「あ~あ……なんで俺此処にいるんだろうな」
「表彰されるからですね」
「なんで表彰されるんだよ」
「ワールドレコードを取ったからですね」
「ふけちゃダメ?」
「駄目ですよ」
「へぇ~い……前もこんなやり取りしなかったか?」
二回目となっても此処に来た事に対しての不満を述べる事を一切やめないランページ、その姿はURAのビルの中にあった。相変わらず豪華なパーティ会場の中に整えられた壇上に記者たち、此方を見ているが無視。
「ったく……表彰するならトロフィーとかにしてそれを送ってくれればいいじゃねえか……」
「そう言わずに」
「分かってるよ……此処に来る事自体に意味があるって事は」
URAビルに来る事はそれ自体が名誉な事、此処に来る理由はドリームトロフィーリーグでの出走表の発表や年間表彰式ぐらいだろう。そんな場所に何度も来るというのはウマ娘として優れていて、それが認められているという事。
「やっほ~ラン」
「おおっライアンか、お~お~流石はメジロ家の御令嬢だ、俺みたいな一般上がりと違ってドレスが様になってやがらぁ」
「何言ってるんだか、ランだってメジロ家の御令嬢って扱いなんだよ?」
「こんなガサツでズボラで口が悪い令嬢の何処の世界に居やんだよ」
「今日は何時もに増して荒れてるなぁ……」
同じように表彰を受ける事になっているライアンも今日ばかりはドレスに身を包んで参上している。一方、ランは前回と同じようにスーツでの参加である。もうここまでくると筋金入り。
「ライアン、もう少しで始まるって……あっ」
そんなライアンの名前を呼びながら隣に立ったのは少々細身ではあるが、結構確りした表情を浮かべている男性トレーナーだった。ランページは見た事がないが、南坂は直ぐに頭を下げた。
「本日はおめでとうございます、クラシック三冠へと導いた手腕、お見事です」
「なんか照れるな……というかそれならそっちの方が凄いと思うけどな、無敗での五冠なんだから」
「それこそランページさんの力ですから」
「あ~っと……南ちゃん、誰これ」
「あれ、ランには紹介した事無かったっけ?」
「お初だよ、初めて過ぎてちょっと畏まっちまってるよ」
「何処がよ」
唯の平常運航なのに何を言っているんだお前は、と言いたげな顔をしてくるライアン。
「え、えっと初めまして。俺はライアンのトレーナーをさせて貰ってる奥山です」
「あっどうも、知ってると思うけど最近二刀流始めました独裁暴君のメジロランページです」
「あっ配信いつも見てるんだ」
「おっ?なんだリスナーだったんか、んじゃ何時ものあいさつした方がいい?」
「生のあれは是非見たいけど、出来れば今度配信のゲストに呼んで貰った時に堪能させて貰うよ」
「地味に呼べって言ってる辺りライアンのトレーナーだわ、強かだ。良いぜ、今度の配信にライアン共々ご招待だ」
「よっしゃ!!あっえっと……その、有難う御座います」
と最初こそ大人しそうな青年トレーナーという風な感じだったのに、徐々にメッキが剥がれて行くように素の性格が見えて来た。なんというか、自分の素と随分似ている気がする。
「奥山トレーナーは何かに嵌るととことんやってみようっというタイプの人なんですよ、ライアンさんと契約してからは一緒に筋トレをして、今では90キロのバーベルも上げられるようになってますから」
「いやぁライアンに比べたら……」
「いやウマ娘と比べんなっつの」
そんなやり取りをしているといよいよ表彰式が始まった、クラシック部門での表彰式。シニア級では今年トゥインクルシリーズ引退のオグリが選出された、そんな彼女は用意されていた食事に集中している。まあオグリらしいと言えばオグリらしい……。
『クラシッククラスでの表彰を行いたいと思います!!まずはクラシック部門、見事クラシック三冠を成し遂げたメジロライアンさんです!!』
「え、えっと光栄です!!」
『同じく、クラシッククラスティアラ部門、無敗でのトリプルティアラは史上初、そして二人目のティアラ三冠―――そして、ジャパンカップではワールドレコードを樹立し年度代表ウマ娘にも同時選出されましたメジロランページさんです!!』
「どもども~」
トレーナーたちと共に壇上へと上がっていく二人に一斉にフラッシュが焚かれる。視線の奥では大量の料理を食べているオグリが拍手を送り、その隣では六平トレーナーが呆れつつも同じように拍手を送っている。
『それではお二人に今後の目標などをお聞きしたいと思います』
「えっと、目標かぁ……」
