貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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94話

『さあ中京レース場、ダート1800m、G2東海ステークス間もなくゲートインです!!』

 

重賞とはいえダート、日本は偏っているのでダートはメジャーではないという印象が拭えず芝程の観客は普段は入らない。入らない筈なのだが……今日ばかりは10万人の大観衆がこの中京レース場に集まり、この東海ステークスを見に来ている。

 

『しかし細江さん、今回の10万人を超える大観衆が此処、中京レース場に集っておりますが矢張りこれは彼女の人気故なのでしょうか』

『そうですね、此処まで無敗で勝ち続けて来た三冠ウマ娘がまさかのダート挑戦、皆の期待が寄せられています』

『そう、無敗のトリプルティアラ、芝の絶対女王とも言うべきメジロランページがこのレースには出走しております。その理由については、配信にて挑戦を受けたからそれに向けて万全の備えをする為と言っておりましたが、どんな挑戦状を受けたらダートを走ろうと思うのでしょうか。彼女の心を突き動かした挑戦とは一体何なのか!?』

 

ゲート前に集まった10人のウマ娘、が、その視線は一人に集約されていると言っても過言ではない。

 

「絶対女王とか初めて言われたな、独裁者呼びがデフォだったから妙な気分だぜな」

 

メジロランページ。14戦14勝、これまで無敗の記録を誇るがそれはあくまでの芝での話。ダートでは芝と同じようには走れないと考える者は極めて多い、それ程までに芝とダートでは違うという事。一方のみでその強さを発揮するウマ娘はいたがその両方で……というのは中々いない。それこそ、地方のカサマツでダートを走っていたオグリキャップが一番皆の記憶には新しい。

 

「メジロ、ランページ……さん」

「んっ?ランページでいいぜ、何だったらランでいいから」

「んじゃ……ダートを舐めてる、って訳じゃないよね?」

 

ゲート前で身体を伸ばしているとアメイジングダイナが此方を見据えて来る、ダート重賞を取った事もある実力ウマ娘で今レースでは一番人気。懐疑的な瞳を向けて来るのでそれを受け止めながら向き直る。

 

「舐めちゃいねぇよ。俺は挑戦しに来てるんだ、全力でな」

「ごめんなさい生意気な事言って、ダートをバカにする奴もいてさ……」

「そういう奴ほどダートを走った事ねぇんだよな、まあ頑張ろうぜ」

「ええ、三冠だろうと負けないわよ?」

「そうしてくれると有難いねぇ」

 

握手を求められたのでそれに応じる、客席からは拍手が送られる。それはダイナに向けての物なのか、それとも……だが此処にいるウマ娘の全員はダートに挑戦するランページに対しては友好的な雰囲気だった。寧ろこれでダートが活性化されて盛り上がってくれたらいいなぁとさえ思っているのか期待に満ちた顔をしている。

 

「……この流れで聞くのハズいけど、サインって……貰える?」

「喜んで、ファンサービスは俺のモットーですから」

「あっズルいアタシも欲しい!!」

「お姉様配信でサイン欲しいって言った者ですぅ!!」

「配信者に向けて身バレとかいいのか、まあ俺は誰にも言わんが……後で良ければ書いてやるぜ、どうせだから皆で一緒に写真撮ろうぜ、俺のウマッターに上げちゃうぜ」

『やった~!!』

 

険悪どころかどんどん盛り上がっていくゲート前、それを正すかのようにファンファーレが鳴り響いた。続々とゲート入りを行っていく。今回ランページは大外枠の8枠10番の3番人気だが全員からマークをされていると言っても良いだろう、しかしだから良い、これこそ―――挑戦だ。

 

『スタートしましたっおっと5番リアヤール躓いたか!?しかし上手く立て直してそのまま、問題はないようです。さあ一気に飛び出したのはターフの独裁者メジロランページ!!得意の大逃げがこのダートの舞台でどこまで通じるのか、そしてそれ続いて6番アメイジングダイナ、リアルソラス、センジュヨロイが行きます。メジロランページは後方とは2バ身差か、普段よりも逃げれていないという印象を受けます』

 

「やっぱりダートだと勝手が違うのかな、ラン何時もみたいに逃げれてないや」

 

観戦に来ているターボ、イクノや南坂と一緒に初のダート挑戦の応援にやって来ていた。他の皆も来たがっていたが、都合が合わなかったのでこの3人でやって来た。スタートしたレースを見てターボが矢張り勝手が違うのかという印象を述べると南坂が応える。

 

「いえ、全体的にダートレースでは逃げや先行を選ぶウマ娘が多いのです」

「人気なんだ!!」

「というよりも、砂を被らないようにする為でしょうか」

 

