オッス! オイラはシュード! 15歳の男だ!
オイラは、新興国:若葉の国の代表マスターだ。何十年か前に行われた星降りの大会で、大樹の国のテリー選手が優勝した時に生まれた精霊が、オイラの住む若葉の国の精霊らしい。
らしいと言うのは、その頃まだオイラは生まれていないからだ。
あの大会は、今でもモンスターマスター界で語り継がれる程の名勝負で、優勝、準優勝共に成人に満たない姉弟だった。
枯れ木も、大木も、偉大なる幼き勇者達に負けた事もあり、国を挙げてマスター育成に精を出している。
その為か、今の星降りの大会は、魔境とも呼べるほどにレベルが高い。
そんな中で、オイラは十歳の時、若葉の代表に選ばれて、今大会で三位になった。一位は枯れ木、二位が大木、四位が大樹で、最下位が丸太だ。
優勝、準優勝した大樹と丸太は、やはりテリー選手とミレーユ選手が出場しなかった事によって、大幅な戦力ダウンしたそうだ。
また、大樹は預かり牧場の管理者が、モンスターを逃すと言う暴挙を犯した事も問題となっていた。
更に、丸太では、何やら国のヘソ? が何とかで、色々とトラブってぶっちゃけそれどころじゃ無かったらしい。
大会が終わった後は、最高のモンスターマスターになる為、世界中を旅して回っていたがある日、謎の旅の扉に誤って入ってしまい帰れなくなってしまった。
それが、今日のことだ。
「や、やっべ〜。何処だ? 此処……」
まぁ、モンスターマスターとして、世界各地にある旅の扉に入った経験もある。その為、こう言う状況は慣れている。
とは言え、帰りの扉が無くなったのは、人生で初めての事だ。
「さてと……今は夜だし、取り敢えず野営でもすっか……」
オイラが、旅の扉から放り出された場所は森の中だ。
周囲の小枝を拾い集め、枯れ木を見つけては"ふくろ,,から取り出した破邪の剣を手に伐採していく。
ふくろは、モンスターマスターを目指した時に、若葉の王様から頂いた物だ。容量は小屋一つ分。
その上に、"おおぶくろ,,と言うふくろの上位互換があり、容量も十倍以上もある。これは、貴族や大商人が持っているのを見かけた事がある。
しかし、一人旅するにはふくろ程度が、ちょうど良い。
破邪の剣を持っているのは、若葉の精霊:わたぽんの加護量が他国よりも少ないからだ。
生まれて来たばかりだから仕方ないが、若葉出身のマスターは最低限の自衛手段を持たなければならない。
わたぽんの加護は、マスターが死んだ後、死体と魂が旅の扉を通じて若葉にルーラする程度である。
そこで、若葉の神官長であるオイラの師匠が、ザオリクで蘇生するって流れだ。
しかし、今のオイラには死んだ後に通じる扉が無い。
簡単には死ぬつもりはないが、死んだ後故郷に戻れる確証も無いので、基本命を大事にしなければならない。
「さてさて……薪木も集まったし、"ギラ,,っと。ふぅー。あったかい……」
メラメラと燃える焚き火を見て一息。
モンスターマスターをしていて、いつか故郷に帰れなくなる事は承知の上だ。
焦っても仕方ない。何とかなるだろう。
焚き火を見て落ち着いていると、森の奥から消えそうな程微かに悲鳴が聞こえた。
「っ!? 悲鳴っ……!? 人、だよな……? 行ってみよう。デルパ! バウムレン、あっちまでオイラを連れてってくれ!」
『ガウッ!!』
金色の筒から合言葉と共に出てくるのは、キラーパンサーのバウムレン。
これは、生き物を一体封じ込める魔法の筒。イルイルとデルパの合言葉で、誰でも使えるモンスターマスターの必需品とも言える道具だ。
バウムレンに乗って数十秒。
彼は、星降りの大会前から居る親友だ。その背中は、何よりも安心感があり、その速度は疾風の如く目的地まで辿り着いた。
そこは村だった。
男と老人は殺されて、子供は緑の魔物に弄ばれながら、今にも殺されそうになっている。
女は、緑の魔物に集団で強姦され、泣き叫びながらその行為が終わるのを祈っている様な状況だ。
オイラは咄嗟に顔を顰めた。
似たような状況は、旅の途中でも良く見かけた。
人が人を犯す状況は勿論、魔物が人を犯す状況も、そこまで珍しい事でもない。
獣系は一部として、植物系の魔物は、食事の一環としてまるで犯されている様な人を見た事がある。
だけど、見ていて気持ちが良い事でもない。
此処が何処で、どんな風習があれど、目の前で泣き叫ぶ人を犯す緑の魔物は、どんな世界の人にとっても害悪そのものだ。
「"バギ,,……!!」
『GOBBッ!?』
「取り敢えず、死ねよ。まずはそれからだ。バウムレン、殺れ」
バウムレンが、緑の魔物達に向かって襲う。
緑の魔物は、どうやら数が多いだけの様だ。
バウムレンに対して数を用意し、武器を使って攻めるがまるで効果が無い。
それを見た他の連中は、犯した女を盾にしてオイラににじり寄って来る。その表情は、醜悪な笑みを浮かべていた。
「一丁前に人質ってわけね……。ギラ」
「イギャッ!?」
『GOBBAッ!?』
「信じられないか? オイラが人質ごと、お前等を攻撃したことが……。生憎とその人達とオイラ達は初対面。助ける義理はない。オイラがお前等を殺すのは、単純にムカついたからだ。
それに、この世界がどんな世界かは知らないし、可哀想だとは思うけど、魔物がいる中で自分の身を自分で守れない奴が悪い。
言葉が通じているから、分かるだろう? 死ねよ、害悪。ヒャド」
『GOBBッ!?』
人質が使えないと分かり、緑の魔物は女を置き捨てて逃げ出す。
そんな隙を見逃す訳もなく、氷の弾丸が魔物の頭部を貫通する。
その光景を見た他の魔物達は、我先にと一斉に逃げ出すが、バウムレンの速度とオイラの呪文に成す術なく倒された。
「ふぅ〜。終わった〜。アンタ、生きてるか?」
「ゲホッ……! ゲホッゴホッ!! 痛いっ……!!」
「生きてるな……。さっきはごめんね。ベホイミ」
「ゲホッ……!? キズがっ!?」
「じっとしていて、って……アンタは、オイラ達に何か用? 彷徨う鎧っぽい人」
後ろから忍び寄る様に歩くのを感じる。
振り向くと"さまようよろい,,っぽい見た目をした、人の様な気配をした生き物がオイラを警戒している。
「ゴブリンか?」
「いや? 多分、迷子の魔物使いだね」