー消化で積んでました!!

・ツボオジで善行積めるとはたまげたなぁ……

・あぁん最近だらしねぇな!?

・というか古い……

・マルゼンスキーに染まってね?

 

「あんだけハイテンションなお姉様のノリには染まっちゃうもんだから、仕方ないね。まあそんな事より、皆の者はニュースを見たりしてるか~?この情報化社会を生き抜くには積極的に情報を取りに行くのが大事なんだぞ~?今日のトレンドはこちら!!なんと、あの話題のウマ娘が突然ダートに出走するんだって!!いやぁ芝であれだけ暴れたのになんで突然そっち行くんだろうね、そんなウマ娘はどいつだ~い?私だよ!!」

 

・なんでこうもこのウマ娘はネタが多いんだwww

・兄貴ネタまで行けるとは……そこだけ低いええ声出すなやwww

・というかその芸人ネタも古いぞ、これもマル姐の影響か。

・自分の事じゃねえか!!

・つうかマジでなんで突然ダート!!?

 

「最近二刀流って話題になってるじゃん、ほらメジャー挑戦したあの人とか。だから流行には乗っかろうと思って―――というのは冗談だ、真面目な話をすると挑戦を受けたんだぜな。俺はそれを受ける為に出来る事をやる事にしたんだ」

 

・うわぁっ急に真面目になるなぁ!!

・温度差で風邪引く!!

・挑戦って……無敗の五冠に誰が挑戦するだよ、ダート走ってるウマ娘とかか?

・無謀すぎるだろ、芝とダートじゃ違い過ぎるしそれで仮に勝ったとしても叩かれるだけ

・でもダートなんて……流石に急すぎるんじゃ

 

「言いたい事は分かる、だけど―――挑戦ってそういうもんだろ。無理だ何だと言われようが挑みたい、やってみたい、だからこそ挑戦する価値がある!!無敗なんて如何でもいいんだよ!!大切なのは勇気を持って一歩踏み出して挑戦する事だ!!その為に無敗の看板が無くなるのなら俺は構わない、それが価値ある敗北であるのであれば、喜んで俺は無敗を捨てる!!」

 

世間が価値ある物だと見る物は、ランページからすればそこまでの物ではない。かと言って自分から捨てるつもりはない、だがその時が来ればあっさりと手放せる程度の物でしかない。そしてそれを次へと繋げていく、そうだ、ターボが無敗じゃなくなったと泣いた。だが立ち上がった時、あの子はもっと強くなった。それは一度の敗北が無敗よりもずっと価値のあるものをくれたからこそ。胸を叩きながらも心臓の鼓動を感じる。

 

「東海ステークスで負けたとしても、きっと俺は後悔しない。その敗北が、次なる力をくれると信じている。だから俺は走るんだ」

 

・無敗よりも価値がある敗北……

・勇気を持って、一歩を……

・かっとビング……みたいだ。

 

「そうだ。それが挑戦だ、俺が歩む道だ……皆、突然の事で驚かせたことは謝る。だけど俺は走りたい、それが挑戦を受けた俺の最大限の礼儀だ」

 

・カッコいい。ファンだったのに益々惚れちゃったよぉ!!

・ああああああっお姉様ぁ!!

・それが推しの決めた事ならとことん応援するのがファンだぜぇ!!

・この際だからダートの支配者にもなっちまえ!!

・そりゃいいな!!ターフの支配者はダートの支配者だぁ!!

・輝くティアラは、不敗神話の証だ!!

・ターフで最強のウマ娘は、ダートでも最強だぜ!!

 

「フフフッハハハハ!!!ありがとな皆の者、そう言われたら俺様益々やる気爆発させちゃうぞぉ~!!よ~しお姉様東海ステークスを蹂躙しちゃうぞ~!!」

 

・ギャアアアアア!!!

・やめてぇぇぇぇぇ!!!

・こっちにまで守備範囲広げないでぇぇぇぇ!!!

・ダートウマ娘と思われる悲鳴がすげぇ

・阿鼻叫喚で芝。

・でもサインは欲しいぃぃぃぃ!!!

・出走予定なのでサインお願いしますぅぅぅぅ!!

・うぉい

・調子いいなおい。

・歪みねぇ

・まあ、ランページのサインは欲しいし……

・仕方ないね

 

「なんか真面目な話題で疲れちゃったな、それじゃあこれからは何時もの調子で行ってみよ~!!今日のゲストは~……えっと、チームスピカの変態マッサージ師さん!!」

「はぁ~い!!お待たせしました、じゃねえよ!!如何言う紹介の仕方だランページお前ぇ!!」

「その割にノリノリじゃねえか沖トレ」




配信ありきだとネタが多めになる。
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