迷子の魔物使い   作:火取閃光

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第18話

 野営跡地での休憩を経てゴブリン達が籠城したとされる洞窟へ潜入する。

 

「ちょっとの間、寒いですが我慢してくださいね。ヒャド」

 

 水深膝から腰に掛けて距離にして5m前後ある水溜りの下にはご丁寧に槍が刺さっているとゴブリンスレイヤーの指摘があったので、温風を解いてヒャドで水溜り自体を凍らせた。

 

「う、ゔぅ……!? 寒いっ……!? 何でも屋殿、早く温風をっ……!!」

 

「分かっていますよ。これでどうでしょう?」

 

「ふぅ……。拙者、雪山登山時には何でも屋の殿が居ないと生きていけないかも知れませんな……」

 

「戦友と友人割引で特別価格でお値段はご相談になりますよ。ゴブスレさん案件ならなんと日給は金貨1枚です。安いでしょう?」

 

「ハッハッハ! その時は是非によろしくお願い致します」

 

「それにしても本当に良いのですか? 杖術の訓練を月給金貨3枚にして下さって……」

 

「オイラも毎日訓練させてやる訳じゃ無いからそのくらいで良いのさ」

 

 そして、洞窟を進んでいくとゴブリンスレイヤーがゴブリンを発見して戦闘に入る。

 

 今回のオイラの役割は女神官の護衛と荷物運びがメインとなっている。

 

 場合によっては荷物を下ろして中衛遊撃として全体のサポーターとしての役割を求められているが今回は護衛で済みそうだ。

 

 女神官のホーリーライトで目潰しを喰らったゴブリン達を殲滅していくがゴブリンの弓がハイエルフに当たったらしい。

 

 直ぐにハイエルフが弓矢を抜いたが鏃が取り残されてしまったらしい。このままでは治癒出来ない。

 

「このままでは足が腐ってしまう。引き抜くぞ?」

 

「ゴブスレさん、ここはオイラがやります。大丈夫、普通にやれば激痛でも痛みはそんな無い方法ですので」

 

 そう言って荷物を下ろしたシュードは道具袋から裁縫箱を取り出した。

 

「えっ? なにそれ……??」

 

 流石のハイエルフもそんな物を出して何をするのかサッパリ分からないと首を傾げた。

 

 シュードは裁縫箱から医療用の針を取り出すと滅菌の為にメラの応用で針を温める。

 

「滅菌処理したこの針を傷口付近に刺して治癒の力を込めてから鏃を抜きます。擬似的な麻酔です。少しは痛いですが我慢してくださいね」

 

 そして、鏃の抜き取りが実行される。チクッとした痛みにビクッとするが思ったほどではない。

 

「鏃は無事に抜けました。今、回復を行いますね」

 

 そして、シュードがホイミをハイエルフに掛けるとほっとしたのか彼女も力が抜けた。

 

「ありがとね。全然痛く無かったわ」

 

「いえいえ。鏃を抜く痛みはオイラも分かります。だから、裁縫箱には治療用の針は必ず持参しているんですよ」

 

「なるほど、回復の奇跡にはこう言うやり方があるのですな……」

 

「まぁ、今回のは小僧にしか出来ない方法よ。あんまり参考にはならないのう」

 

「でも、麻酔に治療用の針は勉強になります」

 

 ハイエルフの治療が終わると刺した針は水で洗い再度滅菌処理してから裁縫箱にしまい道具袋へしまう。

 

 洞窟の中を歩いて行くとそこには扉がありゴブリンスレイヤーが蹴り飛ばして中に入る。

 

 その中には祭壇と思われる場所の上に依頼人の探していたご令嬢が裸で寝かされていた。

 

「息は……あるわね。これで一応は依頼達成ね」

 

 汚れは目立つモノの暴力を受けた感じではなく、裸にされて供物にされた感じだ。

 

「それにしてもここはなんでしょうかな?」

 

「邪教徒の祭壇……何かの儀式でもするのかのう?」

 

「これ、見てください」

 

 ご令嬢の首には邪教徒の供物の象徴でもある様な焼印がされていた。

 

「取り敢えず村に帰ってから今後の対策をしよう」

 

 そう言って荷物から厚手のローブを取り裸のご令嬢にくるんでから村まで下山した。

 

 ご令嬢も余程疲れていたのか下山中は起きず村長に用意してもらった部屋で目が覚めたらしい。

 

 そして、ゴブリンスレイヤーが彼女から凡その顛末を聞いてから作戦会議の為に下は下りた。

 

 作戦会議の時には女神官もあの焼印を見て神官としての視線から意見を伝えた。

 

 ゴブリンスレイヤーもそれを聞いた上でゴブリン達の根城がさらに山奥にある神代の時代に使われていたドワーフの砦だと想定した。

 

 ゴブリンスレイヤーが考えた作戦を伝える丁度そんな時だった。ご令嬢が下に降りて自分も参戦すると言ってきた。

 

 勿論、それはダメだとハイエルフは言い依頼とは言えまずは親御さんと話し合うべきだと伝えたが意志は硬い様だ。

 

「全てを取り戻すんだっ……! 私があそこで失った全てをっ……!!」

 

 彼女の面構えには覚えがあった。それは故郷のシュードと仲が良い貴族が貴族たり得る為に行う決意だ。

 

「ハイエルフさん、多分ご令嬢は貴族としての誇りを取り戻す為に行こうとしているんだと思います。

 

 その誇りとは地位や名声なんかもあると思いますが、この場合は血や家訓、受け継がれる武具もそれに値します」

 

「でも、誇りと命じゃ……」

 

「貴族って面倒な生き物なんですよ。誇りのために命を懸ける。多分、彼女からしたらそんな感じなんでしょう」

 

「……ふむ。勝手に行かれて作戦がぐちゃぐちゃになるくらいなら目の前で見守りましょう」

 

「……はぁ。分かったわ」

 

 諦めたハイエルフが自身の意見を折りご令嬢の参戦が許可された。

 

 そして、ゴブリンスレイヤーの作戦である邪教徒に扮してハイエルフ達を手土産にする作戦を実行したのだった。

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