迷子の魔物使い   作:火取閃光

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第2話

 ゴブリンと言う醜悪なモンスターに強姦された女達の介抱をしながら彷徨う鎧の様な男は警戒する。

 

「魔物使い?」

 

「そう。それで、結局のところ、アンタは誰? 何用?」

 

 敵じゃないと良いと思いつつも敵だったら即時争わなければならない。死体アサリなら許容範囲だ。

 

「……俺は"ゴブリンスレイヤー"と呼ばれている。冒険者ギルドの依頼で、ゴブリンを殺しに来た者だ」

 

「ヘェ〜。となると、さっきの緑色の魔物が、ゴブリンって奴なの?」

 

 言語が通じている。

 

 ゴブリンを狩る者と言う異名に冒険者ギルドと言う組織めいた言葉。そのギルドとやらは依頼を斡旋する場所と言う事が分かった。

 

「……知らないのか?」

 

「ご期待に添えなくてごめんね」

 

「……そうか」

 

 どうやら落ち込んでいる様子。見かけに寄らず鎧なのに表情が豊かだなっと思った。

 

「アンタ、見かけによらず悪い奴って感じがしないね。バウムレン、出て来て良いぞ」

 

「ガウッ!」

 

「っ!?」

 

 突然現れた全長5mに届く大きく獰猛なキラーパンサーを見て初めてゴブリンスレイヤーは警戒にして武器を構える。

 

「そう、警戒しないでって。さっきも言ったけど、オイラの使い魔にして親友のバウムレンさ。バウムレン、さっきの緑色の奴等は?」

 

「ガウッ!!」

 

「そうか、ありがとう。取り敢えず、この周辺にいる奴等は殲滅したってさ」

 

 流石、バウムレン。仕事が早いと思いその事を伝えた。

 

 こっちのゴブリンは地方の訛りに加えて言語圏が違うみたいで会話が通じないから鳴き声としての声しか伝わらなかった。

 

 モンスターマスターでも得意不得意なモンスターはかなり多い。

 

 オイラは基本的に獣系ならほとんど会話可能だからゴブリンが獣系ではない事が分かってはいる。

 

「……本当か?」

 

 オイラの説明を受けても疑心暗鬼を起こしているゴブリンスレイヤーだがこれは仕方が無い事だ。

 

「まあ、魔物の言葉が分からないと本当かどうかなんて判断出来ないもんね……。取り敢えずオイラ達は嘘ついていないよ。疑うなら好きにして」

 

「……分かった」

 

 あっけらかんにしている態度を取っていると渋々武器を下ろして少し距離をとりながら座り込む。

 

「それよりもさっき言ったけどさ……オイラ達、迷子なんだよね」

 

 オイラはゴブリンスレイヤーに旅の扉での不慮の事故について説明した。

 

 ゴブリンスレイヤーは終始首を傾げていたがオイラ達が真面目に言っていると伝わったのか、彼が拠点としている街まで案内してくれた。

 

 街まで行く間、オイラ達はバウムレンの背中に乗り込み大地を駆け抜いた。

 

 ゴブリンスレイヤーは街から歩きで半日掛けたそうだが一刻もしない内に街に着けると言っていた。

 

「……しかし、このキラーパンサーと言うモンスターは……速いな」

 

「そうだろ! オイラが、もっとガキの頃からの親友でな。彼に並ぶ素早さを持つモンスターはそうは居ないんだ!」

 

 バウムレンはオイラが孤児だった時にベビーパンサーとして捨てられていた時からの仲である。

 

 オイラが大体、5歳くらいの頃に僧侶見習いや他の職業も兼ねていた時にモンスターマスターの適性が判明したのが彼だった。

 

 その時は今よりももっとガリガリで捨てられた子猫みたいな体躯だった彼がこんなにも立派になってオイラは少し涙目になった。

 

「……だが、ゴブリンは狡猾だ。お前を殺してこのモンスターを従えるかも知れない……」

 

「それは無いかなぁ」

 

「……何故そう言える?」

 

 ゴブリンスレイヤーはゴブリンの狡賢かに何度も辛酸を舐めさせられたから彼が否定する理由を求めた。

 

「オイラ達は別に何か特別な契約の元、一緒にいるわけじゃ無いからね。彼と話し合い過ごしお互いを理解し合って今に至る。

 

 例えばそのゴブリンによってオイラが殺されたとしても彼は黙って従うほど従順でも無いからね。

 

