迷子の魔物使い   作:火取閃光

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第20話

 ありふれた春の1日に外へ出てはモンスター達と共に日向ぼっこをしていると冬の間限定で同居人だった蜥蜴僧侶が冒険者ギルドへ向かっていった。

 

 やはり雪山のご令嬢の一見以降、温風生活が快適だったらしく冬の寒い時期限定で同居人として住んでいた。

 

 あの一見以降、ご令嬢は冒険者を支援する立場で活躍をするらしく手紙が届いた。

 

 まぁ、シュードの場合は次元転移者の所謂他国の貴族である事に相当ビビっていたらしい。

 

 どうも件のご令嬢は子爵位の家系だったらしく、住民手続きの際に一応書いた長ったらしい貴族名を見て終始謝罪していた。

 

 そんなオイラが今、何をしているのかと言うとこっちに来たばかりの頃にゴブリン達から助けた女神官さんの元臨時パーティから指導の依頼の相談を受けていた。

 

 彼等はあの一見以降、別の男神官と遊撃の女槍使いを仲間にして地道に活動をしていたらしい。

 

 その甲斐もあって今は黒曜等級で白磁等級を抜けたらしい。ただ、実力不足感が否めないと言う事で相談を受けていた。

 

「ほーん。それでオイラに技術指導を? 近い内に冒険者ギルドで銀等級による訓練が無料で開始されるのにわざわざお金払ってまで教えを乞うと?」

 

「それは……」

 

「分かっています。それでも、私達は強くなりたいのです!」

 

「黒曜等級のパーティなら日給金貨10枚だな。1人金貨2枚として」

 

 シュードの言葉に剣士や武闘家、女魔法使い達は顔を顰める。払えない額では無い。

 

 寧ろ安いくらいだ。それでも、黒曜等級とは言え常に金欠には仰いでいる。

 

「ゔぅっ……!?」

 

「もうちょっと負けて貰えませんかっ……!?」

 

 あのプライドが高過ぎた女魔法使いも頭を下げるほど懇願する。

 

 学院で天才と呼ばれた彼女はゴブリンに負けてゴブリンスレイヤー達に助けられたと笑い者にされた。

 

 その屈辱は今でも忘れない。それでも、剣士や武闘家達と懸命に仕事をこなしてきたから今の自分があった。

 

「まぁ、あの時助けた子達がプライドかなぐり捨てて教えを乞うたのだから割引価格で良いよ。月給金貨10枚で訓練を受け放題。これで勘弁してやる」

 

「そ、それはっ……!?」

 

「本当に良いのですかっ……!?」

 

「まぁ、商売としては落第点だろうが顔見知りな上に、まぁ構わないさ。

 

 オイラもその気持ちは通って来た道だからな。仕事の都合上、毎日は見れないからこの値段で良いさ」

 

 まずは教え込む相手をチームとして分ける。近接戦闘タイプと後衛タイプ。

 

 近接戦闘タイプには男剣士と女武闘家と女槍使い。後衛タイプは女魔法使いと男神官だ。

 

「まずは近接チームから教える。その間、後衛チームは走って体力を付ける事だ。

 

 術や奇跡の使えなくなった奴ほど貧弱なのは2人も知っているだろう? まずは基礎体力を付ける」

 

「わ、分かったわ」

 

「わ、わかりました……」

 

「最初から全力じゃなくて良い。長い間体を動かしながら考える意識を持って走りなさい」

 

 そして、女魔法使い達が牧場を走っている間に剣士達の訓練を開始する。

 

「先ずは武闘家ちゃん。君の強みは女性本来のしなやかな動きと素早さだ。

 

 逆に弱みはパワー不足。得意を伸ばすか苦手を消すかどっちが良い?」

 

「うーん……。得意を伸ばしたいです」

 

「なら、まずは君の武術を根本から見直す事だ」

 

「っ!? しかし、これは父が残してくれたっ……!?」

 

 武闘家ちゃんの拒絶反応が見て取れる。余程大事な武術らしい。

 

「軽く見たけど君のそれは対人向けの武術だ。今後の依頼として傭兵や護衛の類を好むならまだしもモンスターには少し改善が必要だ。

 

 何、大きくは変えるつもりはない。対人戦闘とモンスター戦闘では狙う場所が違うだけだ」

 

「狙う場所、ですか……??」

 

「まず前提に人とモンスターの大きな違いとは何か分かるかい?」

 

「……見た目、ですか?」

 

「まぁ、確かに見た目でもあるか……。つまり、大前提として大きさや形が違う事だ」

 

「大きさや形だって? そんな事、俺達でも分かっているさ!」

 

「馬鹿にしないでよね!?」

 

 馬鹿にされたと思い剣士くんや女槍使いが怒鳴り込むがこれが重要な事だとシュードは諭した。

 

