迷子の魔物使い   作:火取閃光

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第14話

 水の街。結局は知名度爆上げ作戦は失敗したモノの牛飼い娘さんが言うには天ぷらが美味いとの事を聞いて今度は観光に来ていた。

 

 小麦粉が荒いお陰で油で揚げる魚の揚げ物は確かに言うだけに絶品で美味しかった。

 

「さて、暇だし食後の釣りでも……とゴブスレさん一行じゃないですか!? みなさんも観光に? それともやっぱり依頼?」

 

「あぁ、お前は……」

 

 ゴブリンスレイヤーはいつもの様に魔剣士と言おうとしたがシュードは既に冒険者ギルドを退会している。

 

 だから、シュードの本業である魔物使いと呼ぼうとしたがこんな街のど真ん中でそれを口にすれば面倒は避けられない。

 

 そうしてゴブリンスレイヤーにしては他人に気を使いなんと呼ぼうかと悩んでいた。

 

「迷っているならシュードで良いですよ。もしくはオイラはもう冒険者じゃない何でも屋なのでそれでも良いです」

 

「それじゃ何でも屋、お前は観光か?」

 

「そうですね。牛飼い娘さんからのアドバイスを受けてこっちに来た感じです。

 

 牛飼い娘さんにはかなり世話になっていますからね。ゴブスレさん限定なら日給金貨1枚でオイラを雇えるけどどうしますか?」

 

「さ、流石に安過ぎやしないかいのう?」

 

 シュードの言う金額にある意味ドン引きしているドワーフ達銀等級。ある意味、白金等級を日給金貨1枚で雇うみたいなものだ。破格過ぎる。

 

「金貨1枚なんて白磁でも稼げる値段よ?」

 

 ハイエルフはあまりの破格過ぎる価格設定に商売下手なんじゃないの? と暗に苦言を呈した。

 

「誰でもって訳ではないので悪しからず。それでどうしますか?」

 

「雇おう」

 

「契約成立って事で」

 

 ギュッと握手を交わして契約を結んだ。

 

 後でアドベンチャーシートを書く時には何でも屋と契約と金額を記した旨を書いてもらえれば後は冒険者ギルドが勝手に処理してくれる。

 

 そして、後にゴブリンスレイヤーのアドベンチャーシートを確認した受付嬢は驚愕して腰を抜かした。

 

 今流行りの勇者一行と同等以上の力を持っている存在を日給僅か金貨1枚で契約したのだから。

 

 そして、オイラはゴブリンスレイヤー達と共に法の神殿にいる依頼人の大司教である金等級の剣の乙女の元へ向かったのだ。

 

「あら? 貴方は?」

 

「オイラの名前はシュードと申します。お初にお目にかかります、剣の乙女と称される大司教殿。

 

 この度はゴブリンスレイヤー殿の依頼で何でも屋として微力ながら戦力に加わる次第にございます」

 

 片膝で跪き手を胸に当ててお辞儀をして挨拶を行う。

 

 格好とのギャップが激しいがオイラが過去に習った目上の方にする礼儀作法を行うと大司教は戸惑った。

 

「何でも屋さん、なのかしら?」

 

「はい。その通りでございます」

 

 普段のマイペースな面持ちとは違う所謂他所行きの態度にハイエルフや女神官達は誰だコイツ状態で固まっていた。

 

 大司教の話を聞き依頼内容を確認したオイラ達は地下水路へ続く道を歩いて行き何度もゴブリン達を撃破したのだった。

 

「それにしてもさっきのアレは何?」

 

「さっきのアレとは? あぁ、アレは昔習った唯の礼儀作法に過ぎませんよ? 