 魔道具で無理矢理に契約でもするなら彼はそれに耐えながらそいつをぶっ殺す精神力位持っているさ。な?」

 

「ガウッ!!」

 

 モンスターマスターと従えるモンスターは強い絆で結ばれているだけで何か特別な儀式がある訳ではない。

 

 だからこそ、そのモンスターにとって何が嫌なのか? 何がしたくないのか? どう言うことがプライドに反するのか? しっかりと話し込む必要がある。

 

「……分かった。しかし、これから向かう街では魔物使いとは言わない方が良い。

 

 お前の世界では知らんが魔物使いはあまり良いイメージでは無いと聞いた事がある……」

 

「あぁ、そっか〜」

 

 ゴブリンスレイヤーは彼等程までに強い絆を見たことがない。だからこそ、親切心で伝えるとシュードは落ち込んだ。

 

 彼にとっては魔物使いと言う職業が誇りなのだろうが、こっちの世界では基本悪党しか使わないから誤解を受けると伝えた。

 

「……もう直ぐ着く。あそこだ。此処からは徒歩で行く。ソイツはどうする?」

 

「こうするさ。イルイル」

 

「っ!? 魔道具か?」

 

「まあね……。それよりも早くギルドへ連れて行ってよ」

 

 金色の筒にバウムレンを収納してオイラ達は街の中へ入り込み冒険者ギルドを目指した。

 

「ようこそ! 冒険者ギルドへ! あっ! ゴブリンスレイヤーさん、早かったですね」

 

「……ああ、俺が着く前にコイツが倒していた」

 

「? この方は?」

 

 初めて見る顔の少年にゴブリンスレイヤーとは顔馴染みの受付嬢が首を傾げる。

 

「オイラはシュード。冒険者になりに来ました。手続きして貰えますか?」

 

「分かりました! ゴブリンスレイヤーさん、報酬はどうなさいますか?」

 

「全額、コイツに渡してくれ」

 

「じゃあ、道案内分として半分、彼に渡して欲しいです。迷子のオイラを親切に連れて来てくれたのでよろしくお願いします」

 

「っ!? 分かりました! では、その様にします」

 

 ゴブリンスレイヤーに対してとても親しそうな受付嬢はオイラを他の受付嬢の所まで案内して業務に戻った。

 

 どうやら目の前の受付嬢は新人でさっきの受付嬢はベテランの人だったらしい。

 

「それでは手続きを行います。冒険者ギルドでは依頼達成がスムーズに行われる様に個人名では無く職業名やその人物の特徴を呼び名として登録します。

 

 例えば、先程の方でしたらゴブリンスレイヤーという感じです。シュードさんは剣をお持ちですね。剣士でよろしいですか?」

 

「えーっと、魔法もそれなりに使える方なんですが自分に出来る事全て言わなくちゃダメですか?」

 

 正直言えば魔物使いがメインで剣と魔法は割と自衛手段でしかないから全部は伝えたくは無かった。

 

「別に構いません。ただ、ギルドとしてもシュードさんが出来る事を知っておけば依頼の斡旋や他一党への紹介なども可能です。

 

 それではシュードさんを魔法剣士と登録します。魔法は何回使えますか?」

 

「えーっと……(広範囲・高威力なら)4〜5回くらい?」

 

 ベホマラーで大体4回、ベギラゴンで大体5回程度で魔力が尽きる。

 

 これでも自分の養父である神官長やモンスターから師事を得て10年近く修行を積んでいた。

 

 その為にオイラの魔力量は熟練の魔法使いの領域に足を踏み入れていた。

 

「4,5回もっ!? 期待の新人ですね!」

 

 受付嬢は15歳と言う若さでそれほどたくさんの魔法を使う魔法剣士と聞いてざわめいた。

 

「そ、そう? オイラ、事故でこの辺りに転移? して来たっぽいんだよね……。だから、それについてよく分からないんだよ」

 

「そうですね……。普通、新人の魔法使いさんだと1回、多くて2回程度が普通です。4〜5回ともなればベテラン魔法使いさんと同じ程度ですね!」

 

 内心、危なかったと思いヒヤリとした。

 

 正直、魔法を回数で覚えていたりはしない。

 

 何となく感覚で魔力量を把握している。

 

 今回は、魔力を多量に消耗する呪文をベースに考えていたがギラやホイミなどの下級呪文だった場合、数10回は超えていただろう。

 

 ニコニコと笑う受付嬢の視線に耐えられずオイラは魔法剣士と言う職業名に決定してその場を笑って誤魔化した。

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