まずはとライアンにマイクが差し出された、それを受け取りながらもこれからの目標をと言われても……と言葉が詰まりそうになったのだが、直ぐに言葉を作れた。
「昨年はアタシ自身の夢と親友との約束を果たす事が出来ました、クラシック三冠という栄誉をメジロ家に齎す事が出来ました。その事を誇りに思っていますが、まだ足りない。アタシは出来る事ならランと一緒にレースを走ってみたいと思っています」
その言葉を待ってましたと言わんばかりに記者たちが激写を行う。クラシック三冠が無敗のトリプルティアラに宣戦布告したも同じなこの状況、流石のあのランページも驚いたりなどの反応をするに決まって―――
「あっもう俺の番で良いの?」
「うん、いいよ」
『(軽い!!?)』
まるでゲームのプレイヤーを交代交代にしているかのような気軽さでランページはマイクを持った。
「俺も何時かお前と走りたいとは思ってる、何ならマックイーンにアイネスとだって走りたいって思ってる。というかクラシックで走ってた面子とは走りたいと思ってる、別段ライアンが特別って訳じゃない―――まあ、追い付けるもんなら追い付いてみな、俺は何処までだって逃げてやるからよ」
「フフフッそう言えるのも今の内だよ」
一瞬の内だった。先程まで友人同士の語らいだったのが、ライバルの火花の散らし合いに変わった。それに遅れて記者たちはフラッシュを焚く、凄いギャップに奥山は喉を鳴らし、南坂は相変わらずですねと微笑むのであった。
『お二人の功績をたたえて、新たな勝負服が授与されます!!』
さあ来た、ランページが来たくなかった理由がこの勝負服なのだ。URAのデザイナーチームが自信満々だったとたづなは言っていたが……
「ゲッ……」
「どしたのラン」
「あそこ」
こっそりと視線で示すと、そこには何やら此方を何処か気迫の籠った視線を送っている一団があった。如何やらあれがデザイナーチームらしい……主に自分を睨みつけている、どれだけ着て欲しいんだ……取り敢えず、控室で確認だけはする事にしよう……。
「……ああうん、改善の意志は見えるわ」
控室で勝負服を開けてみたのだが……取り敢えず自分が敬遠する露出が激しい系の衣装ではなかった。今回のそれは一先ずドレスではなかった、言うなれば……マックイーンの別衣装であるエンド・オブ・スカイにもテイオーのビヨンド・ザ・ホライゾンにも似ている。膝辺りまでのパンツもあり露出も以前のものと比べると少ない。
「腹周りを出す執念は何なんだよ」
だがウエスト周りは確りと露出、肩出しの上着を羽織る形にしているがその下はかなりボディラインが出るようになっている。男っぽさは増しているが、これは何とも言い難い勝負服だ。この位ならば許容出来ると言えばできるのだが、これを着る位だったら元々の勝負服の方が余程良いとさえ思える。
「あっランページさんいかがでした?デザイナーチームの皆さんがあちらでご感想を聞きたがっているのですが」
「あ~……え~……うん、嫌いじゃない」
その言葉を聞いて、前回の勝負服が全否定だった事から大幅な進歩を遂げた!!と大喜びのデザイナーチーム。URAとして、デザイナーチームとしては新しい勝負服というのはそれまで持っていたウマ娘の別側面の魅力を引き出す、それによって既存の魅力を更に際立たせる事を求められている。確かにこれはそれが引き立つのは理解出来るのだが……
「だけどさ……」
ランページの言葉に思わず全員が硬直した。
「嫌いじゃないんだけど……あれ着る位だったら今の奴着るな」
そして崩れ落ちた。
「そんなに気に入らなかったのラン」
「いや、嫌いじゃないんだぜ?嫌いじゃないけど好きでもないすっげぇ微妙なラインだったから……」
「あ~……中途半端な感じだったんだな」
「奥トレマジでそれ、着てくださいお願いします!!って言われたらまあ……嫌々だけど着れるかな、でも自主的には絶対着ないタイプ」
「ありますよねそういうの、履き慣れないけど履かないといけない革靴みたいな」
「それだわ南ちゃん」
「革靴扱いされる勝負服って何なの」
チームリーダー「ドレス系は駄目だ、だからカッコよさを意識しよう!!そしてそこから女性らしさを引き出しつつ、カッコいい所を引き出すんだ!!今度こそ気に入ってもらうぞ!」
デザイナーチーム「おっ~!!!」
ラン「……ビミョい」
チーム「なんでだぁぁぁぁぁ!!!!??」
新人デザイナー「あの~……初期案のルドルフさんみたいな勲章を付けた軍服みたいにすればよかったのでは……」
ラン「それなら着てたわ、したがスカートじゃなかったら尚良し」