迷子の魔物使い   作:火取閃光

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第15話

 地下水路から撤退をしたオイラ達はまず食事を摂った。

 

 その上で白き鱗の沼竜事水の街の守護竜アリーゲータから受けた情報を共有した。

 

「ハァ!? つまり、あの大司教、全部知っていた訳っ!?」

 

 テーブルの上に身を乗り出す様にしてハイエルフはシュードが動物達から聞いた情報に怒鳴り込む。

 

「そんな、大司教様も昔ゴブリンの被害にっ……!?」

 

「沼地の……いや、守護竜じゃったのう。アレが言うにはここ最近になって船を使うゴブリンが増えたつぅこった。それでよいのじゃろ?」

 

「そう言うことですな。大司教殿より水の街の治安を地下水路から守る使命を受けていた所にゴブリンが現れた。

 

 そして、地下水路の奥では船を使うゴブリン達が湧いて出た為に退治を行っている時に我等と遭遇して脅かした。そう言うことですな?」

 

 あの守護竜が言うにはそうらしい。最近と言うよりは結構前からゴブリンが増え始めて最近船持ちが現れたらしい。

 

「そう。水の街に現れたゴブリンの死体はフェイク。街の動物達に聞いた感じ最近、邪教徒の集団が出入りしているらしい。

 

 そこで水の街の地下水路にあるダンジョンに目をつけて転移系のアイテムでゴブリンを召喚し、造船技術を与えて今に至る感じだね。

 

 邪教徒の集団は今、水の街にいる勇者一行がなんとか対応しているらしいけど、ゴブリンの方はまだらしい」

 

「つまり、ゴブリンだな」

 

 ゴブリンスレイヤーの相変わらずさにどっと笑い声が溢れた。

 

「そう言う事ですね。地下水路に住むネズミ達に聞いた話だとゴブリン達が出てくる大きな鏡の前には、大きな目玉の化け物が門番の様にいるらしいです」

 

「なるほど……。その門番の性能は?」

 

「そこまでは……。ただ、ネズミ達の同胞が誤って門の付近に入ってしまった時に何やら光線を放ちドロドロに溶かしたらしいです」

 

「そうか……。取り敢えず人がゴブリンに知恵を与えている以上、シャーマンではなくてチャンピオン相当が複数いると考えた方が良い。

 

 それも地下水路の罠も使ってくる事を考えるなら……密閉空間での毒などが考えられる。

 

 一旦、その大きな目玉の化け物は後にして徘徊するゴブリン共を殲滅してからもう一度考える事にしよう」

 

 考えの方針が決まり各々が準備を進める。

 

 ゴブリンチャンピオンとはボブゴブリンの上位種でトロール以上の体躯を持つゴブリンだとか。

 

 なのでスタミナや回復ポーション、解毒多めで各々が持ち、ハイエルフの弓矢のストックは手持ち無沙汰のオイラが3つ持つ事になった。

 

 そして、地下水路のダンジョンを探索していく。

 

 所々には夜目が効くゴブリン達なのに篝火を焚いた後の煤が見つかり動物達情報の真実味が増していく。

 

 そこで一室、気になる部屋に入ってみるとそこには鎖で縛り上げられた女性の、骸骨死体があった。罠だ。

 

 閉められて閂をさせて壁の隙間から毒が噴射される。密閉空間時の罠対策は事前段階で話し合われている。

 

 ゴブリンスレイヤーが毒に敏感なカナリヤを持ち、毒が出る隙間にはハイエルフとドワーフ突貫なコンクリートで塞ぐ。

 

 その際にはオイラが風魔法の応用で周囲の毒をかき集めて隙間へ返して塞ぐので、逆噴射したみたいにゴブリン達が毒でやられた。

 

 そして、閂同様に扉が簡単に開けない様にする為に扉の前には木造の長椅子を閂代わりにする。

 

 そして、いつでも反撃出来る様にプロテクションを壁代わりに展開して扉を破るゴブリンをハイエルフが仕留める作戦だ。

 