 

 ゴブスレさんの依頼人と言う事は失礼があってはなりませんからね……。最低限でもやっておこうと思っただけですよ」

 

「まるで貴族の方みたいでしたよ? 大司教様も驚かれてましたし……」

 

「みなさん、忘れているかもですけどオイラ地元じゃ伯爵位を持つマジ者の貴族ですよ? まぁ、元孤児が付きますけど……」

 

「あっ!? そうでしたね……」

 

 度々忘れてしまうシュードの事情に女神官共にハイエルフ達も流石に反省の色を見せる。

 

 地下水路を進んでいくとゴブリンの襲撃が何度も起こり、今日だけで5回以上も襲撃に遭い辟易としていた。

 

 丁度そんな時だった。地下水路全体から激しく水が流れる様な音が聞こえた。

 

 それに警戒して周囲を見渡すとゴブリンスレイヤーが水路に何かを気が付き松明の光を当てるとそこには船を乗るゴブリン達が近付いていた。

 

 弓矢を構えるゴブリン達に気が付き女神官はプロテクションを掛けて守りを固めた。

 

「ゴブスレさん、あの船邪魔なので沈めても良いですか?」

 

「行けるか?」

 

「えぇ、ゴブリン共々灰にしてやりますよ」

 

 そして、オイラは呪文を放つ角度と船に当てる場所を決めて魔力を溜める。

 

 この時点で魔力に敏感なハイエルフとドワーフが莫大な魔力量の収束に冷や汗をかいた。

 

 両拳を当ててから頭上で開く様に溜める紅蓮の炎。溜めた両手を行き来する紅蓮の炎を再び集めて放つ。

 

「ベギラゴン」

 

 紅蓮の炎が極大の閃光となり船諸共にゴブリン達を灰にしていく。

 

 丁度水路も真っ直ぐだったので入射角を少しずつずらして放つベギラゴンに水路の水さえも蒸発した。

 

「お、お主っ……!? この水路を氾濫させるつもりかぁっ……!? ドアホォッ……!?」

 

「んん? ちゃんと手加減しましたよ? 大体本気の6〜7割程度しか溜めていないですよ。

 

 それに、本気なら周囲の水路や壁も含めてこの水路毎閃光で溶けてます。

 

 オイラの世界で過去に炎熱系最強呪文と称されたアレがあの程度だと思われるのは心外ですよ」

 

「この魔法、良いな。後何発行ける?」

 

「あの程度の溜めの威力なら10〜12発程度ですかね……。最近成長期なのか魔力量がちょっと増えたんですよ」

 

 あんな魔法が後10発以上放てると言うワードにゴブリンスレイヤー以外は戦慄した。

 

 ゴブリンスレイヤーとしては少々魔力を溜める時間はあれどその時間は許容範囲内でアレだけの火力が出る魔法は凄い便利だと思った。

 

 魔法を道具の一種だと思うゴブリンスレイヤーにとってはベギラゴンは破格の魔法で初めて魔法を覚えたいと思うほどだった。

 

 しかしその後、白き鱗の沼竜事アリゲーターが出現した。どうやらかの声から発せられる言葉には決死の覚悟が聞こえた。

 

 逃げるゴブリンスレイヤー達を他所にシュードは白き鱗の沼竜へ近付いた。

 

「何やっているのよ!? 早く逃げなさい!!」

 

 ハイエルフの怒鳴り声とも警告とも取れる発言を無視してシュードは沼竜に語り掛けた。

 

「沼竜よ、鎮まれ。オイラ達はあの緑の小人ゴブリンとは違いお前の敵ではない」

 

「ガァー!!」

 

「お前がいるとは思わなかった。そうじゃなければベギラゴンは控えるところだった。

 

 ベギラゴンが当たったのだろう。痛かったろう。傷を見せろ。水の街の守護竜よ、お詫びにその傷を治癒してやる」

 

 そうして沼竜は静かになりベギラゴンで火傷した傷を見せる。咄嗟の危機察知能力で避けたからだろう。左足が焼け焦げていた。

 

「ベホマ」

 

 単体治癒系最高魔法ベホマを使い焼け焦げたはずの足が徐々に戻っていく。傷が癒える事にシュードの言葉に嘘がない事が分かった。

 

 ゴブリンスレイヤー達もその光景を見て正しくシュードが賢者でありモンスターマスターである事が垣間見れた瞬間だった。

 

 そして、傷が癒えた白き鱗の沼竜から情報を得てこの水路の奥から小舟に乗ったゴブリンが湧いて出てくる様になったらしい。

 

 一度情報を整理する必要があると判断したゴブリンスレイヤーは撤退を決意してオイラ達は撤退した。

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