迷子の魔物使い   作:火取閃光

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第10話

 女神官が泣きながら怒って近付いて来る。

 

「魔剣士さんっ!? もう! 心配したんですからね!!」

 

「おぉ! 女神官ちゃんの怒りながらの泣き顔可愛い!! こりゃ、男冥利に付くけど……もう暫く向こうへ行って。まだ、終わっていないから」

 

 オーガの時は涼やかな感じの表情だったのにシュードの今度の表情はさっきりよりも真剣味が強かった。

 

 ハイエルフ達やあのゴブリンスレイヤーも困惑を隠せない。シュードの意味する危険を測れずに周囲を警戒した。

 

「オイッ! そこのお前、お前だよ! さっきから視線がウザかったんだ! 何オイラ達へ傍観決め込んでいるんだ! さっさと正体見せろ!」

 

 シュードは死んだオーガの丁度真上辺りの空間を見た目ながら指差して文句を言い付ける。

 

 女神官達には見えない、感じられない何かがシュードには感じられたらしくて普段は見せないほど鬱陶しそうな表情で文句を言っていた。

 

『おやおや。これはこれは……。まさか見られている事に最初から気が付いて居られるとは……』

 

 突如として空間が歪むとそこに現れたのはデーモンロードに近いモンスターにハイエルフ達は悲鳴を上げる。

 

「気が付いたも何もあんなクソ雑魚の真上に隠す気ゼロの殺意をオイラに向けやがって……! ウザイったらねえよ!!」

 

『おやおや。知らない内に闘志が漏れてしまいましたか……。私もまだまだ未熟ですね……』

 

「そんで? オイラに何か用事?」

 

 さっきのオーガよりはかなり強いと言う気配はある。その為に闘気力を漲らせて質問を問い掛けるが笑われる。

 

『用があるのは其方では? ここは魔神王様の砦。私は魔神王様直属の側近であるグレーターデーモン。

 

 デーモンロード達を統べる者と言えばご理解出来ましょうか?』

 

 奴の言葉を理解出来るハイエルフやドワーフ、蜥蜴僧侶、女神官達はその存在の大きさや畏怖に怖気て腰を抜かし気が付いてしまう。

 

 ゴブリンスレイヤーもその名前は聞いたこともないがゴブリンではない事だけは確かだと警戒していた。

 

 グレーターデーモンと言えば魔神王に次ぐ実力者で魔神王に代わりデーモンロードを統べる存在として御伽話にも語られる伝説の存在だ。

 

 普段は人前に現れずデーモンロード達を指揮していたが次元転移者の気配を感じて顕現したのだった。

 

「あっそ。んで、戦るの? 戦らないの? どっち?」

 

 シュードとしては戦うなら戦うで、戦わないなら戦わないでどっちかハッキリさせて欲しかった。

 

『これは驚きましたね……。大抵の人間達や混沌勢でも私の名前を聞いて恐れないのは魔神王様だけです。

 

 流石は、次元転移者と言っておきましょうか。我等の常識が通用しない者よ』

 

「そう言うの良いから。面倒だし」

 

 こう言う展開はモンスターマスターの修行中で受ける依頼ではよくある事なので戦うなら手早くして欲しいと思った。

 

『もしや、先ほどのオーガを一撃で仕留めなかったのは私について話させる為でもありましたか……』

 

「片腕を斬り飛ばせば何か下手な事を言ってくれると思っていたけど、アンタの存在はオーガにも伝えなかったのね……」

 

 あんなに大きな隙を見せるオーガなんて初攻撃の1撃で仕留められると思ったが、あの視線について何か語ってくれるモンだと思い生かした。

 

『これは益々ここで殺す必要がありますね……。デーモンロード達よ我が眼前に現れよ』

 

 ズズズッと空間が捩れるとそこにはデーモンロードが10体は出現した。

 

 その多さと強い恐怖心にハイエルフはこれまでの疲労感と合わせてその場で吐いた。

 

 それをドワーフも蜥蜴僧侶達も彼女を責められない。それほど絶望的な実力差が生まれているのだ。

 

『貴方達人間も強い相手に複数で戦う事もあるでしょう? それなら、我々も数の暴力を使わせて貰います』

 

「魔剣士さんっ……!?」

 

 女神官は最早自身が信仰する慈母神へ祈りを捧げながら悲鳴に似た叫び声を放つが、シュードは逆に燃えていた。

 

「そんじゃ、オイラ達も久しぶりのモンスターバトルだ! 全員出て来てくれよ! デルパ!!」

 

 シュードが胸に身に付けた魔法の筒を全部撫でながら合言葉を言うと収納されたモンスター達が彼の側に出現する。

 

『っ!? な、なんですか!? このモンスターは一体何処から現れてっ……!?』

 

 グレーターデーモンは急に現れたモンスター達に驚愕した。

 

 次元転移者とは言えこれほど強力なモンスターを有しているとは知らなかった。

 

 出現したのはキングレオとロック鳥、バトルレックス、バウムレンの4体だ。

 

 バウムレンは移動用として持っていたとしてもシュードはこの面子であの魔境とも呼べる星振りの大会で3位を取った猛者達だ。

 

 キングレオもロック鳥もバトルレックスも???族に比べて育てやすくて耐性も優秀で強い。

 

 あの大会で負けたのはこの子達を育てきれなかったオイラの実力不足と経験の差だ。

 

 だから、日課として今でも彼等と戦って自他共に成長を促しているのだ。彼等が何が出来ないのかをしっかりと把握する為に。

 

「コイツ等はオイラの親友にして戦友であり家族だ。そっちがその気ならこっちも本業で相手をしようか!!

 

 みんな、久しぶりのモンスターバトルだ! ガンガン行こうぜ!! デーモン達を殲滅するぞ!!」

 

 そして、始まったモンスターバトルは今まで戦えずに居たフラストレーションを発散するかの様にデーモンロード達が無惨に殺されていく。

 

 そんな惨状を見てグレーターデーモンすら呆気に取られて固まっていると不意に寒気がした。

 

「マヒャド」

 

 それはバウムレンに乗ったシュードが一瞬の内にグレーターデーモンの側に近付いて放った呪文だ。

 

 その大冷気とも呼べる一撃は一瞬にしてグレーターデーモンの半分を凍り付かせて激昂させた。

 

『人間風情がっ……!!』

 

 凍った顔や半身を溶かす様に炎が包まれる。グレーターデーモンには余程余裕が無いのか先程の紳士めいた言動は見られなかった。

 

「どうした? 余裕ぶっている態度が崩れているぞ? それと真横には気を付ければ?」

 

『何をッ……!? クガッ!?』

 

 振り向いた時には青い手が目の前にありグレーターデーモンは生き絶えた。

 

 このパーティ最大物理火力のキングレオのもろば斬りの一撃で彼は壁のシミとなったのだ。

 

「あーあ、言わんこっちゃない。オイラ達は乱戦のモンスターバトルをしているんだよ? 

 

 それなら、デーモンロードを狩り尽くしたオイラのモンスター達がお前を攻撃しない道理はないだろう?」

 

 答えは帰ってこない。久しぶりの運動にキングレオのレオとロック鳥のロックン、バトルレックスのトルレちゃん達が集まる。

 

 今考えればレオ君とトルレちゃんはオーガよりも背丈が大きい存在だなと思いながらイルイルで収納する。

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