芝でもある事だが、走った際に芝が舞う。ダートの場合は土、砂が大きく舞い上がって顔に掛かってしまって集中力の妨げにもなる。それを避ける為にダートでは統計的に逃げや先行が非常に多いとされる。

 

「基本的に皆前に行くので必然的にランページさんは逃げれていないように見える、という事ですね」

「その通りです」

「えっそれって大丈夫なの!?」

「大丈夫ですよ、ランページさんは皆さんが思っている以上に―――ダートは得意ですよ」

 

 

「(流石は三冠ウマ娘、ダートコースであってもこれだけ走れるのね。だけど普段以上の逃げじゃない)」

 

アメイジングダイナを筆頭にランページのダートでの悪くない走りに驚きを感じていた、芝とは全く違う環境のレースで此処まで走れるのか……そんな関心と尊敬すら向けていた。それでも今までの走り程ではない、あのジャパンカップ程の逃げではない、十分に捉えられる。

 

「(悪いけど―――この一戦を価値ある敗北にさせてあげるわ!!)」

 

『さあ間もなく第4コーナーへと差し掛かる!!未だ先頭はメジロランページ、だが後方からアメイジングダイナが迫る!!ターフの独裁者を抜きに掛かる!!直線に入ったぞ、行けるか!!いや粘る粘る!!メジロランページが粘る!!』

 

「如何して、縮まらないの……!?」

「全力で走ってる筈なのに!!」

「脚が、伸びない!?」

「もしかしてこれって……!?」

 

困惑の声を背中で受けながらも笑う、唯の大逃げ出来ないと思われているのならばお生憎。意外と自分が芸達者なのだ、ダートに慣れていないが故のローペース?違う、合わせていたんだ。

 

『残りあとわずか!!おっと此処でメジロランページが伸びて行く!!一気に突き放しに掛かった、アメイジングダイナは伸びないぞ何時ものキレがないぞ如何した事か!?メジロランページ3バ身から4バ身!!強い強いぞターフの独裁者は、ダートの独裁者にもなれると言わんばかりのゴール!!メジロランページ一着!!!二着アメイジングダイナ、三着にセンジュヨロイ!!ターフの独裁者はダートでも強かった、見事な逃げ切り勝ちを見せ付けましたぁ!!』

『ダートでも芝のように逃げていました、此処までの適応性を見せるなんて……驚きです』

 

「悪くない手応えだ、もうちょっち詰められるな」

 

まだまだ余裕と言わんばかりのランページにダイナは素直に負けを認める、だけど次は負けない。不思議と諦めるなんて気持ちが湧いてこない、寧ろ彼女に挑戦したい気持ちで溢れて来る、それを抑えきれずにランページに向き直る。

 

「ランさん、見事に負けました。だけど―――次は負けないから!!ダートに挑戦したみたいに貴方に挑戦いや、貴方と戦う為ならあたしだって芝に行くぐらいの気合で望むから覚悟しといて!!」

「いい顔と覚悟だ、何時でも来な、相手してやる」

 

 

メジロランページ @dictatorship

 

やった~ランさん(ダートで)大勝利~♪

今日の敵はずっと友達。これから仲良く、イカよろしく~♪

 

 

今日走った皆で写真撮影をしたのちのウイニングライブはG1並の大盛り上がりを見せ、ライブに参加したウマ娘達も大興奮だった。そして、これが切っ掛けになったのか、これまで芝しか見なかったファンがダートにも興味を示して足を運ぶようになっていった。




「おっウマキン氏スパチャありがと~!!沖トレ、質問来てるぜ。変態マッサージ師って言われるぐらいの事やったんですか、だって」
「いや、俺はウマ娘の脚の状態が気になって触った事位しか……」
「その時の手付きとかがイヤらしかったんじゃね?」
「うぉい!?そりゃねえだろ!?」
「んじゃスピカの面々に聞いてみるかい?」
「あいつら絶対俺の事フォローしない面子だからな……悪乗りするぞ絶対。主にシービー」
「分かるわ」




東海ステークス見ようかな
         ↓
ヴァンヤールつまずいたってああっ騎手さん落ちた!?
         ↓
ああ、こりゃ失格か……あれ、なんかそのまま綺麗なレースしてない?
         ↓
ええっ……そのまま自分でレースして先頭でゴールしたよ最終的に失格だけど……しかも自分だけで地下馬道に帰っていった……。

萩野騎手落馬してなかったらヴァンヤールが勝ってたんじゃね?って思う位、綺麗に自分でレースしてて笑っちゃいました。
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