 全員、事前に対策していたお陰で焦る事なく自分の役割をこなす事に成功した。

 

 密閉空間の罠に掛かったのもわざとだ。徘徊するゴブリン達を誘き寄せる為にこちらから罠へ入った。

 

「何でも屋、ここはまだ水の街の下だ。火でも水でも毒でも無い魔法はあるか?」

 

「誰にもモノを言っているんですかい? こちとら半人前でも賢者を名乗らせて貰っているんですよ。あるに決まっているでしょう!」

 

「分かった。それならハイエルフが扉を破るゴブリンに弓をかけ俺達も投石で足止め。長椅子が破られたら任せた」

 

「了解。とびきり良い魔法をかましてやりますよ」

 

 そして、扉が破られてゴブリン達が何体か顔を見せる。長椅子が邪魔で扉が開かない事に苛立ちがあるらしい。

 

 そこをハイエルフが弓矢で頭を射抜くがゴブリン達の軍勢は自身達の死体をモノともせずに次々と進軍して来る。

 

 次第に勢いは増して行きとうとう長椅子の関貫代わりは破られてプロテクションが張られた壁にゴブリンの軍勢が激突する。

 

「今だ! 何でも屋!!」

 

「我が身に宿る風の精霊よ。今こそオイラ達の風で敵を切り刻む時だ。皆々様に見せてやろう! オイラ達の風を!! バギムーチョ!!」

 

 両手を宿る風の奔流をプロテクション越しに放つとそこには巨大な風の渦が発生する。

 

 風の上級呪文バギクロスよりも上の最上級呪文バギムーチョ。今のオイラが使えるただ1つの最上級呪文。

 

 賢者を名乗るには最上級呪文の1つを身に付ける必要があるがオイラの場合は他とは別にもう1つ覚える必要があった。

 

 それは生まれ付き右肩にある風の精霊のアザだ。これは文字通り風の精霊のその身に宿す事と同義でバギ系の適性が跳ね上がる。

 

 それこそ上級呪文であるバギクロスを習得した時点でバギムーチョが放てる位には習得難度が低くなる。

 

 だから、オイラは半人前の賢者だと名乗っているのだ。だが、モンスターマスターが本業である以上今はそれで良いと思っている。

 

 莫大な風の暴力がゴブリン達を吸い込んでは細切れに切り刻んで死んでいく。

 

「何でも屋、これはっ……!?」

 

 ハイエルフは自然に囲まれて生きていき2000年も育ったからこの風の正体が分かる。

 

 シュードの風は故郷でもそう感じた事が無い暖かで包まれる様な大自然の風に自然と涙が溢れる。

 

 風が止んだ頃にはゴブリンの軍勢は散り1つ残らず全てが切り刻まれて何も殘らなった。

 

 水の街が上にある以上、上も下も削りすぎる訳には行かなかったからシュードは持ち前の魔力操作に風を制御した。

 

「どうでしたかい? オイラ達の風は?」

 

「あぁ、凄かったな」

 

「平地だと味方も巻き込んでしまうのがちょっと難点ですが、こう言う密閉空間のプロテクションありならそうでも無いでしょう」

 

 そして、部屋を出たオイラ達は探索を進めてネズミの情報にあったメドーサボールみたいな混沌の眷属と遭遇する。

 

 しかし、ここまで来ると流石に水の街から大分離れた位置となりイオナズンで撃破する。

 

 そして、最終戦でもバギムーチョで粗方片付けた後の掃討戦になり今回の冒険は終了となった。

 

「お陰で助かった。恐らくお前が居なければ相当危うかった」

 

「いえいえ、こちらこそ。今後ともご贔屓下さい。ゴブスレさんなら日給金貨1枚で雇われますので」

 

「その時は是非頼む」

 

「それでは、また」

 

 ゴブリンスレイヤーは今回の報告やらでまだ水の街にいるらしく、オイラは大分開けてしまった家に帰るのだった。

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