「いいや、結構当たり前な事なんだけど……。例えばトロールを想像してみて。

 

 トロールの見た目は人型二足歩行だけどデップリとした腹に武闘家ちゃん達の2〜3倍は大きい。

 

 そんな時にまず何処を狙うのかが重要だ。武闘家ちゃんなら何処を狙う?」

 

「……お腹ですか?」

 

「それはなんで?」

 

「なんでって……お腹には重要な臓器が多く含まれているから?」

 

 シュードの間髪入れない質問に武闘家ちゃんは困った様に何も考えず話した。

 

「でも、トロールはデップリとした体型だよ? それはつまり厚手の鎧を着込んでいるのと同じさ。

 

 パワーがあって一撃で相手の臓器を破壊出来るならまだしも、君にはその力が無いよね?」

 

「それはっ……!? はい……」

 

「これは、剣士くんや槍使いちゃんにも言える事。まずは相手の情報を瞬時に見極める重要だ。

 

 その上で自分に出来る事をやっていくのが戦いの大前提。これを出来ないまま戦えば命を落とす事は必須さ」

 

 相手の弱点を突き自分の強みを活かす為にはどうするのかを瞬時に判断する事が大事だと話した。

 

「なるほど……。それでは、何でも屋さんが私ならどう動きますか?」

 

「オイラなら、そうだな……。まずは相手の膝を破壊して身動きが取れない様に動くね。

 

 人型二足歩行のモンスターにしろ大概のモンスターには関節と言う曲げ伸ばしが出来る部分がある。まずはそこを潰す。

 

 そうすれば例え破壊とまでは行かなくても、転ばせる事で他の仲間が攻撃しやすい様にはなるだろ?」

 

「っ!? 確かに!?」

 

「だから、オイラが思う君達パーティは前衛剣士くん1人に遊撃2人と後衛2人がベストだと思う。

 

 武闘家ちゃんはパワー不足問題……これはそれ相応の装備でどうとでもなる。

 

 それを解決するまでは剣士くんのサポートと後衛の護衛に専念した方が良いと思う」

 

「……そう言う考え方があるとは脱帽です」

 

 まるで自分に無かった考え方に武闘家ちゃんは感心した。

 

「まぁ、その辺はパーティで話し合って決めてよ。次に相手の行動に制限を掛けたらお腹では無く頭か腕のどっちかを狙うべきだね」

 

「頭か腕……」

 

「槍使いちゃんもそうだけど腕が使えなくなれば、更に行動に制限が掛かる。つまり、戦いやすくなる。

 

 頭はむしろガンガン狙うべきだ。でも、相手もそれは嫌がるから膝と腕を壊して行動制限を掛けるんだ」

 

「確かにそれなら出来るかも……」

 

 胴体は急所が詰まっているから対人戦闘では正解だが、モンスター戦闘だと上手くは行かないと学んだ様だ。

 

「そして、剣士くんが相手の止めを刺すみたいな流れを作っていくんだ。

 

 だけど、剣士くんは両手剣に何か思い入れや憧れとかはあるかい?」

 

「それは……その……」

 

「何も恥じる事はないが特にこれと言ったこだわりが無ければ、君の体格や筋力では両手剣は難しいと思う。

 

 自身の体格に合わない武器の選定は自分だけじゃなく仲間の命すら危ぶむ。それは前回で分かった事だろう?」

 

「っ!? でも、俺っ……! 勇者に憧れていてっ……!! 物語の勇者みたいに両手剣で冒険したくてっ……!!」

 

「それなら、こんな武器はどうだろうか?」

 

 シュードが即興で作った持ち手が異様に長い木剣。通常の2〜3倍も持ち手が兎に角長かった。

 

「これは……??」

 

「これはなんちゃって両手剣さ。見れば分かる通り持ち手がとても長い槍に近い性質の武器だ。

 

 短く持てば片手剣並に使えて、長く持てば両手剣同様に使える騙し武器だ」

 

「騙し武器……??」

 

「これは本来、短剣の長さとかを誤魔化す暗器から着想を得て作られた武器だ。

 

 これは片手剣でありながら両手剣でもある。しかし、同時にどちらでも無いから剣士くんとしては受け入れ難いモノがあるかもしれないね」

 

「……」

 

「またはこんな武器はどうかな?」

 

 またもやシュードが即興で作った刃の厚みが異常に厚い片手剣。

 

「この種類はグラディウスと呼ばれる片手剣だ。

 

 普通の物に比べて肉厚な刀身であるこの剣であれば両手剣ほどでは無いが長さ調整でそれくらいの威力は発揮出来る代物だ。

 

 ただ、その場合はまたパーティの役割構成を変える必要があるから何を選ぶかは君が決めるんだ」

 

「はぃ……」

 

 落ち込んだ様子で剣士くんは肩を下ろした。その様子に武闘家ちゃんが慰めていた。

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